誕生歌はジャイアン・リサイタルで(仮題) 9
(9)
「お父さん、コレは…お父さんが心臓発作を起こした時に使っている携帯用パドル!?」
「わかりました、やってみます!見ていてください、お父さん、グリーン先生!」
にっこりと微笑む元名人、拍手の渦が巻き起こる碁会所、チアノーゼが酷くなるヒカル、
グリーン先生はドラマのキャラクターだろう、と最早突っ込む気力すらない緒方。
「360にチャージ!」
「いきなり強すぎるぞアキラ君!」
その頃ヒカルは、川の中ほどまで到達していた。
しかし、水深が深くてこれ以上先に進めない、佐為が目の前にいるのに…ヒカルは焦った。
「でもオレ、プールでしか泳いだ事ないし、こんなに流れが速くちゃ…溺れちゃうかも」
そう思った途端、川底の苔の生えた石に足を取られ、転んでしまったヒカルは川に流されてしまう。
「わっぷ…わっ……さ、佐為ー!!」
服が重くて思うように体が動かない、溺れる!と思ったその時、ヒカルの体を引っ張り上げる腕があった。
「ヒカル…まったく、ムチャをするんですから…」
「さ、佐為…」
古風な船に乗り、いつもの微笑を浮かべる佐為が、ヒカルの目の前にいた。
「久しぶりですね、ヒカル」
「佐為、オレ…お前に会いたくて、それで、それでオレ…お前を…」
わんわん泣き出したヒカルを、佐為は優しく抱き締めた。
佐為の装束が濡れてしまう、とヒカルは思いついていたが、それでも佐為のぬくもりを
感じられる嬉しさに、涙が止まらなかった。
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