初めての体験 94 - 106
(94)
棋院をでて、碁会所に着くまで地獄のようだった。歩いているときも、電車に乗って
いるときも、横にいるヒカルが気になって仕方がなかった。ついさっき、触れたばかりの
ヒカルの唇や、シャツの襟から覗く鎖骨に目がいってしまう。視線に気がついて、時折、
ヒカルが笑いかける。その笑顔の愛くるしさに、息が詰まりそうになった。今、ここで
窒息死したら、死んでも死にきれない。やめてくれ。
「あれ?閉まっている…今日、休み?」
ヒカルが、碁会所のドアに貼られた張り紙を見て、アキラに訊ねた。
「うん。市河さんの都合が悪くてね。臨時休業。」
アキラが、鍵を取り出しながらヒカルに返事をした。もしかして、最初から計画していた
ように、思われただろうか?そんなつもりじゃなかったけど…結果的には同じだし…
そうとられても、仕方がないか……。錠の開く音が、人気のないフロアーに響いた。
「ふーん…じゃあ、ちょうど良かったね…」
ヒカルの言葉に、アキラは顔を上げて、まじまじとヒカルを見つめた。
「え…だって…やっぱり…人がいたら…その…」
ヒカルは真っ赤になって、トレーナーの裾を弄りながら、俯いた。
もう、限界だった。アキラはヒカルの肩を抱いて、碁会所のドアをくぐった。
(95)
誰も来ないとは思うが、念のため、入り口の鍵を内側からかけた。暗い部屋の中で、
ヒカルはぼんやりと突っ立っている。普段は、大勢の客で賑わっているこの場所が、暗く
静かなので、珍しいのかもしれない。
「暗いね…」
ヒカルが心細げに、アキラにしがみついた。確かに、非常灯の明かりが、部屋を微かに
照らすだけだ。
「灯り点けた方がいい?」
「うん…塔矢の顔が見たい…」
アキラは、部屋の隅の灯りだけをつけ、そこにヒカルを連れて行った。
「あまり、明るくすると、気づかれるかもしれないから…」
ヒカルは、小さく頷いて、アキラの胸にもたれかかった。心臓がドキドキする。ヒカルの
心臓もドキドキと早い。
アキラは、ヒカルにぶつけるようなキスをした。びっくりして、大きく目を見開く
ヒカルを、キスをしながら見つめた。ヒカルもアキラを見つめ返していたが、やがて、
目を閉じるとアキラに身を任せた。
(96)
アキラの手が、ヒカルのシャツの下に滑り込んで、肌を撫でまわした。棋院で中断された
行為をもう一度初めからやり直す。ずっと、我慢していた分、少々、やり方が荒っぽく
なってしまう。アキラの激しい愛撫に、ヒカルは息を弾ませた。
「や…やだ…塔矢…痛い…もっと…やさしくして…おねがい…」
ヒカルの哀願に、アキラは我に返った。だが、優しくしようと思っても、ヒカルの肌の
感触や、耳元で聞こえる吐息や甘い声が、アキラの理性を一瞬で吹き飛ばしてしまう。
アキラは、ヒカルのトレーナーを下のシャツごと、胸元まで捲り上げた。白い胸に
可愛らしい飾りが二つ付いている。指先で触れてみた。
「あぁん…!」
ヒカルが声を上げた。もっと声を聞きたくて、胸の突起を指で弄った。摘んで引っ張る。
その度、ヒカルは身体を捩って、小さく声を上げた。
アキラは、邪魔な衣服をヒカルから、完全に剥ぎ取ってしまいたかった。乱暴に、
ヒカルのシャツを引っ張り、袖を抜いていく。ヒカルも逆らわず、アキラが脱がせ
易いように、身体を動かした。
アキラは、自分のセーターをテーブルの上に広げ、その上に、ヒカルを寝かせた。
今度は、下半身を脱がせにかかる。ベルトに手をかけ、外す。ヒカルは目を閉じて、
じっとしていた。ジーパンのファスナーを下ろす音が、やけに響いた。
靴も、靴下も、何もかもを剥がれ、ヒカルはテーブルの上に横たわっている。足だけ
下ろされ、爪先立ちになっている。アキラの視線を感じているのか身体は紅潮し、
瞳はギュッと閉じられ、手は堅く握りしめられている。身体も小刻みに震えていた。
寒いのか…それとも………出来るだけ、優しくしよう…。まあ、どこまでそうできるか
わからないけど…。ボクは、ひょっとして、ひょっとしたら…S…かもしれない…。
アキラは、自分も服を脱いで、ヒカルの胸に顔を伏せた。
(97)
片方の乳首を舌で嬲りながら、もう片方を指で弄ぶ。
「はぁん…やぁ…」
ヒカルの喘ぎ声に、気分を良くして、何度も同じ行為を繰り返す。
「や…やだ…やめてよ…」
両方の乳首を交互に吸われて、ヒカルは悶えた。
アキラは、ヒカルの感じやすいところを少しずつ暴いていく。指をあちこちに這わせ、
ヒカルが反応すると同じところを何度も攻めた。
「ああぁ…やだあ……いじわる…やめてったらぁ…」
ヒカルが、アキラの行為を泣きながら責めた。
「意地悪ってこういうこと?」
アキラは、勃ち上がって震えているヒカル自身を、いきなり口に銜えた。
「ひゃあぁぁ――――――」
身体を反り返らせて、ヒカルはアキラの頭を自分から剥がそうとした。アキラはヒカルの
腰をしっかり持って、ますます深くヒカルを呑み込んだ。こういうことは、初めてだが、
何の躊躇いもなかった。自分の手や、唇や、舌が、ヒカルに快感を与えているのだと思うと
嬉しかった。もっと、もっと、良くしてあげるから。
「と…や…あぁん…だめ…でちゃう…やあ…」
ヒカルのその言葉を聞いて、アキラの愛撫は一層激しくなる。ピチャピチャという音が、
ヒカルを耳から犯し、更に高みへと導いていく。
「で…でる…でちゃうよ…あああ―――――――っ」
ヒカルが放ったものをアキラは、そのまま飲み込んだ。最後の一滴まで吸い出した。
苦みが舌を刺したが、そんなことはどうでも良かった。ただ、ヒカルのすべてを
味わいたかった。
(98)
アキラは、ぐったりとしたヒカルの腰を抱え上げ、足を高く上げさせた。そして、ヒカルの
後ろを舌で湿らせる。
「――!や…」
ヒカルが弱々しく、身を捩ったが、それが却って、アキラの欲望に火をつける。遠慮なく、
舌が差し込まれ、入り口やその周辺が唾液で濡れそぼった。
「ひあ…やあ…やめて…やめて…」
アキラの舌の蠢きに耐えきれず、ヒカルが泣いて許しを請うた。大粒の涙が頬を伝っている。
アキラは、泣いているヒカルはとても可愛いと思った。もっと虐めて泣かせてやりたい
と言う気持ちが湧き起こる。ああ…ボクってやつは…!やっぱり……!
一旦、そこから舌を離し、代わりに指を宛った。ゆっくりと一本入れてみる。唾液に
助けられ、簡単に沈んでいく。
「!!!」
ヒカルの身体がビクンと跳ねた。
「あっ…あっ…」
アキラが指を動かすと、それに合わせて、ヒカルの身体が揺れた。もう一本、入れてみる。
捻ったり、突いたりして、中を慣らす。ヒカルは、肩で大きく息を吐きながら、アキラの
行為に耐えていた。
そして、三本目が入れられた。
「あっ…あっ…あぁ――――っあああああ」
ヒカルの顔は、もう、汗と涙でぐしょぐしょになっていた。
ヒカルは指で嬲られて、再び、達してしまった。
(99)
アキラは、ヒカルの中から指を引き抜いた。ヒカルはもう声も出せず、肩を震わせて
すすり泣いていた。ヒカルの側に顔を寄せる。ヒカルの汗の匂いと甘い体臭がアキラの
鼻腔をくすぐった。ヒカルがアキラを潤んだ瞳で見つめた。頬の上を涙は流れ続けている。
何となく、ヒカルの涙を舐めてみた。
「んん…しょっぱい…でも、おいしい…」
アキラは、その行為にびっくりしているヒカルの目を覗き込んだ。ヒカルは、顔を赤らめ、
目を逸らした。
ヒカルのすべてが愛しかった。何だか、もっと意地悪をしたくなって困る。
「ね…進藤…入れていい?ここに…ボクを…」
ヒカルの後ろに触れながら、耳元で囁くと、ヒカルは、耳まで赤くして横を向いてしまった。
恥ずかしがるヒカルに、何度もしつこく訊ねると、黙って小さく頷いた。相変わらず、
赤くなって横を向いたまま、アキラと視線をあわせようとしない。
そこにアキラ自身を宛うと、ヒカルは身体を堅くした。何とか、力を抜こうとするが、
上手くいかないようだった。アキラは、ヒカルの乳首をペロリと舐めた。
「ひゃあん…」
ヒカルの力が抜けた瞬間を見逃さず、アキラは身体を一気に進めた。
「あああ――――――――!」
ヒカルが細い悲鳴を上げた。アキラは、かまわず押し進む。
「あ…あ…いたい…と…や…いたいよ…」
肩を押さえるアキラの腕を、ヒカルは掴んだ。アキラの動きを止めようとするが、アキラは、
ヒカルを揺さぶり続ける。
「やだ…いたい…やめてよぉ…!」
ヒカルの爪が、アキラの腕を引っ掻いた。腕に何本も朱色の線が走ったが、肩を押さえる
力は弛まなかった。アキラは、ヒカルの泣き顔に興奮して、ますます腕に力がこもった。
「あぁ…!はぁ…」
アキラの突き上げが、何かを掠めた。先ほど、指で弄られた部分…その更に奥を…。
アキラは笑った。意を得たりとばかりに、そこを突き上げ続けた。
(100)
「ああ…と…や…いい…ああん…」
ヒカルが、アキラの動きに自分も合わせ始めた。
「…気持ちいい?」
「んん…イイ…はあぁん…!」
アキラの問いかけに、ヒカルは譫言のように答える。ヒカルの返事に、アキラは満足した。
そろそろアキラも限界に近い。ゆっくりだった動きが段々と激しいものになっていく。
「あっ、あっ、あっ」
ヒカルが断続的に悲鳴を上げる。それに煽られるようにアキラは、大きく突き上げた。
「―――――――――!」
声もなく、ヒカルの身体が硬直し、やがて静かに弛緩していった。
アキラもヒカルのその締め付けに、自分の欲望を解放した。熱いモノが、ヒカルの奥に
叩き付けられた。
やはり、今日はアキラにとって、最高の記念日となった。ヒカルと対局できただけではなく、
ヒカルを自分のものに出来たのだ。こんな、幸せがあっていいのだろうか?急に不安になった。
「進藤…ボクのこと好き?」
「あ…当たり前じゃん…!」
ヒカルは顔を真っ赤にして、アキラを睨んだ。今更、何を言っているんだとばかりに…。
「じゃあ、ボクの恋人になってくれる?」
コクリと頷くヒカルのあまりの可愛さに、また、やりたくなってしまった。
ヒカルが慌てて、それを止めた。
「オレ、オレ、今日はもうムリ…だって…だってさ…」
ヒカルは、もう三回もイッてしまっている。確かに、今日はもう止めておいた方がいいだろう。
「そんな顔すんなよ…これから、いくらでも出来るじゃねえか。」
ヒカルは、アキラにチュッとキスをしてくれた。自然と頬が弛んでしまった。
ヒカルにとっても今日は記念すべき日だった。遂に、念願のアキラとの初めてを経験したのだ。
「ついに、これを使う日が来た…」
自室の机の引き出しから取り出した物は、道玄坂のマスターからもらったシステム手帳。
「最初はやっぱり塔矢だよな…」
ヒカルは、緊張で震える手で、アキラの名前を書き込んだ。
<終>
(101)
一目惚れというものがこの世に存在することを初めて知った―――――――
社は目の前で、上目遣いに自分を見つめる少年に、恋をしてしまった。彼は、可憐な外見とは、
裏腹に恐ろしく碁が強かった。
自分の対局が終わったとき、次の自分の対戦相手を確認しようとして、まず、その盤面を
見て驚いた。そして、次に彼の姿を見て、何とも言えない衝撃を胸に受けた。目を離すことが
できなかった。
どうにかして、自分を彼に認めさせたかった。最初に打った手は、彼の興味を引いたらしい。
つかみはオッケーだ。社は心の中で、ガッツポーズを作った。
だが、ヒカルもただ者ではなかった。社の手に対して彼が放った一手に、社の方が
心を鷲掴みにされてしまった。
『はあ〜やっぱ、可愛いだけじゃないんや〜わかっとるな〜』
絶対、お近づきになりたい。必ず勝って、こっちを向かせてみせる。社の心の中に闘志が湧いた。
――――北斗杯の代表と進藤ヒカルどちらも手に入れたる!
(102)
運命は非情だ。社は、負けてしまった。しかし、ヒカルの住所と電話番号を訊いておきたい。
それが、無理なら、せめて、メールアドレスだけでも…。
社が、ヒカルに声をかけようとしたとき、チリチリと焼け付くような視線を感じた。
「?」
視線を感じた方に、首をむけると、一人の美少年がそこに立っていた。切りそろえられた
サラサラとした黒髪。涼しげな目元。だが、優しげな外見には不似合いな苛烈な色をその
瞳に宿し、鬼神のごとき形相で社を睨み付けている。
その少年が、かの有名な「塔矢アキラ」だと知ったのは、二人の会話からだった。甘えるように、
ヒカルが名を呼ぶと、「塔矢アキラ」は、優しく微笑んだ。返すように、ヒカルも愛くるしい
笑顔をアキラに向ける。
―――――好きになったばっかで、もう失恋か…
知らず、溜息が出た。
(103)
「なあ…?どないしたんや?代表なれるかもしれへんねんぞ?嬉しないんか?」
津坂が、社の顔を覗き込むようにして、訊ねた。
「…嬉しいで…嬉しいねんけど……」
もちろん、代表になる自信はある。越智にはきっと勝てるだろう。だが、代表になれば、
アキラとヒカルの仲の良さを、その間ずっと見ていなければいけないのかと思うと素直に喜べない。
そのくせ、ヒカルと一緒にいられる時間ができたことが、嬉しくて仕方がない自分がいる。
社の口からは溜息しか出なかった。
「…何か心配やなあ…明日ホンマに大丈夫なんか?」
沈んだ様子の社を津坂は気遣った。
「津坂さん、大丈夫や。はよ行かな、新幹線、間に合わへんで。」
社は、無理やり笑顔を作って津坂を急かせた。
ホテルの部屋につくとすぐに、ベッドに寝ころんだ。天井の灯りが眩しい。ヒカルの笑顔は、
もっと眩しかった。
「あ〜可愛かったなぁ…進藤…」
自分の内に芽生えた恋心を持て余して、ベッドの上をごろごろと転がった。
突然、電話が鳴った。
「もぉ〜何やねん…」
しぶしぶ受話器を取った社は、フロントから思わぬことを告げられて、心臓が飛び出すくらい驚いた。
「し…進藤が!?すぐ…すぐ行きます。」
(104)
エレベーターを待つ時間がもどかしい。いっそ、ここから飛び降りたい。
「そや!階段で行こ!」
一気に階段を駆け下りる。社の頭の中を、ヒカルがどうしてここに来たのかという疑問が
一瞬過ぎった。
「そんなんどうでもええ。進藤に会えるんや…!」
ヒカルに会えることの喜びでいっぱいだった。
息せき切ってロビーへ走った。いた!すぐにわかった。髪型が目立つと言うこともあるが、
何より存在感が他とは違う。息を切らせている社をヒカルが見つけた。
「社。」
笑って手を振る。そんな何気ない動作にすら、社の胸は高まった。
「し…進藤…どないしたん?いや…何でここがわかったんや?」
社の問いかけにヒカルはにこにこ笑って応えた。
「津坂さんって言うんだっけ?あの人に訊いたんだよ。」
「社ともう一度打ちたくて…」
ヒカルが、社を見つめた。『でっかい目ェやな〜落っこちそうや』ヒカルの瞳にそのまま
吸い込まれそうだった。
「対局?オレと?…そやけどオレ、今マグネット碁盤しか持ってないよ?」
それで、構わないとヒカルは言う。早速、部屋で打つことにした。
(105)
社は、自分の隣でエレベーターを待つヒカルを何度も盗み見た。信じられない。あの
進藤が自分の横にいる。自分より、頭半分小さい。肩も首も細く、触れたら壊れそうな気がした。
「社、背が高いね。」
ヒカルが話しかけてきた。慌てて、視線を前に戻す。
「そ…そんなことないよ。普通や。進藤が小さいから…」
「それって、オレがチビってこと?」
ヒカルがムッとした口調で聞き返した。まずい。機嫌を損ねたか?そんなつもりではなかった。
小さくて、可愛いと言いたかったのだ。狼狽える社を見て、ヒカルは、小鳥のように
クスクスと笑った。
「怒ってないよ。社、大人っぽくて落ち着いて見えるのになぁ。」
「オレかて、進藤と同い年や。全然落ち着いてない。」
すぐ側にヒカルがいるのに、落ち着いて何かいられない。今も心臓が早鐘のように打っている。
エレベーターに乗り込むと、密室の中で二人きりという状況にますます社は戸惑った。
何か話題を捜さなくては…。好きなもの…囲碁に決まってるわな。趣味…誕生日…
ああ〜今この場面でどれもこれも、唐突すぎる!
考えすぎて頭が真っ白になった。
「進藤って、塔矢と付き合っとるんか?」
よりにもよって、口から出た言葉がこれだとは…時間を戻したい。
ヒカルは、きょとんとした顔で社を見つめた。また、その表情の可愛らしいことと言ったら…
食べてしまいたいくらいだった。その後すぐに、ヒカルは、ニッコリと(これまた、
最高の笑顔で)笑って、「うん」と頷いた。
(106)
あかん…!完璧失恋や〜グラスハートは粉々や…
わかっていたこととはいえ、本人にこうハッキリ断言されると落ち込む。それでも、表面上は、
「へぇ〜やっぱり、そうなんか。」
と、傷ついているそぶりも見せずにヒカルに笑いかけた。オレって見栄っ張りや…
ヒカルもそれに応えるようにニコニコと笑っていた。
「入って。」
ヒカルを部屋に招き入れた。散らかった荷物を一カ所に纏め、碁盤を取り出した。
「さ、打とか。」
振り返って、ヒカルに笑いかけた。と、同時に柔らかく首に腕が巻かれ、社の唇は、ヒカルの
それに塞がれた。ほんの一瞬触れただけのキスだった。その一瞬が、社の思考の全てを奪った。
固まったまま、動かなくなった社の頬に、ヒカルはチュッともう一度キスをした。
「〜〜〜〜〜〜な、な、な、何すんねん――――――!!」
狼狽えて、大声で怒鳴った。顔から火が出そうだ。耳まで紅くした姿で、怒鳴っても
てんでしまらない。社の首にしがみついたまま、ヒカルが言った。
「オレ、社としてみたい。」
その言葉の意味を把握するまで、たっぷり一分はかかった。自分は今、最高に間抜けな顔を
しているだろう。
「イヤ?」
首を少し傾けて、ヒカルが間近に顔を寄せる。
「イヤ?」って、イヤなわけがない。でも…。
「そ…そやけど、自分、塔矢とつきあっとるんとちゃうんか?」
「うん。オレ、塔矢が大好き。一番好き。」
ぬけぬけと言う。だけど、そう言って笑う顔がまた憎らしいくらい可愛かった。
「でもね…強いヤツにも興味があるんだ…だから、社のこと知りたい…」
再び、唇を塞がれた。今度のキスはさっきよりもずっと深く重ねられた。
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