平安幻想異聞録-異聞- 97
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情を交わす…とはよく言ったものだと思う。
人はお互いの体をつなげ、睦みあうことで、それまで見えなかった互いの
心の底のようなものが、透明に見えてくるようになるものなのだ。
佐為には以前にはわからなかったヒカルが判る。それはきっとヒカルも同じ
だろう。
あの少年はおおかた自らだけでなく、アキラや佐為まで傷つける呪をどうにか
するために、座間のもとに赴き、まんまと罠にはまったのに違いない。
その際、取引の材料として出されたのは自分の命か、行洋の命か、あるいは
ヒカルの家族の。
「だとすれば我々がすべきことは唯一つです」
佐為の言葉に、アキラが真摯な瞳で見返す。
「座間の元から、一刻も早くヒカルを助け出すこと。後悔にくれている暇など
ありません」
「しかし、座間邸や蠱毒の隠し場所のまわりに張られた結界は強く、卜占でも、
奇妙な結果が出るばかりで、飛ばした式神達もそれを見つけることが出来ません
でした。どうやって、その場所をさがしていいのか……」
「その結界は、人も通れないのですか?」
「え?」
「式神が効かないのなら、我らが自らの足で探せばよいのです」
アキラは虚を突かれた顔をした。常に式神を使役することに慣れたアキラにとって、
式神を使わず、自分の足で呪の元を探しだすなど、いっそ考えの外だったのだ。
「さあ、アキラ殿、その蠱毒の壺が埋めてりそうな場所はどこですか。すべて
ここに書きだして下さい」
佐為が紙と筆を差し出す。
「し、しかし、その可能性がある場所となると、近衛が普段生活する場所、ゆかりの
ある場所など、あげはじめたら切りがないほどで」
「だから、何だというのです。その場所が幾十幾百とあろうと、そのすべてを
しらみつぶしに探しだし、必ずこの忌まわしい呪の元を探しだして見せましょう!
さあさあ、アキラ殿!」
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