平安幻想異聞録-異聞- 99 - 104
(99)
夜半の、灯明ひとつしかない、ほの暗い部屋の中でも、その菅原が手にしたモノの
輪郭は、わずかな明かりを反射して、その輪郭をはっきりヒカルに悟らせた。
嫌な予感にヒカルは身をよじった。
菅原が生々しい形をしたその張り型をヒカルの口元に押し付けてくる。
「これはな、夜を淋しく過ごす女房の為に、座間様が自分のものを写し取って、
一流の彫師に掘らせたのじゃ。どうじゃ座間様はお優しい方であろう?
ありがたくお嘗めしろ」
汚らわしさにヒカルが顔をそらす。
「嘗めんのか? それでは、この乾いたモノをそのままお前の下の門に挿れるが
よいか?」
想像しただけでも判るその痛みに、ヒカルは喉を冷や汗が伝っていくのがわかった。
その固く太く強ばったものが、ギリギリと自分の下の口に押し込められるのだ。
ヒカルは菅原の差し出したそれに、しぶしぶ舌をのばし、嘗めて濡らし始めた。
その様を眺めながら、座間はヒカルの体を真っ正面から鑑賞できる位置に
どっかり腰をおろし、脇息を引き寄せてそれによりかかると、
侍女に酒を持ってこさせる。
侍女はこの部屋の中の淫猥な光景を見ても、ピクリとも眉を動かさず、再び姿を消す。
座間が杯に手酌で酒を注いで、唇を浸した。
ぴちゃり。
酒の跳ねる音ではない。
ヒカルの口元から発せられた、唾液が牛の角の張り型を濡らす音だ。
最初、固く乾いていた黒い牛の角の彫り物は、今はヒカルの薄赤色の唇に
出し入れされ、その舌に絡められ、テラテラとより深い暗色に湿っていた。
塗られた唾液が銀色に光って、細い糸を引いて床に落ちる。
がっしりとした重量感を感じさせるその亀頭の部分を、ヒカルは重点的に
嘗めさせられた。
「もうそろそろ頃合いじゃろう」
菅原が、それをヒカルの口から引き抜くと、ヒカルの足を押し広げ、
射干玉に光るそれの先端を後門の入り口に押し当てた。
薄暗い夜半の部屋の中、わずかな灯明の明かりだけが、そのヒカルの体を
照らし出し、その無理矢理に開かされた内ももの白さだけが、いやに際立って
まぶしく見える。
「…ヤダ……」
ヒカルの小さなつぶやきなど無視して、ずっぷりと菅原がそれを少年の下に突き
刺した。
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ほぐれてもいない菊の門に、冷たく固いものを強引にねじ込んでいく。
「………………っっ」
ヒカルは悲鳴を押し殺そうと、きつく奥歯に力を入れた。
唾液で濡らされて、多少すべりやすくはなっていたが、大きく、しなりもないそれを
飲み込むのはヒカルの成長しきっていない細い体には、辛い負担だった。
だが、そんなヒカルにおかまいなしに、座間の形をした無機質なそれは、
強引に狭い肉の道に割り入り、押し広げ、ヒカルの奥を踏み荒らしていく。
菅原が、さらに一杯まで張り型を飲み込ませようと、それをギチギチとゆらした。
「……あ…」
それが、ヒカルの快感に弱い腸壁の部分をこすり、つい、小さな嬌声があがる。
「うむ、多少きついかもしれんのう」
そのヒカルの紅潮した顔を興味深げにのぞき込むと、菅原は、次にはゆるゆると
その張り型を抜き差ししだした。
じっくりと、その味を噛みしめさせるように。
内壁に押し付けるごとく。あるいは、中の肉をえぐり出そうとするかのような強さで。
摺り上げ、引き抜くに時には、わざと弱い部分を掠め、焦らすようにゆっくりと。
「……く……くぁん…く…」
痛みと、硬質な物体で中を責められる倒錯的とも言える被虐感。
そして下の内壁からじわじわと自分の体を責め上げてくる甘いむずがゆさに、
喉の奥からあふれそうになる声を抑えるため、ヒカルは唇を強く噛みしめた。
「大きすぎるのか、なかなか上手く動かせんのう」
そういいながら菅原が、わざとらしくグネリと、張り型で中を掻き回せば、
ヒカルの体も大きくよじれる。
何処からか風が入っているのか、責められて悶えるヒカルの体を闇に浮かび
上がらせる灯明の明かりが、ふわふわと妖しげに揺れた。
ヒカルが身を捻ると、縛られた腕にも力が入り、荒縄にこすれて、手首の薄い皮膚が
痛みを訴える。特に左の手首、前日にヒカル自身が噛みついて作った傷は、
ちょうど戒める縄の位置にあたり、ひどく痛んだ。
「……くぅ…………」
だけど、座間に自分のすすり泣く声を聞かれるぐらいなら、こっちの痛みに
集中していた方がましだ。
張り型を微妙に揺らしながら、菅原がそれを再び奥に差し込んできた。
「んんっ……ん……んう………」
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その動きに思わず感じてしまった快楽を振り払うために頭を左右に振った。
痛い。手首が痛い。座間も菅原も全部無視してやる。無理矢理与えられる快感も。
その時、座間の声がかかった。
「ほうほう、そんなに声を出しとうないか。よいわ、よいわ。我らが手助け
してやろうぞ」
そう言って座間は、扇を大きく鳴らし、再び侍女を呼び寄せた。
美しく薄紅色に染め上げられた綾織の布を持ってこさせる。
それは紅地に、暗がりでもわかるほど、あでやかな金銀の刺繍が細かく
施されている。
普通の人間には一生かかっても手が出ないほどに高価であろうそれを、
座間はヒカルの前で惜しげもなく引き裂いた。
そして、嫌がり、抵抗するヒカルの頭をおさえ、長細く切り裂いたそれを、
猿轡としてヒカルの口に噛ませる。
首の後ろではずれないよう強くしばる。
「これで、望まぬ声も出ぬであろうよ」
座間が笑った。菅原も笑いながら乱暴にヒカルの中の張り型を揺さぶった。
「んんっ……んうっ……んっっんっっ」
座間は再び腰を下ろし、空になっていた杯に酒をそそぐと、ぐいと一息にそれを煽った。
「めったに見れぬ、よい光景よのう」
座間が目を細めた。
必死に声を出すまいとする、ヒカルのけなげな所作さえも、座間達は面白がり
余興のように楽しんでいるのだ。
そうしてもう、半刻近くもずっと責められ続けただろうか。
座間たちの目の前で、すでにヒカルはその張り型により、
二度ほども頂点に押し上げられていた。
だが、責め苦は果てがない。
菅原がその手を休めることはなく、時折、より深く、あるいは角度を変えて
その張り型を突き出しては、ヒカルに身をよじらせる。
そうして、ヒカルが声を押さえながら、望まぬ快感に身を震わす様を、座間は座って
脇息にひじをつき、酒をちびりちびりと飲みながら見物していた。
達したばかりのヒカルの柔肉を、菅原がふたたび掻き回しだす。
頂点に押し上げられたばかりで、過敏になっっている腸壁はその
少々乱暴な動きさえ、安易に快楽に変換してヒカルを苦しめる。
「ん……く……………っ…っ…!」
頬を伝って、唇を濡らしたものが汗なのか涙なのか自分でもよくわからなかった。
体の芯はドロドロとした肉欲に煽られていたが、それは表に出さない。
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キリリと、食まされた布を噛みしめる。
意地でも座間達に自分の感じている声など聞かせたくなかった。
精を履きだして萎えていたヒカルはずのものが、ふたたび腹の底からの
沸き上がるような快楽に反応して勃ち上がるのを見て、菅原が言葉で
ヒカルを責める。
「この検非違使どのは淫乱じゃのう。先ほど、達したばかりというに、もう
こうも立ち上がってきおる。さては、検非違使庁では、若者に閨の術まで
教えているのか」
そう言いながら、その太い張り型をぐいと奥まで捻りながら突き入れる。
ヒカルの太ももが波打つ。暗い明かりの中に浮かび上がる、その日に焼けていない
なだらかな足は、今はヒカル自身が放ったものでドロドロに汚れていた。
「いやいや、顔では嫌がりながら、体は責められて喜んでおるようじゃ。訓練で
どうにもなるものではない。生まれつきのものじゃろうよ。閨用に育てられた
稚児でさえ、こうもよい反応は返さぬわ」
座間が、酒を含みながら言葉でヒカルを嬲る。
身の内から張り型で責められ、身の外から言葉で責められ、ヒカルの心が震えた。
今の座間にとって、そのヒカルが恥羞に流す涙こそが、最高の美酒だった。
「今日の昼間は、気がすいたのう、顕忠。あの佐為の奴の顔を見たか」
「はい、誠に。あの白い顔が、我らともにおるこの検非違使の姿を見たときに、
さらに白くなって歪むさま。まこと見物でございましたなぁ」
言いながら、菅原が手の中のモノを強く突き上げる。
「んううっっっ!」
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ヒカルが苦しげに首を振る。明るい色の前髪がキラキラ光って揺れる。
「のう、検非違使殿。この光景を佐為殿に見せたら、なんと言わらっしゃるかのう。
お気に入りの検非違使がこんなにも肉に強欲であると死ったら、どんな
顔をされるかのう」
座間が立ち上がってヒカルに近づいてきた。手早く夜着の前をはだける。
堂々と赤黒い、張り型とほぼ同じ形をしたそれが、弓なりに反り返って、
天に向かって勃ちあがっていた。
それをみとめて、菅原はヒカルの中を蹂躙していた張り型を抜きながら言う。
「今度、ぜひこの夜宴に、佐為殿を御招待せねばなりませんなぁ」
「うむ。あやつの目の前で、儂がこの子供を犯して泣かせる様を、見せつけて
やりたいものよ」
座間はヒカルの前に立つと、ぐいとその手で精液にまみれたヒカルの足の付け根を
押し広げ、少し腰を落とすと、その剛直を、ヒカルの体に突き刺した。
「………っっんぐっ……」
くぐもった声を猿轡をされた口の中でさせて、ヒカルは自分の中にあの張り型と
同じ形ながら、更に熱くて弾力があるものが入り込み、蹂躙するのを感じた。
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座間はしばらく、わざと動きを止めて、その中の壁の感触を楽しんだ。
その後、ゆっくりと自分の豪物を捻るように動かす。
座間が独特の太い声で、ヒカルの耳元にささやいた。
「わかるかね、検非違使殿。儂が今、お前の体の中におるのが、ん?」
ヒカルが閉じていた目をわすかに開いて、間近の座間をみた。
「ここが儂の摩羅の頭の部分じゃ」
座間はわざと先端だけで、ヒカルの内壁をいじめた。
「ここが棹」
こんどはその一物の胴の部分で、ヒカルの中をこねまわす。
ヒカルの内ももが引きつって、震えた。
「ゆめゆめ、わしらに逆らおうなどとは思わんことだ。それとも、別のことを
考えていれば、わしらの手管から逃れられるとでも思っておるのかのうて
おるのかのう」
ヒカルは思わずハッとしたように座間を見た。
見透かされていた。
「無理じゃ無理じゃ。お前の体はこうも快楽に敏感に出来ておる。一緒に楽しんで
しもうたほうが、楽じゃぞ、ん?」
「んんっっ!……ぅうんっ!」
突然、座間が鋭く奥を突き上げた。腰を強く上下させて、ヒカルを揺さぶる。
しつこい程に、感じる部分を刺激され、ヒカルの下半身から力が抜けて、
カクンと膝が落ちた。
「……んふっっ!……」
喉の奥で、鋭い嬌声があがる。磔にされ立ったまま犯されているヒカルは、
膝の力が抜けたことで、かえってその全体重が座間を受け入れている部分に
かかり、その陽根をより奥まで飲み込んでしまったのだ。
「ほっほっ、どうしたね、検非違使殿」
ヒカルは必死で残る気力をかき集め、膝に力をいれて、体重を支えようとする。
座間が責め上げる。また下半身の力が抜けて、ヒカルは奥まで座間のものを
飲み込んでしまう。ヒカルがまたそれを嫌って立ち上がろうとする。
座間が腰を揺する。
その繰り返しだ。
あまりのやるせなさに、ヒカルの目じりから涙がこぼれる。
とうとう、ヒカルの方が根をあげて、体から力を抜いた。
「もう諦めたのかね、検非違使殿?」
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