『ただ、好きだと言って』 ただ、好きだと誰かに言って欲しかった。 本当の『自分』を見てくれる人に。 本当の『自分』を好きになってくれた人に。 ただ、本気で『好き』だと言って欲しかった。 誰でも良かった。 本当の自分を好きになってくれる人なら。 ずっと、自分だけを見てくれる人なら。 誰だって良かった。 そう、誰だって……。 でも、シゲは出逢ってしまった。 一生ものの恋人に。 誰にも絶対に譲りたくなんて無い、とても大切な人に。 好きや…好きや…好きや…好きや… 何でなんやろ? こんな、止まらん…感情初めてや。 誰でもええ、思ぉとった。 せやけど、こんなん…。 あかん、こいつやないとダメや。 他なんて考えられひん! 『はぁ、一体なんだお前?さっきからジロジロと人のこと見やがって!』 初めてシゲの想い人に掛けられた言葉は、そんな怒気をはらんだ色気の『い』の字すら見つけられない辛辣な言葉だった。 『すまん、見惚れとったんや』 シゲはにやけた顔を引き締めるように努めたが、 いかんせん間宮に話し掛けられただけで天にも舞い上がるくらいに浮かれてしまったため、どうしても笑顔になってしまう。 『はぁ!?バカかお前?俺は男だぞ?』 間宮は笑顔のシゲに怪訝な面持ちでそういった。 『知っとるがな』 『だったら、そんな気持ち悪いこと言ってんな!』 『ええやん?ホンマのことやし?』 尚もにこやかに言うシゲに呆れたのか、間宮は『勝手にしろ!』と言い残し、 自分のチームの控え室に戻ろうとした。 去り行く間宮の手首をシゲは咄嗟に掴んだ。 『そんな慌てて行かんでもええやん?なぁ、名前なんてゆうん?』 『はぁ?ナンパなら女にでもしてろよ』 間宮の言葉に、確かに一瞬ハッとした。 何で自分は同性相手に、こんな感情を抱いているのだろうとその時初めて思った。 がしかし、そんなことはモノの数秒で考えるのを止めた。 こんなに誰かを真剣に好きになったのは初めてで、まして相手にも自分を好きになって欲しいなんて必要以上に思ったことがなかった。 だけど、今はこんなにも、この人に自分を知って、自分を好きになって欲しいと思っている。 であって数時間しか経っていない。お互いもそんなに深くは知らない。 それでも、シゲは初めて自分から『欲しい』と強く願っていた。 『俺は佐藤成樹や。シゲでええよ?お前なんてゆうん?』 しつこく訊いてくるシゲに根負けしたのか、ため息を吐きながら間宮はぽつりと言った。 『間宮茂だ』 『へぇ、間宮ゆうん。なぁ、俺と付き合わへん?』 『は?』 今度こそ間宮は自分の耳を疑った。 現在のシュチュエーションも非常にありえないが、その言葉も実際にありえない。 『なっ、マジでナンパ!?お前、奇怪しいんじゃないのか?』 『そやね?せやけど、好きになったもんはしゃあないやん?』 |