初めての体験 91


(91)
 今日はアキラにとって、記念すべき一日になるはずだ。なぜなら、プロになったヒカルと
初めて対局するのだから―――――
 そう言えば、これは幾つ目の記念日だったか…。アキラにとって、ヒカルとの出来事は
すべて記念日だった。
 初めて会った日、大負けした日、囲碁大会で会った日、それから…囲碁大会の三将戦は、
記念日に入れてもいいのだろうか?ああ、ネットカフェで会った時の進藤は可愛かった。
頬をつつきたくなるくらいキュートだった。つい、意地悪を言ったが本気じゃなかったんだ。
若獅子戦…あの時も、意地を張ったりしないで、最初から素直に見学すれば良かった…。
初対局になるはずだったあの日、お父さんが倒れなければ…!と、一瞬でも思ってしまった
親不孝なボクを許してください。等々……。
 こうして考えてみると、けっこう、二人は会えそうで会えないすれ違いが多い。運命は
残酷だと思った。大昔のドラマにこういう話がなかったっけ?
 極めつけは、ヒカルの『もう、打たない』宣言だ。手合いに出てこないヒカルに焦れて、
学校まで押し掛けてしまった。久々に見たヒカルにいつもの明るさはなく、表情に憂いを
湛えていた。初めて見たあんなヒカルを…。やせた頬や、伏せた大きな瞳に陰を落とす
長い睫毛……。元気のないヒカルに、元気に反応してしまった自分は、結構な恥知らずだ。
 でも、もういい。落ち込む心を隠しつつ、碁を打ち続けた自分の元に、ヒカルは
帰って来たのだから――――本因坊リーグ戦が終わった後、ヒカルが会いに来てくれた。
誰に、どんな誉め言葉をもらうよりも、嬉しかった。天野さんがいなかったら、その場で
押し倒していたかも……。だって、はにかむ進藤がすごく可愛かったから…。



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