heat capacity2 9
(9)
「…でも」
困ったように俯いた塔矢の顔を下から覗き込む。
「身体、冷えちゃったんだ。温めてくれよ」
手をとってその手の平に軽くキスする。俺の身体は本当に冷たくなっていた。
塔矢が、柔らかく微笑って俺の耳にキスをしてきた。そのまま頬、鼻筋を辿って漸く唇
に辿り着く。
でも触れるだけのキスを繰り返すのに焦れて、俺が塔矢の唇に軽く噛み付くと、塔矢は
仕返しとばかりに俺の唇を覆ってきた。
暫くして俺の腹にあいつのが当たって、思わず身を引く。
なんだ、やっぱりやりたかったんじゃん。こんなに元気なクセに。
そう言うと、塔矢は憮然とした表情になって唇を引き結んだ。
機嫌を損ねるのが嫌だったから耳許にゴメン、と小さく囁いてから言った。
「入れる? いーよ、オレ」
俺の臆面もない言葉に、塔矢が一瞬たじろいだのが分かった。
「けど、まだ……」
「平気。それより早く欲しいから……、っん」
言いながら自分の手で招き入れる。『そこ』が異様にぬるぬるしていた。暫くして漸く
俺は出血していた事に気付いた。痛いというよりは、熱かったから気付かなかったんだ。
塔矢の熱か、自分の熱か良く分からなかったけれど、まるで溶け合ってるみたいだった。
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