浴衣 9


(9)
「しんど……やめ………」
僕は動転していた。
進藤のくれる感覚は、一ヶ月前僕を支配した感情を呼び覚ます。
「いやだ、…進藤」
口では抗えのに、体は動かない。
進藤のなすがまま、すべてを受け入れている。
感じている。
許している。
「ふぁ……っ、………」
進藤が僕の足の親指をしゃぶっている。
やめて欲しい。
でも、間違いなく僕はこのふれあいを悦んでいた。
体も心も歓んでいた。
「ん……」
進藤の舌が、指の股を舐め上げたとき、僕は甘い声を漏らしていた。
それに励まされたのだろうか、進藤の左手が、浴衣の裾からしのびこみ、這いあがっていく。
「進藤―――!」
彼の指が、僕の肌に消えない熱を残していく。
ぞくりと背筋に快感が走った。
進藤は、僕の足指を咥え、舌を絡めながら、なんとも言えない瞳で僕を見つめている。
彼が欲しているものを、僕は理解した。
それは、僕も欲しているものだった。
僕は手を伸ばし、進藤の髪に指を忍ばせた。
彼の唇が、指を追い、滑っていく。
足の甲の水滴を舐め取り、舐めあげる。
かりっと踝に痛みが走った。
進藤が歯を立てたのだ。
僕の下腹部に熱が集まる。
僕は、少し強引に足を引くと、地面におろし、立ち上がった。
「進藤……、帰ろう」
僕は深い酩酊のなかをさまよう心地でそう告げていた。
手を繋ぐ代わりに、肩を触れ合わせるようにして、僕と進藤は歩き出した。
その間、交わす言葉はなかった。



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