失着点・展界編 91


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囲碁会の将来を担う若手の棋士が二人、それも未成年者が突然消えた。
棋院の関係者の間ではパニックになり、単なる家出騒ぎと見る者もいれば
一人が元名人の息子とあっていろいろな憶測をする者もいた。
その話を聞いた緒方は「やるな」と小さく笑んだ。
二人はそれぞれカードを持っていたこともあり、長らく所在が分からな
かったが、二ヶ月後に、瀬戸内海の小さな民宿に泊まっていた所を
保護された。民宿の人は中高校生らが釣りの為に利用することがあったため、
特に不審に思わなかったという。彼等は地元の人に釣りを習って普通の
少年らしく、楽しんでいたという。
予定のイベントや大事な対局を全てキャンセルしたことにより、二人の
プロ資格をはく奪するという意見もあったが、本人達が反省している事もあり
桑原が「若いうちにはそういう事もある」と一笑したこともあり、
三ヶ月の対局禁止などの処置で終わった。
アキラはアパートを引き払い自宅に戻され、ヒカルは一時期名古屋の親類に
預けられた。
それでも、ヒカルは淋しくはなかった。家出中、毎夜二人で過ごし
二人で長い間海を眺めたり話をしたりする時間が持てたからだった。
アキラも同じ思いだろう。

…つまらない隔たりや障壁なんか、いつでも越えられる。いつもアキラが
それをやってみせてくれていた。これからは自分にも越えられる。
アキラとは、魂が繋がっているのだから。
なにももう、恐れるものはなかった。

                             〈終〉



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