守って!イゴレンジャー 9
(9)
伊角は走った!
レッドの為。仲間の為。
そして、記念すべき己の童貞喪失の為。
「ウオオオオオオレッドォォォ!すぐ『救出』してやるからなァァァァァッ!
このオレがなーーーーーーーーッ!」
「…あー、ありゃダメだ。完全にイッちゃってるよ、ブルー」
「だからグリーンが行けば良かったんだよ…ほら怪人がぞろぞろ出てきた」
「ホントにな。オレが行っとけばそのままレッドを独り占めできたんだけどな」
少年帝王の手下である配合飼料部隊が「藁!麦!フスマ!」と
雄叫びを上げながら伊角を取り囲む。普段は馬の世話をしている彼らも、
ひとたび招集がかかればアキラの為に怪人へと変身する。
彼ら配合飼料部隊にとってアキラは上司であり、企業主でもあるのだ。
生活がかかっている以上、命令には逆らえない。
「何事だ!騒がしいぞ!」
藁藁の声に反応したアキラの白馬が空腹を訴えて土を蹴る。
「どうしたハマグリゴイシ」
愛馬の首を優しくなでさすっていたアキラの目に、
乱入者を取り囲む手下の姿が飛び込んできた!
「あれはイゴブルー…ボクからレッドを奪おうだなどと百十年早い!」
怒りに燃える帝王の鞭がぴしりと撓る。
愛馬とともに突進してくるアキラに気付いた和谷が、
「やれやれ、オレの出番かな」
とのんびり立ち上がった。
「悪く思うなよアキラたん。秘儀!“公団ハリケーン!”」
突如出現した公団住宅A〜F棟がアキラと怪人どもの行く手を遮る。
その周囲を所得波と抽選波が複雑に絡み合いながら
台風のようにグルグルと回転し、風を巻き起こしていた。
低所得者である怪人の多くはハリケーンに侵入を拒まれ、一歩も進めない。
稀に所得波をやり過ごす輩もいるが、結局抽選波に引っ掛かり、
「…公団に入りてぇ」と言い残し倒れていった。
地味な技と侮るなかれ、これは高額所得者であるアキラには絶対に突破できない
究極の技なのだ。
「助けに来てくれたんだな!ブルー!」
ヒカルが嬉しそうに叫んだ。仲間三人の当然(?)の裏切りを知る由もなく、
無邪気な笑顔を伊角に浴びせてくる。
「…すまないレッド…オレを漢にしてくれ!“ハガシ流星剣!”」
伊角は青白い剣を振りかざし、レッドを拘束していた縄を切断した。
そして柱から落ちそうになるヒカルの体を抱きかかえると、
そのまま竹藪めがけて走り出した!
イゴレッド奪還成功!!
そのまま首尾よくなだれ込めるのか…でも伊角だからな…。
次週クライマックス前夜祭だ!好手戦隊・イゴレンジャー!!
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