バーチャルプレイ もう、佐藤には…俺は必要ないんだなってそう思った。 あいつの名前を聞いたときに。いや、トレセンで再会した時か? 自覚したときは辛かった。 でも、お遊びだと言っていたサッカーにあいつが真剣に打ち込む姿に正直俺は嬉しかった。 やっと何か一つのことに真剣になれたんだと思うと、人事なのに自分のことのように嬉しかった。 けれど、俺には出来なかった。あいつをサッカーにだけのめり込ませるなんて。 情熱とか努力とか真剣とか。そんな言葉あいつの中には今まで無かったもので。 風祭をライバル視してサッカーが楽しいものだと知ったらしいあいつ。 俺には何も出来なかった。何も。 今のあいつに恋なんていらない。 サッカーとその好敵手(ライバル)さえいれば他には何も目に入らないほど、 あいつは夢中になって追いかけている。 それが嬉しくて…けれど、とても切ない気分に陥るのは何故だろうか? もう、あいつの目に俺は映らない。 映るのは緑色のピッチと、ボールとライバルだけ。 でも、それだけでいいと俺は思った。 だってやっとあいつが過去から開放されたんだから。 俺なんかでは力不足で、てんで何も出来なかったけれど。 好きな人が幸せだと嬉しいって本当なんだとその時だけは思った。 けれど、それが寂しいに変わるのは非常に早くて。 ・ ・ ・ 夜、寮の自室で一人空しく自慰行為に勤しんでいた。 あいつに触れられた時のことを思い出しながら、その行為を行っていると 不意に来訪者が。 息の上った顔で振り返ると、にやりと意地の悪い笑みを浮かべ立っている三上がいた。 「何だ、間宮、そんなに溜まってたのかよ?」 三上に見られて恥辱を感じながらも、自分の手の動きを止められる訳は無かった。 体が覚えてる。あいつとのSEXを。 どうやっても忘れられないくらい、あいつに散々仕込まれたこの体の欲望は自身でも 止めることは叶わない。 「なぁ、そんなに溜まってんなら、相手してやろうか?」 「え?」 三上は俺の手を払いのけて、その反り返っている俺のものに触れてきた。 ……人にされるのは初めてじゃないが、三上からされるということが意外で。 そのまま俺は床に押し倒され、三上は慣れた手つきと腰つき?で俺を攻め立てる。 失神しそうな快感に、俺は思わず三上の首に抱きつき、 こう喘いでいた。 「…やぁ…さと…う…んっあっ…あっ…佐藤…」と。 ぴたりと三上の動きが止まる。 「はぁはぁはぁ…?…どうして、止めるんだ?」 不服を込めて俺が言うと、 「…他の奴の名前呼ばれて萎えた。…つか、お前、男と経験あんだな まぁ、ばっちり仕込まれた感はあるけどよぉ」 嫌味を言いながら俺を見る三上。 「あったら悪いか?…どうでもいいから、早く…してくれ」 俺は屈辱的ではあったが快感に耐えられず、先を促した。 自分が相手してやると言ったんだぞ。 二人同時に絶頂を迎え、はぁはぁと肩で息をする。 「なぁ、間宮。俺と付き合えよ。佐藤とかいう奴の代わりしてやるぜ?」 ニヤリ。 「……お前、笠井は諦めるのか?」 「う…。バーチャルプレイだよ。俺は佐藤代わりでお前は笠井の代わり。 悪い話じゃないと思うぜ?後腐れなく性欲処理できるしよ」 「……解った。では、早速明日佐藤とは別れる」 「は?」 「?」 「お前、まだ付き合ってたのか??」 「ああ?それが?」 三上は絶句するとくつくつと声をひそめて笑った。 翌日。 サッカー部の練習を抜け出した俺は、桜上水に来ていた。 さして広くは無いグランドを眺める。 グランドの片隅にサッカーをやっている人影が見え、そちらに向かう。 すると、簡単にあの金髪頭は見つかった。 「佐藤…ちょっといいか?」 「なんで此処にお前が居るん?…解った、タツボンちょっとええ?」 「ああ。言って来い」 明らかに呆れた顔で水野は俺と佐藤を見て言った。 風祭たちはただ驚いた顔でこちらを見ていた。 校舎裏。使っている者が居ない場所とは落ち着くものだ。 「…で?なんで、こんな所まで…部活終わってから、うち来ればよかったやん?」 「大事な話があるんだ。俺と別れてくれ」 そう言った俺の言葉に目を点にして問い返す佐藤。 状況が掴めていないのか? 「は?」 仕方なく、もう一度言う。 「…だから、俺と別れてくれ」 「は?…ちょお待ちぃや。何で、そないな話になるんや?」 「お前に俺はもう必要ないからだ」 「…俺にお前が必要ないなんてあるわけないやろ?」 俺は首を横に振る。 「お前の目はもうサッカーしか映していないから。 俺は必要ないんだよ」 「そんなことない。お前のこと、こんなに好きやのに、何でそんなことゆうん?」 悲しそうな目で俺を見る佐藤。 「んっ……」 誰も居ないからって…まずいだろ…これは…。 濃厚なキス。 それだけならまだなんとか許容範囲だ。 だが、まだ日が高いうちから盛ってくるというのは…。 佐藤と久し振りにそういうことをした。 しかも屋外で。それも学校で。 けど、この切なげな目やこの優しい腕が俺は大好きだから。 だから。 許してしまった。 本気で好きなのはこの男だけだとそう思った。 「なんやてー?!三上と寝た??」 「ああ。だって、最近ご無沙汰だったろう。だから…」 「…お前なぁー。そういう時は恋人ン所に夜這いに来るもんやろ。普通」 「けど…」 「まぁ、ええわ。俺んこと以外好きにならんのやったら」 「ホントか?」 「ああ」 後日談。 「間宮、三上先輩と寝たってマジ?」 「ああ」 「佐藤はどうしたんだよ??」 「…いいって」 「は?」 驚きで目が点になった藤代を置き去りに、俺は部室に向かった。 ++++++++++++++++++++++++++++++ 後書き これ頭ん中で考えていたのより短いです。 しかも順序もめちゃくちゃ。 気が向いたら書き直します(汗) |