002:階段  2004/01/10 (土)




やけに、目的の場所への距離が遠いような気がする。
よたよたと歩きながら、壁にへたりと寄りかかる。
何だか体が熱くてだらしくて仕方がない。
風邪かな?などと思ってみるが、
それにしては咳きもクシャミも鼻水も出ない。
ただ妙にだるくて体が熱い。
全身から発熱しているようなそんな感覚。
ただ風邪など滅多にひかないから、
どんな症状が引き始めだったかなど覚えては居ない。
石畳の階段を上り、レンガの坂道に出る。
もう直ぐクリスの家だと言うのに、
辿り着くかも解らないくらい具合が良くない。
夏真っ盛りの炎天下。
太陽がじりじりと容赦なく照りつける。
もしかしたら熱射病かも知れないなどと思う。
霞む視界にもう動けそうもなく、
クリスの家の前のレンガ道で意識を失った。




何時間そうしていたのか意識はなく、
『あれ?此処は…』
「あ、シゲル。気がついた?」
ふかふかのベッドの上に寝ていた自分。
よく見るとクリスの家の俺が使っている部屋だった。
『ああ…もしかして、運んでくれたのか?』
「まぁね。だって俺がドア開けたら、シゲル道端で倒れてるんだもん。
吃驚したよ。熱射病だったみたいだから、はい、お水。
こんな炎天下に水分補給怠ったでしょ?
サッカーしてたら帽子被らなくても平気なのに、
熱射病になるなんて…そのくらいしか原因なさそうだし」
『ああ、そういえば…何も飲んでなかったかも…』
「…クスッ。シゲルらしいね。それはさて置き、
先刻シゲルが寝てるときね、また例の彼から電話あったよ?」
『え?佐藤から?』
「そっ。シゲルが熱射病で倒れたって伝えたら、
かなり慌ててたみたいだよ?
それにしても彼、相当英語上達したようだね。
わざと早口でいったのに解ったみたいだから」
『クリス、わざとって?』
「んー、なんかからかってみたくなったんだよね。
いつもシゲルに干渉してくるじゃない?
そりゃ、シゲルの恋人のこと僕がとやかく言うことじゃないけど。
ちょっと無神経かなって…だって、シゲルはさ彼のことやサッカーのこと
思って留学の話もしなかったのに…これじゃ意味ないんじゃない?」
『まぁな。けど、俺のことあいつなりに思ってくれてるってことだから』
「全く、シゲルはお人よしすぎるよ」
溜息を吐くクリスに苦笑して、俺は窓の外を見た。
オレンジ色の夕焼け。
かなりの時間気を失っていたらしい。
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あとがき
今回シゲ出て無いです。

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