失着点・展界編 9
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ヒカルは目を閉じた。頭の中をアキラの姿がよぎった。タクシーに乗る前、
何の疑いも持たず握手を交わして颯爽と旅立って行った、アキラ。
自分自身、初めてアキラと関係を持った後かなり混乱した。それでも、
アキラが相手だったから、自分はそれまでの自分でいられたのだ。
…和谷には酷い事をしてしまった。悪いのは自分だ。
今はその事しか浮かばない。ヒカルは唇を動かした。
「…一度だけだよ…。」
ヒカルの両手が和谷から離れた。和谷は押さえていたものが一気に溢れ出した
ようにヒカルの服をたくし上げて首から胸にかけて顔を押しあて、キスを
くり返す。そしてヒカルのズボンを抜き取ると自分もズボンを脱いで、
ヒカルの片足をすくい上げるように抱えて体を入れて来た。
「あっ…!」
ヒカルは、まずい、と思った。和谷には何の知識もないのだ。以前とまったく
同じやり方で入ろうとしている。
「待って、和谷、まだ…」
聞こえていなかった。暴走した機関車のように、和谷はヒカルのその箇所に
おそらくもうだいぶ前から固く膨れ上がっていた自分自身を宛てがうと
一気に押し入って来た。
ヒカルにできたことは、アキラの部屋とは違う壁の薄い和谷のアパートで、
叫び声を必死に押し殺す事だけだった。
「待って…待って…和谷…!」
ヒカルの言葉は完全に無視され、2度、3度の猛進を受けてヒカルの体は
短時間のうちに無理矢理和谷自身を全て飲み込まされた。
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