初摘み 9
(9)
一人取り残されて、ヒカルは途方に暮れた。
「ひでえよ…オレ、なんにもわからねえのに…」
二つ並べてのべられた布団が、妙に生々しい。心細かった。
寝てればいいのか、座っていればいいのか…。ヒカルは、布団の前で悩んでしまった。
アキラに声をかけられるまで、三十分以上もそこでぼんやりと突っ立っていたのだ。
「塔矢…」
不覚にも涙がでてしまった。こんなことで、泣いてしまうなんて情けない。
「進藤?どうしたんだ?」
アキラが、頬に触れた。掌の熱が、ヒカルに伝わる。その身体からは、自分と同じ匂いがする。
それだけで、アキラと一つになれたような気がした。
強くアキラにしがみついた。
「塔矢…!」
言葉が出てこなかった。本当は、自分もずっと待っていたような気がする。
ヒカルは、初めて自分からキスを与えた。
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