POPSICLE

 二学期まで後一週間をきった、夏休みのある日の事だった。
 その日、青学男子テニス部の練習は午前中だけで、午後はフリーとなっていた。

      ●

「……おい」
 額に青筋を浮かべながら、手塚は眼前の不二にそう問いかけた。
「何?」
 おなじみの微笑みを不二は返した。
「……いったい……何のつもりだ……?」
 仰向けの自分を上から見下ろしている不二を睨む。眼鏡の無い目は鋭く細められている。その声はわずかに擦れており、息遣いも上がっている。
「何って? 解ってるくせに」
 可愛らしく首をかしげる不二に、手塚は声を荒げた。
「とぼけるな……! 宿題は何処に行った!?」
「やだなー。君を呼ぶための口実に決まってるじゃん」
「『何もしない』って言ったのはどいつだ!?」
「嘘も方便って言うでしょ?」
 何の悪びれも無くそう言う不二の厚顔っぷりに、頭が痛くなってきた手塚だった。

「今日の午後、うちに来ない? 夏休みの宿題で聞きたいことこあるんだけど」
 部活終了後、そう声をかけてきたのは不二の方だった。特に断る理由も無かったので手塚はOKした。
 だが、不二の家に着いて部屋に入るなり、いきなりベッドに押し倒された。何が起こったのか解らないままに眼鏡を外されて唇を重ねられた。
 息が切れるまで口内を貪られたあとようやく開放され、そしてようやく手塚は自分の状況を理解するに至った。
 ……まんまと罠にはまったのだ、自分は。

 なんとか起き上がろうと身体を揺するが無駄だった。いくら体格差があっても、全体重をかけて押さえつけられていては身動きが取れない。
 そのうち再び深く口付けられた。互いの唾液の塗れた音だけが耳に響く。意識が口に集中していて身体に力が入らなくなる。舌を痛いほど吸われて目尻に生理的な涙が浮かんだ。
「……んっ……」
 ほんの少し唇を離して舌と舌を絡みあわせる。僅かに開いた口の端から、透明な筋が顎を伝って垂れた。
 長いキスを終え、すっかり大人しくなった手塚を、不二は満足げに眺めた。
「……解ってて、誘いに乗ったんだと思ってたけど?」
 シャツのボタンに手をかけながらわずかに笑う。手塚は口元を手で拭いながら横を向いた。
「そんな訳……あるか……!」
「……違うの?」
 騙された自分を嘲笑われたような気がして、手塚は眼を瞑った。
「最近全然してなかったし、てっきり手塚も寂しかったんだと……」
 夏休みとは言ってもほぼ毎日朝から夕方まで部活だ。数少ない休日には別の用事が入っており、なかなか二人きりで会う機会などなかった。
 ましてや、ゆっくり身体を重ねる機会など、
 せっかくの夏休みだというのに、一度もなかったのだ。
 ボタンを外して露になった胸に、不二が顔を寄せた。鼓動を打つ辺りにキスをする。
「寂しかったよ、僕は」
「……不二」
 不二の声がいつになく真摯に聞こえたので、手塚は一瞬抵抗を忘れた。
「……ふっ……」
 何か言おうとするが、胸の突起に歯を立てられて言葉を紡げなかった。
 胸への愛撫を続けながら、不二は手塚の下半身へ片手を伸ばした。ズボンのチャックを開けて指を差し入れる。下着の上からそっと擦るとそれはすぐに反応を返した。
 不二は手塚の顔を見ながら、唾液に塗れた口でクスと笑った。
「……こっちは寂しがってたみたいだけど」
「っ……」
 嫌悪感で一杯の心とは裏腹に、忙しさで構ってやれなかった身体は素直だった。ちょっと弄られるだけでみるみる硬くなってゆく。
 手塚のシャツを肩まで剥ぐと、不二は汗ばむ首筋に舌を這わせた。激しく上下する喉仏に口を当てると、荒い息遣いが肌を通して伝わってくる。
「やめ……服が、汚れるっ……」
 依然として続く下半身への刺激に、手塚が音を上げた。無意識に腰を浮かせ、顔を左手で覆うようにしながら途切れ途切れに小さく声をあげる。
「じゃあ、脱いじゃおうか?」
 答えを待つこともなく不二は手塚のズボンと下着に手をかけると、腿の半分辺りまで引き摺り下ろした。
「…………!」
 外気に晒された手塚自身の先端には透明な液体が滲み出していた。不二はその液体を指先で拭うと、棹の部分に塗りつけ直接指を絡めて上下にさすり始めた。薄い布越しには与えられることがなかった決定的な刺激に手塚の全身がビクビクと跳ねる。
「……ッ……」
 喘ぎ声を噛み殺しながら、手塚は観念したように瞳を閉じた。

「……早かったね」
 掌に吐き出された精液を舐めとりながら、不二は笑った。手塚はシーツに顔を押し付け隠すようにしている。手淫で簡単にイかされた自分を恥じているようだった。
「もう……止めてくれ……明日も部活が……」
 弱々しい哀願も、不二にはきかなかった。
「君一人だけ気持ちよくなっといて……それはずるいんじゃない?」
 射精の余韻でぐったりしている手塚の身体を不二は反転させ、腰を抱えて持ち上げた。突然うつ伏せにさせられて、手塚は両手をついてバランスを整えた。
 不二は半分以上はだけていた手塚のシャツを背中から捲り上げると、両腕に絡めた。その後、手塚のズボンを足首辺りまで下げると、四つん這いになった手塚の両足を開かせてその間に座り込んだ。
「待てっ……!」
 手塚は後ろを向いて抗議の声を上げた。恥部を全て不二の眼前に曝け出すような格好には耐えられなかった。
 ましてや、今はまだ午後三時前だ。ブラインドの隙間から夏の強い日差が差し込んでいるので、照明が無くとも部屋の内部は十分に明るい。
「……まだ、明るい……!」
 太陽の登っているうちからセックスすることに、手塚はまだ抵抗がある。なんとか入れるのは止めさせようと脚を動かして体勢を変えようとする。だが、足首に纏わりつくズボンとふくらはぎの上に乗る不二のせいで下半身は固定されている。腕もシャツのせいで自由を奪われている。
「こんな時間から……っ」
「今日は母さんも姉さんも帰ってくるの遅いから、心配いらないよ。ここ二階だから声も外には聞こえないし」
「あのなっ……そういう問題じゃない!」
「明るいと嫌?」
「当たり前だ!」
 不二は少し悩んだ表情を見せたが、すぐに顔を輝かせた。何か思いついたようだった。
「そんなに嫌なら……これならどう?」
 そう言った不二がどこからともなく取り出したのは一枚の布切れだった。
「な……」
 後ろから手を回し、手塚の両目を覆うように布を当てる。そして布切れの端を頭の後ろで固く結んだ。
「何の真似だ……! 外せ!」
「でもこれで暗くなったでしょ? 手塚だけだけど」
 手塚は首を振って抵抗を試みたが無駄だった。両手は自由を奪われているので、目を覆う布を自分で外す事は出来ない。腹筋だけで上半身を起こそうとするが、不二が背中から覆い被さってきたのでそれも出来なかった。
 突然右手で顎を掴まれ、上を向かせられた。耳の内部に熱い吐息が吹きかけられる。
「それにね、視界が奪われてるほうが、ヨクなるんだって……」
「!」
 後ろから股間のモノをきつく握られ、全身から力が抜ける。
「……っ!」
 無理やり首を後ろに捻らされて、唇に噛み付かれた。貪り食らうような乱暴なキスが終わると、顔は開放された。だが視界が遮られてるので、次に何処に触られようとしているかが解らない。
「……嫌、だ……」
 いきなり臀部を捕まれたと思うと、ぐいと左右に割り開かれた。そして奥まった場所にそっとキスをされる。心の準備もなしに与えられた唇の感触に全身が粟立つ。
「ここも、久しぶりだしね……痛くないようにしなきゃ」
 舌で皺を一本一本ほぐすように丹念に舐められ、尖らされた舌先で入り口を突かれる。生暖かい舌が与える快感よりも、ソコを明るい場所で広げられ舐められているという羞恥の方が先に立つ。
「駄目だ……汚い……っ……」
 排泄を行う場所である、という意識が未だ拭えない手塚である。見られ触られるだけでもまだ慣れていないのに、まして口で愛撫されるなど、何度やられても耐えられるものではない。
「汚くなんかないよ? 可愛いのに……手塚のココ。……開いたり閉じたりしてる。もう欲しいのかな?」
「……くッ……」
 手塚は奥歯を硬く噛み締めた。肌にかかる息のせいで、どれだけ不二が自分の秘所を至近距離で見ているかと言う事が解る。
 不二は両手の親指を入り口に添えると、軽く力を入れて左右に開いた。内部の粘膜にひんやりとした外気を感じ、下半身を弄られている事に今更ながら羞恥心が増す。
 舌が内部に差し込まれ、唾液を壁に塗りつけるように動く。軟体動物が内部で這っているような感覚に意識が遠くなる。
 視界が奪われている事で他の感覚が敏感になっているようだった。臀部の肉に食い込む指の感覚がよりリアルに感じられる。クチュクチュと舌が生々しく動く音が耳に届き、手の甲に筋が浮くほどシーツを握り締めた。
「ん……っ」
 不二は顔を上げると、唾液で十分にほぐしたその場所に指を一本差し込んだ。入り口は何の抵抗も無く指を受け入れた。軽く抜き差ししながら、徐々に奥まで埋め込んでゆく。
「……手塚の中、凄く熱くなってる……指出そうとするとぐいぐい締め付けて来るよ」
「……もう、喋るな……っ」
 耐えられない、と手塚は首を横に振った。
「明るいからよく見えるんだよ。手塚の可愛いトコロ」
「だから……嫌だと言ったんだ……!」
 ふと、不二が黙り込んだ。少しの沈黙のあと、思いがけない事を言い出した。
「じゃ、止めてあげてもいいよ……君がゲームに勝ったらね」

 不二の持ち出したゲームは次のような内容だった。不二が持ってきたものを手塚が触って何か答える、という。一回きりで、手塚が当てれば手塚の勝ち、外せば不二の勝ちとなる。負けたほうは勝ったほうの言う事をなんでも聞かなくてはならない。
 幾分理不尽なものを感じながらも手塚はゲームをする事になった。昼間から目隠しをされ手足の自由を奪われたこの状態からなんとか逃れたかった。
 動かないでね、と言って不二は一旦手塚から離れた。ドアのノブが回る音がしたところからすると部屋の外に出たらしい。このまま逃げ出す事も考えたが、いつ不二が戻ってくるかわからないので止めた。
 予想通り、すぐに不二は再び戻ってきた。
「……じゃ、これ、なーんだ?」
「!!」
 思わぬところに刺激を感じて手塚は身を硬くした。両手に与えられると思っていた問題の品物は別の部分に与えられた。股間に垂れる手塚自身に不二は「何か」を触れさせた。
「おま……何処……ふ……っ!」
「……誰も『手で触って』なんて言ってないよ?」
「あの……なぁっ……痛ぅ……!」
 抗議しようとするが、「何か」が股間に触れるたびにビリビリと焼けるような痛みが走って思考がうまく出来なくなる。内腿をなぞられると、触れられた部分がやけに熱を帯びた。
「さて、なーんだ?」
 妙にはしゃいだ様子の不二に、手塚は必死で答えた。
「……お前っ……氷か……っ!」
 皮膚から離されると、妙にひんやりした冷気が感じられた。不二の性格といい、わざわざ部屋から出て行ったことといい、濡れた感触といい間違いないと思ったのだが。

 しかし。

「……残念でした」
「ひっ……!」
 そう言うと同時に不二はその「何か」を手塚の後ろの穴に押し込んだ。弄られて熱を帯びていた粘膜が急激な冷気に引きつるのが感じられる。だが濡れている「何か」はすんなりと内部に納まった。
 不二は手塚の耳元に口を寄せると、答えを教えた。
「正解は……、アイスキャンデーでした」
「な……ひあっ……!!」
 何を考えているんだ、と言う前に不二は手塚の内部に埋め込んだアイスキャンデーをぐるりと一回転させた。粘膜が捩れる痛みに思わず悲鳴じみた声を上げる。手から力が抜けて手塚はベッドに崩れこんだ。不二の前に腰だけを突き出した体勢になるが、そんなことに気付かないほど手塚は動揺していた。中に入れられたモノの正体とそれが与える冷たいとも熱いともいえない感覚に混乱させられる。
「痛っ……! ……やっ……」
「惜しかったね。でも君の負け」
「抜け……早くっ…ぅ……!」
「小さいのにしたからきつくないでしょ」
「この…馬鹿や……あッ」
 食べ物をそんな場所に入れるなんて神経が信じられない。緊張したそこは異物を内部から押し出そうとするのだが、不二はしっかりと抜けないように押さえつけていた。
 無意識に締め付けるたび、中にあるものがアイスキャンデーなのだと実感させられる。食べ物をこのような行為に使っているという倒錯感に眩暈がする。
 自分の内部に溶けた液体が溢れているのを感じて、手塚は歯を食いしばった。
「溶けてドロドロだよ……中、熱いから」
 冷やされたその場所付近に生暖かいものが触れる。舌だとすぐに解った。不二が舌で溶け出した汁を舐めとり始めているのである。
「……やめッ…止めろ!」
「このままじゃこぼれちゃうよ……もったいないでしょ」
 ぴちゃぴちゃとわざとらしく水音をたてながら溶けて溢れ出したアイスを舐められる。指を入れて内部をかき回されると、中でぐちゃぐちゃになったアイスが音を立てた。
「ん……甘くて美味しい……」
「な……言うな……ッ」
 あまりの居た堪れなさに、手塚はシーツに顔を埋めて耐えた。

「……冷たくなっちゃったね、ここ」
 溶け出すアイスを全て舐めきった後、背中に覆い被さり中に指を入れながら不二が呟いた。
 手塚は腰を高く上げたまま、息も絶え絶えな状態でされるがままになっていた。視界も未だ奪われたままだ。身体全体が麻痺したようで、指一本すら動かすのが億劫だった。
 反抗する気力もなくし項垂れたままの手塚を見て、不二はふと視線を和らげた。
「……怒った?」
 不二の問いに、手塚は何も答えなかった。その行為が雄弁に彼の心境を物語っていた。
「ごめんね」
 そう言いながら髪を撫でる指や、首筋に触れる唇が、手塚にはやけに優しく感じられた。
 顔は上げないまま、途切れ途切れに手塚は言葉を発した。
「……謝る…ぐらい、なら……最初から、……するな……」
「うん……」
「…………俺も……悪かった……から……」
 構ってやれなくて、悪かった。
 少し間を置いてから消え入りそうな声で手塚が呟いた言葉は、不二の耳にしっかり届いていた。
「……手塚?」
 再び手塚は何も言わなくなった。
 しばらく沈黙が続いたあと、不二はおもむろに口を開いた。
「じゃ……続き、しようか」

 強張っている入り口を指で軽く解されると、すぐに熱い塊が押し付けられた。挿入の予感に手塚の全身がざわりと総毛立つ。
「……入れるよ」
「……ッ……」
 いつもは後ろからの挿入を嫌がる手塚だが、文句を言う気力も無く貫かれた。潜り込んでくる不二がいつも以上に熱く感じられて、思わず出してしまいそうになる声を必死で抑えた。
 冷え切った内壁が熱で溶けていく。先ほどまで冷気に犯されていた粘膜は喜んで不二のものに絡みついた。まだ目隠しは取られていない。視覚が封じられている事が余計に内部の感覚を敏感にしているようだった。
 内部をかき回されるようにされて、自然と手塚の腰が揺れ始める。
「……ひ……アっ……」
「……手塚……」
 不意に不二が顔を上げた。浅く埋め込んだまま手塚の前に手を伸ばした。
「……ひょっとして、前、感じてる?」
「! ……ちが……」
 否定する前に捕まれた。手塚の股間は確かに再び硬度を取り戻していた。
 不二が耳元に口を寄せて囁く。
「僕ので……感じた?」
「……そん……な……こと」
 首を横に振るが、無意味な反抗だと手塚自身理解していた。垂れる袋を擦り合わされるように揉まれるとソコはいっそう鎌首をもたげた。
「……くぅっ……」
「手塚……可愛い」
「馬鹿や……ろ……ふぅッ!」
 内部から前立腺を突かれて、手塚は顎を仰け反らせた。半開きになった口に不二が開いている手の指を差し込む。
「ふ……っ」
 舌を弄ばれて、開いた口から唾液の糸が滴り落ちた。後ろは依然としてイイ所を集中的に責められ続ける。
「ん……凄くいいよ、今日の君……」
「……ぁッ……」
 一度は冷やされた体が繋がっている部分からどろどろに溶けていくように感じて、手塚はその波に流されていった。

      ●

 ――次の日の部活でのこと。
 差し入れだと称して不二が買ってきたアイスキャンデーにヤケに拒否反応を示す手塚と、そんな部長をいぶかしむテニス部面々の姿があった、と言う。


……微妙に時期はずれなネタになっちゃったよ。
ネタ考えたのは8月31日だったのでギリギリ夏だったんですがね……ねえ……。
問題は時期ではないという気もしますが……あははは……はは……はあ……何書いてるんだ私(鬱)。
「目隠し希望〜」と言う友人のリクエストに答えました……
アレですね、猿轡、腕縛りとやってきたので、今回の目隠しで縛り三部作ですね(死)

しかし相変わらずうちの不二子は手塚に甘い……うん、甘いんですよコレ……(歪んでるな自分)
ていうか好き放題させる塚がまず甘いのか……なんだただのバカップルか……(納得)

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