裏階段 アキラ編 91 - 92


(91)
進藤に対する怒りと失意と自分に対する同じものがアキラの中で渦巻き
意識の下に潜んでいた衝動を揺り動かしているのだろう。
それらをもてあまし抑え切れないでいた。
そしてオレのところにやって来た。

そこから手を離してアキラの体をソファーの上に仰向けに倒した。
バスローブを左右に開いた。
明るい室内のライトの下に自分の体の秘部が曝け出されながら不思議なくらい
アキラは静かだった。
潤んだ瞳で天井を見つめ、両手を投げ出し、呼吸に胸を上下させている。
オレに見られる事で新たな興奮を得ているようだった。
幼さが残るように見えて、うっすらと色づき柔らかなそのラインは
ひどく淫猥に見えた。透き通る程に白い肉体の中で性的な箇所だけが
鮮やかに紅色を放っている。
清楚な物腰や衣服の下に隠されていた正体を見せつけられた気がした。
誘っているのだと直感的にそう感じた。


(92)
無抵抗なそのアキラの体を夢中で貪った。
唇と指で、アキラの体のあらゆる部分に触れ、感触を味わった。
張り詰めた糸を弾くようにアキラは敏感にどんな微量な行為にも反応した。
頭の上でアキラの小さな悲鳴が断続的に聞こえた。
だが拒絶の言葉は一切なかった。
アキラにとって、オレにとっての不幸はその時は不粋な電話も訪問者もなかった事だ。
冷静さを取り戻すきっかけがないまま儀式のような行為は続けられた。
一度だけアキラの手が、オレの脱ぎ捨てた服が掛けられたソファーの背の上を
彷徨い、そこを掴んでオレの体の下から動こうとした。
「嫌なのか。…だったら止めるぞ。」
そう言うと怯えたようにアキラの手はそこから離れた。
王者のように気高く決して普段誰かの意志に従うことのない相手がそうして
こちらの命令に一切従順な事に理屈なくオレは興奮していた。
手が届かない、自分には相応しくないと思っていたものを一気に陵辱する。
背信行為だとわかっていても、止められない。
むしろ当然の権利のような気がした。
自分を抱いた男の息子を抱くという行為が。



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