平安幻想秘聞録・第四章 9


(9)
 それこそ信じられない!と言わんばかりのヒカルに、奈瀬とあかりは
もう再び顔を見合わせた。
「信じるも何も、話し方や立ち振る舞いが、どこか近衛とは違うもの」
「えぇ」
「そ、そうなんだ」
 何だかあっさりと信じて貰えて、気が抜けてしまった。
「本物の近衛の行方は気になるけれど、それより、今の問題は東宮さま
のことでしょう?」
「うん。はっきり言って、すごく困ってる」
「東宮さまはかなり本気らしいわよ。日高の君を介して、光の気を引く
にはどんなものがいいか、訊ねていらっしゃるくらいだもの」
 日高って誰だっけ?どこかで聞いたことがあるような名だが、ヒカル
は元々あまり他人の顔や名前を覚えるのは苦手だ。
「宮中に呼ばれる他には?」
「光宛の文と和歌が、何日か置きに来ております」
「うん」
 ヒカルには達筆過ぎて読めない上に意味が分からないので、仕方なく
代わりに佐為に読んで貰っている。が、本当はあまり見せたくなかった。
東宮から文が来る度に、佐為の機嫌が端的に悪くなるからだ。
 ただ、他の女房や随身に文を見せるのも憚られた。あまりにも愛情の
籠もった文に、こんなりっぱなお歌をいただいたのにお返事も差し上げ
ないのは情けのないことですわと、返歌を勧める者までいるのだ。



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