10 YEARS AFTER 何時の間にか、俺は24歳になっていた。 勿論、そんなことは無いのだが、 過去を振り返ってみるとあっという間だったというだけで。 中2の春に知り合って、付き合いだして早十年弱。 なんでこんなに続いてるのか、俺には不思議だった。 だって藤村成樹という男は、それはそれは女好きな奴で、 見た目も軟派なというか派手でそして人気サッカー選手。 CMにも引っ張りだこで、結構世間様に顔をかなり知られている。 勿論女性ファンは、スタジアムの出入口に詰め寄り、 サインやそれ以上のことを期待して待っているのだ。 選手が出てくるのを。 藤村もそれに含まれる。 藤村はかなりの人気だから、ホント女にもてる。 男だから女の方がいいに決まってる。 俺だってあいつの立場ならそうだった筈。 でも、あいつが選んだのは男の俺で。 だからってあいつが浮気しなかったかというとそうでもない。 けれどあいつだから仕方ないと思ってしまう。 元々女好きだと知っていたし、俺たちはただの恋人に過ぎない。 法律で守られるような関係ではないんだ。 キスしたりそれ以上の関係になっても、 あいつと俺の公的上の関係が変わることも無い。 プロのサッカー選手。 敵チーム。 FW(ストライカー)とMF(ボランチ)。 日本代表ではチームメイト。 中学からの顔馴染み。 ただそれだけ。 それ以上のことが世間に知れても確かに不味いけれど。 敵チームになって、ホームが全く別の場所で。 それでも中学の時くらい一緒に入れたらいいと、 少しでも多く一緒に居られたらいいと、 俺たちは同じ家で暮らしていた。 勿論、練習の度の交通時間や、交通費だってバカにならない。 けれど構っていられないから。 プロに入ったばかりの時は、金も無いし規則で独身寮に暫く入っていた。 お互いに活躍するようになって、世間での評価が上がるにつれ 給料(契約金)などが上がってそれなりに金銭面に余裕が出来てからの話だから、 まだそんなに長いこと此処には住んでいないけれど。 俺の留学のことで暫くあいつとの仲が気まずくなっていた時期もある。 けれど、俺が帰国した日、連絡すら入れていないにも関わらず、 あいつが成田に迎えに来ていた。 正直驚いた。 久し振りに…一年振りのあいつは大分変わっていた。 身長が以前より更に伸びて、六センチくらいの差だった筈が、 十センチ以上に開いていた。 俺は伸びたといっても精々三センチくらいなのに。 精悍な顔立ちに短めの金髪。 高1の頃より多少伸びた癖っ毛の金髪が良く似合っていて。 中学の時より少なくなったピアス。 変わらない京都弁に懐かしい微笑。 変わっているのに酷く懐かしくて。 本当はもう終わりだと思っていた。 お互い高校に上がってからは、サッカー一筋だったから。 連絡も二ヶ月に一回あればいい方で。 桐原監督に勧められたイタリアサッカー留学の話を あいつには相談無しで二つ返事で諒承して。 そのことを行く寸前に電話で告げたら、 あいつはただ『待っている』と言った。 嬉しかった。 でも、期待はしなかった。 期待して、裏切られた方が余計辛いから。 だから、『俺のこと忘れてもいいから』と返事をして、 無理矢理電話を切った。 もう、余所見はしない。 サッカーと共にいきると決めたから。 でも、俺は今まだ藤村とこうして付き合っている。 「マムシ?何、ぼーっとしてん?」 「え…。あ、いや。もう俺たち付き合って十年になるんだなと思って」 「そういやそうやなぁ。せやけど、思ったほど変わってないんちゃう?」 「そうか?大分違うと思うんだが…」 「けど、此処弱いん変わってへんやん?」 にやっと笑い藤村は俺の弱い部分を刺激する。 「んっ…ちょっと、やめ…」 止めたかと思うと、キスされた。 「お前な…」 呆れ気味にいうと、藤村はこういうのだった。 「せやけど、まだベッドの中やで?朝もまだけーへんし」 「お前な、何回ヤったと思ってんだよ?!」 「ええやん、別に。まだ、足りんのやもん。久し振りやから」 「……はぁ」 俺は盛大に溜息を吐くことによって、少しだけ気を持ち直す。 そんなこんなで、幸せな毎日。 |