エラリー・クイーン



『ミニ・ミステリ傑作選』(編)
 (創元推理文庫
 1975年10月刊
 原著刊行1969年
 吉田誠一・永井淳・深町眞理子・中村保男 訳)
 僕が買った創元推理文庫版についていた帯には、北村薫が献辞を寄せており、本書に収められた67編のミニミステリ群をして「寝る前に一作ずつ読んでいっても、ふた月以上の楽しみを保証してくれる本なのです。」と評しているが、これは何ともお気楽な献辞と言うべきであって、いくら寝る前だと言っても、こうサクサクと楽しく読めるものを、1日に1作ずつしか読まないなんてことが、並の本読みならできるはずもない。修道僧並の禁欲を己に課すことができるなら話は別だが、一体に本読みというのは読書欲という欲求には至って弱くできているからこその本読みなのである。
 そしてまた、67編も収められていれば、中には自分の好みに合わない作品もあるだろうし、そういう作品にぶつかったときには、続きを読むのに倦んで、2、3日読むのをストップするということも、これはあって当然だ。
 そうこうしているうちにどうにか本書を読み終えるのは、目測のふた月よりも、いくらか短い期間の後ということになるのではないだろうか。もちろん、もっと早くても遅くても、それで特に問題があるわけではない。

 エラリー・クイーンの編んだミニミステリのアンソロジーである本書には、先ほどから書いているように67編のミステリが収められている。
 短い作品は2ページ足らず、長い作品でも10ページそこそこという長さのミステリ67編。
 これはいわばショート・ショート集であり、クイーン自身、前書きで、当初は「ショート・ショット(至近距離弾)」というタイトルも構想していたことを明らかにしている通りである。
 ただ、僕自身は、ミステリの様々な形態に触れるにはお手頃であろうと本書を手に取ったものの、「こういうのもミステリって呼ぶのか?」といった作品も、なにぶん短いということもあってか、多々見受けられ、そういう意味では少し混乱してしまった。よく考えれば、ミステリとは、イコール推理小説ではないわけで、特に推理を要求されることがなくても、それはそれでミステリとして成立してはいるということなのだろう。
 いずれにせよ、お手軽に読めるということでは、枕元などに置いておくのに非常に適した1冊であると思う。

 ちなみに、クイーンは他にもミステリのアンソロジーを何冊か編んでおり、その内の何冊かは、日本でも創元推理文庫から出版されている。また、67編という中途半端な数についても、原著では70編あったものを、邦訳の際、同文庫内の他のアンソロジーに収録されている作品についてはこれを除いたために3編減ったということだそうだ。そのへんの詳しいいきさつについては、訳者あとがきで読むことができる。
(2003.9.1)


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