白と黒の宴2 9
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年格好や笑顔が出版部の天野に感じが良く似ているその料理長はメニューを持つと
ニコニコしながら奥の席へ二人を案内した。
社はメニューを開く事無く3〜4種類のパスタやサラダ、肉料理の類を注文した。
夕食時でそれから間もなくさして広くはない店内はすぐに満席となった。
「東京に来た時はいつもここに来るンや。関西人やからってタコ焼きとお好み焼きしか
食べへんわけやないで。」
そう言って運ばれて来た料理をまめに小皿に取り分け、アキラに勧めた。
そして社も食べる。ゆうに3人前はあるかと思われたパスタがみるみる内に社の胃袋に収まっていく。
アキラは前に社が5個のハンバーガーをあっという間に平らげた事を思い返していた。
体格のせいもあるが相変わらず豪快な社の食べっぷりだった。
「…口に合わへんかったか?」
一向に減る様子のないアキラの皿を覗き込んで社が心配そうに聞いて来た。
「…いや、そんなことは…。」
悪くはないと思った。
だが普段からアキラはあまり食事に美味しい不味いという感覚を持たないタイプだった。
それ以前に味覚が鈍いというか、特にここ最近は舌が麻痺してしまったように何を食べても
味を感じなくなってしまっていた。
でも、ヒカルと一緒に食べた、あの日の夕食は美味しかった。残り物と常備食だけだったが。
「そう言えば痩せたな。大将のプレッシャーか?しっかり食わんと北斗杯もたへんで。」
社が真顔でアキラの顔を覗き込んで来た。
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