黒いコートのオンナノコ 第4章−1
Part.4 日常の時間
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誠は携帯電話を持っていない。
確かに同級生の中にはケータイを持っている奴もけっこう多い。と言うより最近は中学生ぐらいになると持っていない人間の方が少数派になっている気もするが、誠は持っていない。別に塾で夜遅く帰る訳でもないし特段持ちたい理由もないと長い間思ってはいたものの、最近になって徐々にケータイ所持率が高くなってくると自分もちょっと欲しいかなと少し思い始めていた、そういう程度だった。
で、なつきはと言えば、一応持っていたりする。ストラップには小さな熊のぬいぐるみがぶら下がっていたり、女の子っぽさも少し見せている。しかし逆に言えばそのくらい。後は買ってきたままのシルバーの無骨な状態で、液晶のビニールすらまだ剥がされていない。女子中学生にしてはちょっと殺風景な感じがする。
なつきは駅前で、そのくまをゆらゆらと弄びながら、ぼんやりと眺めていた。
今日は、日曜日。
朝の10時、誠との待ち合わせ。
世間的に言えば多分『デート』とでも呼ばれるような、男の子と女の子が2人で遊びに行く日。
――話は、2日前にさかのぼる。