平安幻想秘聞録・第三章 9
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「できれば明日にでもと」
「佐為は大丈夫なのか?」
「こんなときですから、何より光を優先しますよ」
「分かった。いいよ。嫌なことを後回しにしても仕方ないもんな」
きっぱり言い切ったヒカルに、佐為も覚悟を決めて頷いた。こうして
佐為が行洋に文を返し、ヒカルは明日の早い時間に近衛光として御所へ
と参内することとなった。
「はぁ、あぁん・・・」
気持ちが高ぶって眠れないまま、ヒカルは佐為の部屋へと赴き、褥を
共にした。時の最高権力者と顔を合わせることへの緊張。自分に懸想し
ているらしい東宮の思惑もまだ分からない。自分に味方してくれている
佐為や明、それに行洋に対する申し訳ないという気持ち。そして、近衛
と顔見知りの者に会ってしまうのではないかという不安。それがない交
ぜになって、ヒカルに襲いかかって来ていた。
それを、一瞬でもいいから忘れたかった。ただ、疲れて泥のように眠
れるように、抱いて欲しい。
「光、光・・・」
不安は、佐為にとっても同じであった。二年前に、光を失ったように、
この腕の中の少年もなくしてしまうのではないかと、正気でいては考え
なくても良いことに思いを巡らせてしまう。
二人の気持ちを表すように、その夜の情交は、いつもより深く激しい
ものになった・・・。
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