028:菜の花 2004/05/12 (水)


	
菜の花みたいに。
きっと、君はひっそりとそこにいて。
いつも、本当は直ぐ傍に居たのに。


どうして、気付かなかったんだろう?
気付くことが出来なかったんだろう?
俺たちはまるで正反対で、
でもとても似通っていて、
だからこそきっと気付かずにいたんだ。

U-15で久し振りにあった君は、
何故だかとても色気があって。
直視するのが憚られるようなそんな感じで。
でも、凄くドキドキして、欲しくなった。

人気の無くなったロッカールームで、
俺は君を押し倒した。

「何を…」
困惑した顔で俺を見て君は言う。
「好きなんだ、ずっと好きだったんだ。
だから、今此処でお前が欲しい」
「何、バカなこと言ってんだよ!
大体、男同士でどうこうって奇怪しいだろう!」
俺を突き飛ばすことはムリだとしても、
サッカーで鍛えたその足で、蹴り飛ばすことは可能だった筈だけれども、
彼はそれをせずに嫌そうな顔でそう言っただけだった。
思ったより冷静で、
そして何より侮蔑的な視線を俺にくれることは無かった。
自分が今どういう状況下にいるかは、
その身をもって解っている筈なのにも関わらず。
だから、余計に嬉しくて、気持ちも抑えられなくて。
「バカなことと言われても仕方ないけど、
でも好きだから、欲しいって思っても仕方ないでしょ?」
「欲しかったら、無理矢理こんなことしても、
いいと思ってんのかよ?大体、何で俺なんだ?」
「気付いたら好きになってた。それじゃダメかな?
欲しいんだ俺、お前が」
「…っ解ったよ、ヤレよ」
顔を背けて、間宮はそう言った。
何かを諦めたように。
「言っとくけど、俺、別に同情なんかじゃないから…」
少し色付く間宮の頬。

それって、実は間宮も俺のこと?



愛しい君口付けをして。
一緒に落ちよう。

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