【胎動変換】





ピピピピッ。けたたましく鳴る目覚し時計の音。
慌ててそれを手探りで止め、目の前まで時計を持ってくる。
なんだかいつも使っているそれとは違い、デジタルな数字が踊っている。
時間は六時。
普段は基本的に七時半に仕掛けている筈なのに、やけに早いなと思いつつ起き上がる。
『ふわぁ〜。なんや眠いわ…』
欠伸をしながらシゲはそこら辺を見渡し、様子が異なることに気づいた。
「なんや?目線が低いような気ぃすんにゃけど…ちゅうか、何でベッド?それにフローリングやし」
よくよく考えて何かに気づいたのか、シゲはクローゼットを開け鏡を見た。
黒く短く刈られた髪に半開きくらいの鋭い目。
どこからどう見てもそれは間宮で。普段の自分では到底ありえなかった。
「はて?もしかせんでもあいつも俺になっとるんちゃう?」
シゲは机の上に置かれた携帯を取り、自分の携帯番号を記憶を頼りにプッシュした。
間宮が自分の携帯番号を登録していないからだ。

三回くらいの呼び出しで間宮が…自分の声が受話器の向こうからする。
「はい…。もしかして、佐藤?」
>「あぁ、せや。もしかしてそっちも俺になっとるん?」
「あぁ。じゃあ、お前は俺になっているのか?」
「そうだけど…なんでこんなことになったんだ?」
>「俺にもわかれへん…ただ一つ言える事は、お互い元に戻るまで、お互いの姿で暫く過ごさなあかんっちゅうことや」
「そうだけど…俺らの間に弊害があるとすれば、方言だぞ…俺、関西弁なんて解らないし…」
>「まぁ、俺は気ぃつければ標準語しゃべれへんわけやないけど…」
「兎も角、早く着替えて朝飯済ませて朝練出ろよ…夜のうちに鞄の中は準備はしてあるから…
あ、部活は全部きちんと出ろよいいな?所で、お前のは用意してあるのか?」
>「んー、其処にあるナップザックというかなんちゅうか…」
「あぁ」
「ん?教科書とかは取り敢えず入っているみたいだけど、部活着は?」
>「箪笥から取り敢えず適当に出して詰めといてか」
「解った…所でお前何組だ?」
>「2-Aや。カザ…風祭知っとるやろ?あいつと同じクラスやで。お前は?」
「2-F。藤代と同じクラスだからついてけば解ると思うけど…」
>「さよか」
「じゃあ、もう切るけど…。くれぐれもサボルなよ」
>「あぁ、解っとるって。そや、お前の携帯に俺の番号登録しとくで?」
「えっ…」
心底嫌そうな声が聞こえてくる。
「解ったよ…。じゃあな」
その声と共にぷちっと切られる。

「たっく、しゃあないやっちゃなぁ…。ちゅうか、俺らつき合おうてる筈なんやけどな?」
カチカチと操作しながら、シゲは呟いた。



珍しい時間に起こされ眠くて仕方が無いが、部屋の角に丁度見えたトイレに用足しと顔を洗いに行く。
一旦部屋に戻って慣れない制服に着替えると、食堂は何処だろうと思いながら取り敢えずそれっぽい感じの方を目指すと渋沢たちと出会う。
渋沢や三上もきちんと制服を着ている。
「おはようございます」と取り敢えず当り障り無く挨拶すると、少し驚いた感じの三上と違い、渋沢は笑って『おはよう。間宮』と返した。

この方向でどうやら合っていたようで、食堂に入る。
寮の食堂はどうやらセルフサービスらしく、
入り口付近のトレイを皆持って主食と好きなオカズを選んで適当に座っているようだった。
それに倣って取り敢えず一汁三菜をトレイに乗せると、何処に座ろうかと周りを見渡す。
すると『間宮ー、こっちこっち』と叫ぶ藤代が居た。
藤代の真正面にはネコ目の少年。確か笠井とか言う名だったと思うと、斜め向かいに三上。
藤代の左隣に渋沢という感じで座っていた。
(マムシと藤代って仲ええんかな?)
そんなことを考えながらトレイを持って藤代の右隣に座る。
いつもこのメンバーで食べているのかはシゲには見当はがつかなかったが、取り敢えず知り合いがいるのは流石にシゲでも心強かった。
「頂きます」と寺の習慣で手を合わせて言うと、不思議そうな顔で三上たちに見つめられた。
渋沢も心なしか驚いているが、藤代なんかは『わぁ、珍しい』と喚いていた。
「ん?なんや、変か?」
思わずシゲ(姿は間宮)の口から出た言葉は関西のイントネーションで。
「あれ?どうしたの?間宮。関西弁喋るなんて…。
フザケタにしてはすっげーナチュラルだから逆に違和感なんですけど…。間宮って神奈川の出身じゃなかったっけ?」
(あ、ヤベ。せや、マムシは川崎の方ゆうとったな…)
「そ…そうだが」
焦った為か、声が上擦る。
「何かそういえば雰囲気違うよな今日」
「そうか?」
(バレてんちゃうやろな?)





「まぁ、いいや」
と藤代の追及はそこで終わった。
ほっと胸をなでおろすシゲ。

食事を終えトレイなどを片付けると、部屋に戻りスポーツバッグを持って学校へと向かう。
サッカー部でまず朝練をしてから教室に行く筈なので。

朝練を終え、教室に入る頃、普通の電子音がした。
どうやら間宮の携帯のようだった。
「はい」
>「俺だけど…」
「あぁ。なんや?」
>「俺の席窓側の前から二番目だから。それとお前の席聞いとこうと思って」
「あぁ。窓側から三列目の一番後ろや」
>「そうか…。あ、それと」
「ん?」
>「携帯はミュートにしてばれない様にしろよ。先生に見つかると厄介だから…。
>寮に居る時は平気だけど。それからノートは確り取っておいてくれよ。お前授業中寝るかも知れないから釘刺しとこうと思って」
「…解ったわ。せやけど、ノートって…板書のことなん?」
>「当たり前だろ。お前、ノート白紙なページ多すぎ」
「しゃあないやん」
>「仕方なくない。お前が努力してないだけ。
>つか授業どれもペース速いから寝てる暇無いぞ。聴けとは言わないけど俺のノート白紙にすんなよ」
「わーったって」
>「ホントか?勉強に関しては、いまいち信用出来ないからなお前は」
「…せやから、善処するゆうてるやろ」
>「善処じゃなくて、きちんとすればいいんだよ」
「………はぁ」
>「なんだよ?ちゃんとわかったのか?まぁ、いい。頼んだぞ。佐藤」
「あぁ」
>「じゃ、切るから」
「あ、待て待て」
>「なんだ?」
「好きやで」
>「俺も好き」
プツリ。
今の様子を見ていた藤代と笠井は固まっていた。ナチュラルに紡ぎ出される関西弁。しかも間宮が喋っていたのだ長いこと。
そして極めつけは電話の相手に好きだと朝っぱらから言う始末。
怪訝な顔で自分を見る藤代たちに、シゲは怪訝な顔を仕返して『なんだ?』と訊いた。

乾いた笑いと共に藤代が何でもないと返す。



授業のペースは確かにかなり早く、板書を写すだけにも関わらずかなり疲れていた。
(なんなんや?この学校…ペースマジでめっちゃ早い)
十分毎の休み時間には、疲れたの体でシゲは机にへばっていた。
(マジでありえへん。こんなようついてけるなぁ。あいつもこいつらも…)
そしてシゲは周りの生徒を見回す。
シゲの隣の藤代は授業中気持ちよさそうに眠っていた。
が、眠っているのは彼だけで後は皆確りと授業を聴き入っていた。
(藤代の奴、センセに起こされても寝とるやなんていい根性しとるわ。
マムシの手前、ノート取らん訳にはいかへん俺とちゃうんは解っとるけど…ちょお、羨ましいかもしれへんなぁ…。
こりゃ、はよ元に戻らんと体もたへんで…Hもできひんし…)





ヘタバりながらも、シゲは考え事を続ける。
勿論机に項垂れたというか突っ伏したというかな体勢で。
(いや、まてよ?あいつさえ嫌や無かったらできひんことないやんか?
ちゅうか、自分に突っ込むんはホンマに変な話なんやけど。
俺は別に間宮の体なんやから、肉体的には五分五分やし?
ってもやってる最中に戻るんも嫌やけど…。
俺が突っ込まれるのはちょお嫌やし…。
それともやっぱマムシも俺に突っ込みたいんやろか?
男同士やから、結局それも対等で公平やないとあかんとは思うねん。
せやけど…。ホンマは俺とやることどう思うてんのやろ?) 




昼休み、食事が終わると、シゲ(間宮)は藤代たちに『行くぞ』と言われた。
『は?』と思ったのも束の間、彼らについていくとサッカー部の部室。



なんや、此処。
昼練習もあんのかい。
あいつ、よう体もつなぁ。
なんちゅうハードな生活してんのや…。


昼練が終わり二時間授業を受け、帰りのHRが終わればまた部活。
そんな生活をしていたというのに、シゲは本日初めて知った。




寮に帰るといい加減疲れ果てていた。
机の上にポケットの中身を全部出してから、ズボンを脱いだ。
しわにすると怒られるだろうからとシゲ直ぐにクローゼットのハンガーにかけた。
カッターシャツは洗った方がいいので、床に脱ぎ捨てる。
備え付けのスツールから適当に服を選んで着替える。
『んー、相変わらず寂しい感じやな…アクセサリーとかもってひんのかいな?
ちゅうか、俺の方のマムシも飾り気ないんやろか?何かタツボンに疑われてひんかったらええんやけど…』




一方間宮の方はというと…。


数時間前に遡る。
電話を切った後のことである。
間宮はシゲの言った通りにナップザックのようなものに教科書とノートがある程度入っているのを確認すると、
小さな箪笥からTシャツとハーフパンツを取り出して入れた。
時間は6時半を丁度回った頃だった。
いつもであれば7時からの朝練に間に合うように、6時40分頃には支度を完了して学校へと行くのであるが、
桜上水中学はどうやら公式試合前くらいにしか朝練はなく普段は放課後のみであるようだ。
制服に着替えるのはいいが、ともすれば時間が早すぎる。
朝飯はまだ頂いていない。
取り敢えず何度か来ただけの朧な記憶を頼りに、洗面所に向かった。
パシャリと顔にかけた水が冷たくて気持ちいい。
と顔を洗っていると『よぉ、シゲ今日は早いな』とドレッドヘアーの男が声をかけてくる。
一度だけ見かけたことがあるシゲと同じこの寺の居候の男だ。
鼻ピアスにドレッドなものだから、一度見たら忘れたくても忘れられないインパクトの持ち主である。
修行中の坊主こそあまり見かけないが、その代りこの寺にはやたらと居候が居る。
お布施やその類を幾ら貰っているのか知らないが、そんなにただ飯食らいを居候させて大丈夫なのかと少し不安にすらなる。
ただまぁ、一応受け答えはした方がいいということで、曖昧な言葉で逃げることにした。
「あぁ、まぁ…」
間宮にとっては別段早いことではなくても、多分シゲにしてみればかなり早い時間なのであろうから。
顔を洗ったり飯を食べたりしているとあっという間に時間は過ぎる。
朝は特に時間が経つことが恐ろしく早く感じるものである。
間宮は普段着慣れた武蔵森の制服ではないシゲの制服を纏う。
スラックスの色が違うとか、制服の開襟シャツの半袖に刺繍がないとか違いはそれ位で、そんなに違和感は無い。
まぁ、体がシゲ本人のモノである以上体が記憶している部分も大きいかもしれなかった。
普段であれば櫛で梳くようなこととは無縁である髪の毛も、
今はうっとおしいくらいに長い為、仕方なくブラシで丁寧に梳いた。
(見ている分には良くても、実際に自分が佐藤だと、うっとおしいな…この髪…けど、あいつの体だし勝手に切るわけにも…はぁ)
櫛で髪をとくなんてことは一体何年ぶりだろうと思って、懐古するがそんな記憶は全く無い。
つまり、自分で髪の毛をとくコト自体初めてだったらしい。
間宮としてはかなり貴重な体験をしたのだった。

少し時間は早いが、いつもと全く違った通学路を全く違う歩幅で歩く訳だから
何日戻れないかも不明なので取り敢えず学校までの道のりの時間を計ることにした。

「大体、片道三十分程度か…」
と呟くと桜上水中学校と書かれた学校のプレートを一瞥し、門を潜る。
時刻は7時40分ごろ。
陸上部が朝練を切り上げようとしているのが見て取れた。
が、サッカー部の方には人気がない。
(まぁ、いいけど…)
桜上水は確か8時20分までだったよな?
うちは大体どこの部活も朝練が20分まであるから、
基本的に8時40分が始業なんだよな・・・。
色々考えつつ先程聞いていた2-Aの教室に向かう。
大体感だったが大凡当たっていた。
(そういえば、席のこと訊き忘れていたな…とはいえまだ7時40分だし
あいつは朝練真っ只中だよな…多分後ろの方の席だろうなあいつのことだから…)
んーと、と聞こえてきそうな感じで間宮は席を選ぶと、取り敢えずカバンらしきものを机の上に置いた。
「よく考えればかなり暇だよな…予習でもするか…」
今置いたばかりのソレからノートと教科書を引っ張り出し、ノートを開く。
「何だ…コレ…白紙?」
はぁと盛大に溜息を吐くと間宮は思った。
やっぱりなと。
それからシゲが学校に着くであろう時間まで予習を一通りやっていた。
勿論、周りから奇異に見られたものだが、間宮はいつもしていることなので別段気にならない。

時間になると携帯を取り出し電話をかけた。
自分の名前に宛に電話をかけるなんてのもやはり貴重な体験だった。
電話で確認した所によると、間宮が選んだ席はドンピシャで、
シゲに対しては感がいいかもしれないなどと思った。

授業中、突然当てられた間宮は、一瞬反応できなかった。
「この問題、佐藤解いてみろ」
佐藤と自分がいう分には聞きなれているが、人から言われると反応が遅れる。
(あ、俺か…佐藤って…)
「はい」
すっと黒板の前に歩いて行き、黒板に書かれた数学の問題をサラサラと解いていく。
ざわっ。
教室内が一瞬ざわつく。
数学教師は一瞬驚くと、『せ…正解』と言った。
間宮はパンパンとチョークの手をはたくと、自分の席に戻った。

10分間の短い休憩時間。
普段なら机に突っ伏しているか、将をからかっている筈のシゲが、
次の時間の教科書ノートを机の上に揃え。あまつさえ、ノートを開き予習を始める。
「シゲさん…」
「?」
将に『シゲさん』と呼ばれて反応が遅れる。
実際に間宮本人も『マムシ』というインパクトの強い異名だかあだ名だかがなければ『シゲ』と呼ばれていたかも知れないが…。
「なんだ?風祭。どうかしたのか?」
「えっと、いつもとシゲさんなんか雰囲気違うし。
さっきの数学の問題もサラサラ解いちゃうし…今も、予習始めてるから…」

「佐藤はいつも予習とか…あぁ、するわけ無いな」
一人語散、将を見上げて問う。
「お前は、いつも佐藤のことを『シゲさん』と呼んでいるのか?」
『え、あ、そうですけど?シゲさん?』
ふーん、そうかとまた独り言を言うと、予習を始めた。
いつものシゲとはまた違った独特の雰囲気。
『あの…っ、シゲさんですよね?』
将が困惑した様子で問う。
「…え?あぁ、俺のことか…?慣れない呼ばれ方だと意識してないと反応できないな…」
とまた将を無視して一人呟き納得する。


授業が一段落して、昼食。
弁当は無いので購買部へ向かう。
人込みの中、漸く焼きそばパンとおにぎり二個と烏龍茶を購入して、教室へと戻る。
いつもシゲが屋上でサッカー部の面子と食べていることなど露ほどにも知らない間宮は、そのまま自分の席で食べ始める。

午後の授業も終わり、部活という頃。
「シゲさん、何で今日は屋上こなかったんですか?」
「は?いつもは屋上で食べてるのか?」
「え?」
「そうか、明日からはそうしよう」
「はぁ…」
相槌とも溜息とも取れる曖昧な言葉を将は口にして、サッカー部の部室へと向かった。

「………」
「シゲさん?どうしたんですか?」
「いや、何でもない」
本日は始終無表情のシゲに、将は多少怯えていた。
真面目に見えなくも無いが、何となくとつきにくさがある。
元々、切れ長で整った顔立ちのシゲから、
笑顔がなくなると意外に怒って見えたりもする。
間宮はつい、
自分のいつもの顔のつもりでそういう表情をしていたに過ぎない。
無表情というか、あまり感情を顔に出さないのは既に癖である。
これが本来の間宮の顔であれば、別段珍しくもないのだが。

部活の時間中サボタージュもなく、真摯に練習に打ち込む姿に周りはかなり驚いていた。
また、FWであるはずのシゲが何故か標準で4フラットのやや守備的位置に居た。
また、ミニゲームの最中も時折ディフェンスラインにいたりもした。
守備的MFとしてみたら多々上がり気味な気もするが、FWにしたら下がりすぎである。
「おい!シゲ、お前いつからMFになったんだ?」
水野の言葉に、ハッとした顔で慌ててFWの標準位置まで上がる。
ボール捌きはいつもより上手い感じがする。
手を抜かないような、程よく抜いているような、将に合わせているような。
いや、本気を出した時のシゲはもっと上手いかもしれないとも思う。
でも、普段のシゲのパスワークとは何処か違っていて。
視野は、広い。でも、狭い。
何となくそんな感じを水野は受けた。
将に教えるという感覚がどこかあった普段のシゲのパス。
いまのパスにはそれが無かった。
教えるというより、対等としてみているようなそんな感じのパス。
一緒に楽しむようなそれ。
『え?』
水野は多少の違和感を覚えた。
知っている、このプレイを。
どこかで、自分はこのプレイを見たことがある。
いや、実際にプレイしたことがある気がする。
水野の中にそんな確信めいたものが生まれる。

部活が終わると直ぐにへたばっている、もしくは疲れた風を装うシゲが、尚もボールを蹴っていた。
「おい、そろそろ上がるぞ。シゲ、早く着替えろ」
「え?…あ、俺か…」
「シゲ?」
不信がる水野には気にも留めず、間宮はさっさと部室に入っていく。
「水野、着替え終わったから、閉めていいぞ」
「あぁ。ってか、シゲ…」
「どうした?」
「だから、お前の言葉。まるきり普通だろ?」
「はぁ?…あぁ、そういえば、佐藤は京都の出身だったか?」
「え?…佐藤はって…お前、シゲだよな?」
「あ、そうか。今は佐藤だったっけか…。言っても信じないかもしれないが、俺は佐藤じゃなくて間宮だ」
「は?」

水野が不思議そうに問い返す。
「だから、俺は佐藤ではなく間宮だ。今朝起きたら、佐藤と俺の身体が入れ替わっていたんだ」
「!?」
あっけにとられている水野の横で、それを聞いていた将が言う。
「…間宮くん!?じゃあ、今日の授業中、数学の問題サラサラと解いちゃったのも納得できるよ!」
何気にシゲに失礼な物言いで言い放った。
「別にバレたからといって、漫画やドラマのようにどうということはない。
が、常識を疑われるという観点からすると確かにそうなのかもしれない。
ただまぁ、入れ替わったのは事実だから隠すなどと言う面倒くさいことを別にしなくてもいいだろう?」
「その口調は確かにシゲっぽくはないな…。というか、何でお前とシゲが入れ替わったんだ?
百歩譲ってその話が事実だとしても、何で間宮とシゲが入れ替わるんだ?」
「さぁ、それは俺の知るところではない。それに、現実的に考えて入れ替わること事態が奇異だろう。
それを一々考えていたのでは時間が幾らあったとしてもたりない。取り敢えず元に戻るまでは俺が佐藤だ。よろしくな」
そう言って間宮はニヤリと笑った。
その笑い方に、流石に二人も既視感を感じた。

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2005.3.2〜2008.2.27

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