Good−bye Lovers
  
 2003/11/21 (金)  
 
 

 

 とある帝国の皇女さまはとても暇を持て余していました。
彼女はいつもベッドの上でごろごろとひがな一日占いばかりしていました。
偶々その日は、悪い結果が出てトランプを放り投げたところでした。
するとコンコンコンという控えめなノックのあと、
父皇の秘書官である水野が部屋へと入ってきました。
「水野どうしたんだ?そんなもの持って…」
何だか嫌な予感は水野の手に山ほど乗っているものから発せられています。
「姫、いい加減、結婚相手を選んで頂かなければ困ります!」
そう、水野が持ってきていたものとは、他国の皇子たちの肖像画。
所謂お見合い写真のようなものです。
「はぁ…。今日の最悪な結果はこれのことだったのかよ…」
と姫は天を仰ぎました。
「いい加減、占いなどはお止めになって、真剣に相手を選んで頂かなければ…」
「けど、政略結婚の相手って言われたってなー。俺、どうでもいいし」
「…あのですね、姫。政略結婚とはいえ、
国にとっては大変重要なことなのですよ!
姫の決断一つで国が戦を免れたりそうでなかったりするんですから」
「…はぁ…もう、解ったよ。選べばいいんだろ。選べば…」
水野がベッドの横にどさりと置いた肖像画を上から順に目を通していきました。
横でその皇子について水野が解説します。
「…何か、うちの領土が目的っぽい奴らばっかりだよなー。
資源も豊富だし…大体、顔の良い男なんてどれだけ腹黒いんだか…」
「姫、口を慎みください。大体、好みの方がいらっしゃらないからなのか
存じませんが、そのような贅沢は…」
「だって、結婚したところでこいつら基本的にうちの国のパイプと俺の
血が入った子供が目的だし。幸せにつうのはまず無理だよなーとか
思うと鬱になる…」
「………」
間宮姫の言葉に、沈黙する水野をよそに、
適当に次から次に肖像画を面倒そう見て行きます。
「あ、こいつ…こいつでいいや」
「は?どなたですか?」
「これ」
「ああ、鳴海皇子ですね。戴冠式が今月という話でした。
皇になるのがこの中では一番早い様子です。
けれど、どうして鳴海皇子を?」
「あ、いや別に…」
(金髪だからって言ったら水野怒りそうだから黙ってよう。
それに、この子がもしあいつ似で生まれたら金髪の相手に嫁いだ方が
ばれにくいかもしれないし…)
実は間宮姫は恋人との間に子を身篭っていました。
勿論、恋人とは身分の差から公に出来るような間柄ではありません。
その為、政略結婚を受け入れるしか他にお腹の子を産む術はありません。
万が一、金髪で子供が生まれたとしても、政略結婚先の相手の皇子が
金髪であればそうそう疑われたりはしないでしょう。
ただし、年とともに父親に似てこないとも限りませんが、
そこはそれと間宮姫は考えていました。


結婚式の日取りは鳴海皇子が戴冠したのちの吉日と決まりました。



「はぁ、これで一安心だよ」
水野は姫の近衛騎士であるシゲと話していました。
「そうやな」
独特の喋り方は西の方の方言です。
浮かない顔でシゲは水野に肯きました。
「どうしたんだ、こんなめでたいことなのに…」
「めでたいか…そうやな。せやけど、俺は…」
「姫と離れるのが寂しいのか?」
「ああ。そうかもしれへんな」
茶化すように言った水野の言葉に、けれどシゲはまじめな顔で答えました。
水野はそれに違和感を覚えましたが、それ以上追求はしませんでした。




とうとう姫の結婚式の日が来てしまいました。
美しい淡いピンク色のドレスに身を包んだ間宮姫は、
父皇の所へ別れの挨拶にやって来ました。
「おお、姫よ。今日は一段と美しい」
間宮姫は淡白な声でこういいました。
「お父様、ドレスがという単語が抜けている気がしますが…」
姫のその一言に、周りは絶句しました。
「こら、姫。何を申すか…。まぁ良い。
それにしてもお前の花嫁姿を見る日が
こんなにも早いとは夢にも思わなかったぞ」
「そうでしょうとも。あまりに他国が追い立てるので仕方が無いでしょう」
「いや、そうではあるが…まぁ、何にせよめでたいではないか」
「そうですかね。
まぁ、何はともあれ、十七年間お世話になりました。
お父様、今日、私は鳴海皇の所へ嫁ぎます」
「ああ。幸せにおなり」
「では」
姫はドレスの端を両手でつかみ軽く持ち上げると、
軽く会釈をして踵を返しました。
なんとも淡白な親子の別れでした。




間宮姫が長い回廊を歩いていると、円柱に凭れ掛かった一人の騎士が居ました。
それは姫の恋人であるシゲでした。
「姫ぃさん…幸せにな」
「佐藤…有難う…」
まともに顔を合わせられず俯いてしまった姫は、
そのまま走っていってしまいました。
長い回廊を抜けると、馬車が用意されていました。
煌びやかな装飾に、白馬が四頭、
立派な御者は姫の結婚を祝福してくれています。
姫の馬車の後ろに、姫とともに御付の女官や宦官たち、
嫁入り道具などがつまれ、鳴海皇の国まで結婚パレードが行われます。
ラッパの音が高鳴り、音楽隊の行進に姫の馬車と続きます。
約半日をかけてゆっくりと新しい花嫁のお披露目をし、
日が暮れたころ鳴海皇の元へ嫁入りを果たしました。




「…ようこそ、我が国へ」
出迎えてくれた鳴海皇とこれから一夜を共にしなければなりません。
間宮姫は鳴海皇に手を引かれ、閨へと消えて行きました。





それから十ヶ月とちょっと経ったある日、妃は二人の金髪の皇子を産みました。
先に生まれた方にルーイと名付け、後に生まれた方にジークと名付けました。
先に生まれた皇子は何処となく父親である鳴海皇に似ていましたが、
後に生まれた皇子は何故か妃にも皇にも似ていなかったのです。
あっというまに月日は流れ、二人の皇子は十歳になりました。
妃は皇に里帰りをしたいと申し入れ、
二人の子供をつれて父皇に逢いに行きました。







「お久しぶりです。お父様…」
「おお、姫か。何年振りだろう」
「お父様にどうしても孫の顔を見せたくて、帰ってまいりました」
「そうか、そうか」
頤を外して柔らかく微笑む父皇に、間宮姫は二人の息子を紹介しました。
「ルーイとジークです」
姫の言葉に皇子の顔を見た父皇は一瞬にして顔を硬くしました。
「ジーク、の…」
皇様は何事かを呟きかけてやめました。
ジークの顔があまりにも昔姫の近衛騎士だったシゲにそっくりだったからです。



父皇との謁見が終わり裏庭で子供たちを遊ばせていると、
懐かしい西の訛りの声が聞こえました。
「ひぃさん」
「佐藤…」
姫ははっとして、ジークを呼びました。
「ジーク!」
「はい、なんですか。母上」
駆けて来たジークをシゲに逢わせました。
「ジーク、この人があなたの本当のお父様よ」
「ひぃさん?!」
姫の言葉にシゲは驚きました。
「僕の本当の父上?」
不思議そうにジークはシゲを見上げました。
「…ひぃさん、俺の子供ってどういうことやねん?」
「俺が鳴海の所へ嫁ぐとき、既にお前の子を身篭っていたんだ」
「へ?」
「妊娠して間もない時だったから、誰も気づかなかったけど…
それで、この子をお前に預かって欲しいんだ…。
鳴海がこの国の皇になるのだけは何としても阻止したいんだ。
お父様が亡くなったらきっとあいつはこの国に我が物顔で乗り込んでくる。
だから、この子が戴冠するまでの間預かって欲しいんだ…。
そして、この子をお父様の後継ぎに…」
「せやけど、一介の騎士との間の子やってばれたらどないすんの?
お前もこの子も俺もヤバイのと違う?」
「そこは、水野に頼んであるから心配ないよ。
水野もこの国のことは大切に思っているから…」
「まぁな。せやけどなんで鳴海皇やったらあかんの?」
「あいつの政治は、あいつの従弟で秘書官の設楽が居てこそ。
あんなのに任せたら一日で国が滅ぶよ」
「はー、そりゃかなんなー」
「だろ?だから頼む。それにこの子半分はお前の子なんだし」
「ああせやな。タツボンと二人で何とかしてみるわ」
「ああ」
こうやって水面下で動いている人がいるとは
鳴海皇は露ほどにも知りませんでした。

つづく。
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ですます調で話書くのはしんどいっすね。
絵本作家さんに尊敬。

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