069:片足 [2003/07/29 19:09] 若菜と体を繋いで、でも、どこか満たされなくて。 本当は怯えているんだ。 慣れている筈なのに。 本当に恋しい相手に抱かれるわけじゃないから。 ごめん、若菜。俺、お前を騙してる。 自分自身だけではなく、お前のことも。 「んっ…結人…」 口をついて出た甘い睦言は、偽りの愛しい名前を紡ぐ。 本当は解っているのに。 俺はまだ佐藤のこと好きだと。 「へへっ…良かった?」 「あぁ…」 事が終わって若菜が嬉しそうに訊いてくる。 そこそこ良くして貰ったから、肯いておく。 その後暫くして俺は寮へと戻った。 翌月の選抜練習後のこと。 「間宮、今日もいい?」 誰も居ないロッカールームに俺と若菜の二人きり。 「…あぁ」 本当は断ろうかとも思ったけれど、 どっちにしろもう既に体を許してしまったわけで…今更、 嫌だというのも変な気がした。 立ち上がって俺の許へくると、若菜は俺にキスしてきた。 「んっ…ちょっと!ダメッだっ…て」 俺は慌てて若菜の顔を押し返す。 「何で?」 「誰かに見られたらまずいだろ…」 「へーきだって、誰もいねぇし」 「けど…」 渋る俺に追い討ちを掛けるごとく、 甘い睦言を耳元で囁かれる。 「なぁ、ココでやってみない?俺さ、口でして欲しいんだけど…」 「なっ」 「いいじゃん?ダメ?」 可愛く訊いてくる若菜にそれ以上断る言葉を見つけられなくて。 「…ちょっとだけだぞ」 「ヤリィ♪」 ロッカールームのベンチに腰を下した若菜の、 ──の間に顔を近づけて、剥き出しのそれを口に含む。 「んっ…くっ」 はっきり言って俺にとっては、あごは疲れるし息は苦しいしでいいことはないのだが。 機嫌を損ねてここで青姦まがいな行為をされるよりはましというだけで。 「ふっくっ…んっ」 手も口も唾液でベトベトしていて気持ち悪い。 忘れ物をした英士に付き合って、俺はロッカールームに戻った。 薄く開いた扉の中から淡い蛍光灯の光が漏れている。 英士がちょっと待ってと制止をかける。 何かと思ったら、中の様子を伺っているらしい。 俺もそれに習って中を覗く。 すると、ベンチに腰掛けた結人と、その結人にフェラをしてやっている間宮の姿。 思わず上げかけた声を、英士の手で飲み込まされる。 慌てて息を整えて英士に言葉をかける。 「…英士、あれ」 「あぁ…中に入るよ」 「え?」 幾らなんでもこの状況で入るのは不味い。 でも英士はお構い無しに扉を開けた。 開く扉にはっとした。 もう誰も帰ったはずだったから。 そして、それは親友の二人。 ヤバイ…非常にヤバイ。 「結人、これは一体どういうこと?」 フェラの最中に英士は一馬とともに現れて、 俺のものを奉仕している間宮を指していった。 「えっと…あの…その」 言いよどむ俺を他所に、間宮は俺の──から顔を上げると 腕で口を拭って、 「見て、解るだろう?」 「間宮、言ってる意味解ってる?」 むすっと眉間に皺を寄せて英士が言う。 俺は慌てて自分のを直した。 「解っている。それから、こいつがしてくれと言ったからしてただけだ」 と間宮は俺を指して言う。 「結人?」 今度はその顔のまま俺を見て名を呼ぶ英士。 「えっと…その…俺、間宮と付き合ってんだわ」 「は?」「え?」 英士と一馬の声がハモル。 「ついでに言うと、もう、最後まで行っちゃったんだよね」 唖然とする二人に、俺がおどけて言うと、 信じられないと目を見開く英士と一馬。 ま、二人の反応は仕方ないと思うけど。 結局突き詰めると、ホモって訳で・汗。 つづく? |