<無意識の行動>
「せ、先輩!」
自転車に乗ろうとした先輩のシャツをつかんだ。
どう呼びとめればいいか分からなくて思わずつかんじゃった…
「えっ!」
先輩は驚いたように振り向いて、あたしを見た。
先輩、背が高いからあたしがまっすぐ見ても顔が見えない…
だからか、あたしは喋り出した。
「あ、あの。紅茶のお金、は、払います!わ、私そんなつもりでクッキー渡したわけじゃないですっ!」
一気に話してはーっと深呼吸をした。
「ゆ、ゆかさん。わかりましたから、離していただけませんか?」
え?
あ…あたしは先輩のシャツを握り締めたままだった。
「す、すいません!!」
すぐに手を離したけど、先輩のシャツあたしが握っていたとこだけ皺だらけになっちゃってる…
きちんとアイロンを掛けられているシャツだから皺がものすごく目立ってる。
「あ…、すみません…」
ど、どうしよう…
ぐるぐる考えているうちに涙が浮かんできた。
はう…
「大丈夫ですか?」
先輩が心配そうに声をかけてくれた。
「だ、大丈夫です!すみません、シャツ皺皺にしちゃって…」
ぐいっと手で涙をふくとかおを上げた。
先輩と目線があった。
きれーなブロンズの髪とやさしそうな顔。
もしかすると先輩とちゃんと顔を会わせたのははじめてかも。
そう考えていたらまた、ぶあっって顔が熱くなった。
そして、そのまま下を向いちゃった。
「シャツは構いませんよ。あとは帰るだけですし。」
「で、でも…」
紅茶をご馳走になってしかもシャツもいいなんて…
上手く言葉にならないよぉ…
先輩は少し考えたあと何か思いついたようにあたしに言った。
「では、こうしませんか?また何か作ってきてください。」
「えっ?」
「この前のクッキーのように、何かお菓子を作ってきてください。それならいいのでは?」
やさしく諭すように話しかけてくれた。
「は、はい。」
首を縦に振りつつ答えた。
「ゆかさんが乗られるのは、あのバスではないのですか?」
先輩がそういって指差したさきからバスが向ってきていた。
「あ、はい。そうです。」
バスがきてあたしが乗り込むまで先輩は見送ってくれた。
「あ、ありがとうございましたっ!」
あたしは深深と乗車口で頭を下げた。
「いえ、楽しみにしていますから。それでは。」
ドアがしまってバスが発車した。
席に座りながらあたしはは〜っと息を吐いた。
「何つくろ…」
あたしの頭の中では先輩に渡すお菓子を何にしようかとぐるぐる考えてた。