sai包囲網・中一の夏編 9


(9)
「もちろん、saiのことは話すよ」
「話すって、誰に?おまえの親父に?」
「さっき言っただろう?saiが誰か知りたがってる人がたくさんいる
んだって。あの日、彼との再戦が決まった後、詳しいことが分かったら
教えて欲しいと、口々に言われたからね」
「うっ・・・」
 せいぜいお父さんに話すくらいしか思っていなかったらしく、進藤が
言葉に詰まる。
「とりあえず緒方さんには話すつもりだよ。ずいぶんと気にしてたから」
「緒方・・・さん?」
「キミも一度逢ったことがあるはずだよ。ボクの兄弟子でね、キミがお
父さんと打ったとき、そばにいただろう」
「あっ、アイツ・・・」
 倍ほども年の違う緒方さんをアイツ呼ばわりするところも進藤らしい。
「今は、キミとsaiの関係は、ボクしか知らない」
 だけど、ここで別れた後はどうなるかは分からないと、水を向ける。
そのまま沈黙した進藤が、口を開くのを待つ。長くも短くもないその時
間は不思議と楽しかった。たぶん今の彼の頭の中は、ボクのことでいっ
ぱいのはずだ。
「ここじゃ、困る。話、長くなるし・・・」
「いいよ。場所を変えよう」
「おまえんとこの碁会所に行くのか?」
「いや。あのビルの最上階のフロアもお父さんが借りてる。普段は使っ
ていないから、ゆっくりと話せるよ」
 どうする?と目で問うと、進藤が小さく頷いた。一度、ネットカフェ
へと戻った彼を待って、再び歩き出したボクの後ろをただ黙ってついて
来る。
 以前は、ボクに手を引かれて来たけれど、今度はキミが自らの意志で
歩いて来るんだ。それを忘れちゃ、ダメだよ。



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