月明星稀 9


(9)
いつもと変わらぬ涼やかな顔で朝餉の椀を置いたアキラに、ヒカルはぼそりと話しかけた。
「あのさ…賀茂、」
なにか?というように
「昨日の…」
もごもごと言うヒカルに、アキラはまるでなんでもない事のように応えた。
「僕が君を好きだって言った事?本当だし本気だよ。」
照らいもない真っ直ぐな物言いに、ヒカルはびくりとふるえる。
「冗談や酔狂であんな事が言えるとでも?」
けれど、身を縮こまらせたヒカルに、アキラはふっと笑って表情を弛めた。
「いや、いいよ。構わない。君が信じようと信じまいと。
ただ…言の葉に乗せてしまったことはもう取り消せない。取り消すつもりも無い。」
そう言いながら、すいとヒカルに向かって手を伸ばした。指先が頬に触れそうになってヒカルは身体を固くした。
「怯えてるの?」
半ばからかうような声でアキラが言った。
「あの時は…あんなに熱く、君のほうから求めてくれたのに?」
言われて、ヒカルの頬がかあっと赤くなる。逃げるように視線が揺れる。
そんな様子にアキラは微笑って付け加えた。
「そんなふうに怯えなくても、何もしないよ。
君の望まない事は金輪際何もしない。君の望む事以外は。」



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