平安幻想異聞録-異聞- 93
(93)
佐為は大慌てで、廊下の中ほどにうつぶせに倒れる賀茂アキラに駆け寄った。
呼吸を確かめる。大分早い。おまけに熱い。
「アキラ殿!アキラ殿! しっかりして下さい!」
とりあえず寝所に運ばねばと、そのぐったりした体を抱え上げると、
アキラが目を覚ました。
「近衛が…」
自分を抱き上げる佐為の姿を認めてのアキラの第一声はそれだった。
「佐為殿、近衛が…」
「おだまりなさい、アキラ殿。その話は後でゆっくり聞きましょう。
とりあえず、あなたの寝所はどこです?」
有無を言わさぬ、佐為の厳しさの混じった口調に、アキラは寝所の場所を
つぶやいて教えた。佐為はその部屋へ行き、1回アキラを降ろしてから寝床を
整えると、あらためてそこにアキラを寝かしつけた。
アキラの手が傷だらけになっているのに気付く。今日、内裏で会ったヒカル
も腕に怪我をしていた。
「佐為殿、僕は…、近衛が……」
うわごとのように擦れた声でつぶやくアキラを佐為が制する。
「そのような状態では、いったい何が起こったのか、順序立てて
私に説明することも出来ないでしょう? アキラ殿。まずは、あなたの
体調を戻すのが先です。私もそれまでは、どういう事がここで起こったのか、
聞くことはしますまい」
佐為はそう言って、さらに熱冷ましの薬などがしまってある場所を問う。
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