占いトカゲ



気がついたらいつも、決まって俺の近くにそいつは居た。

何で俺の近くに来るのかは解らなかった。

ウザイと思う反面、懐かれていることを嫌だと思ったことはなかった。

寧ろ、そいつの存在をいつの間にか受け入れていて、

気付くと吃驚するが、居ないとそれはそれで寂しかったりなんかして。

できるだけ意識しないように努めていた。

それが普通なんだと思い込もうとした。



でも…



そいつを意識している自分が居て。

傍にいるそいつを物凄く意識していて。



ある時、気付いてしまった。

気付きたくはなかったのに。



俺はそいつを恋愛対象として見ていたことに。



一度、それを意識してしまうと、そいつの顔とか男ということは関係なく可愛いと思ってしまう。



俺だけが選抜落ちをして、凹んでいた。

でも受かったそいつは藤代とは違って浮かれた様子もなく、

俺を気遣うこともなく、ただいつも通りに俺に接した。

それが無性に嬉しかった。

他の誰もが俺が選抜落ちしたことを知って腫れ物を扱うように接していた。

でも、そいつだけ変わらずそこに居た。



俺の部屋。

同室の近藤は別の部屋に遊びに行っていて、そこに居るのは後輩の間宮。

二人きり。絶好の機会としか言いようのない状況。

間宮は俺に話し掛けるでもなく、雑誌を見たりトランプ占いしたりしているだけ。

そんなこと自分の部屋でやれよ。といつもなら思うところだ。

だが、今は二人きり。



我慢、しなくてもいいよな?



俺はドアの近くでそんなことをしている間宮に近付いた。



『俺も占ってくれね?』

そういうと、間宮は不思議そうに俺を見上げて、『いいぜ』と一言いうとニタリと笑った。



「出たぞ。えーっとなー

『恋愛運がハナマル急上昇。近く恋人ができるでしょう。

健康運は多少下り気味。怪我などに注意しましょう。

金運はそこそこ。無駄遣いしなければそれなりにいいでしょう』

まぁまぁ、いい感じじゃないか?」

と笑顔で俺を見上げる間宮の口唇を塞いでみた。



「んっ……」

間宮がもがいて俺の顔を押し返す。

仕方なく口唇を放すと、

「一体、なんのつもりだ?」

「こういうつもり」

俺はもはや癖となっている笑みを浮かべると、間宮を抱き上げベッドまで運んだ。

そんなに距離は無いが、間宮結構重いのなお前…と勝手に思ったりもしたが、

まぁ、そんなことはどうでもいい。



「お前、何考えている!?」

酷く焦った声で間宮が言う。でも相変わらずあまり表情は変わってはいない。

ベッドに運ばれたら、流石の間宮でも結構狼狽するんだなぁとしみじみ思った。



もう一度キスをする。

びくりと間宮が震えた。



「お前、俺のこと……」

「あぁ」



間宮はきつく目を閉じてぎゅっとシーツを握り締めた。

これから俺にされること、解っているらしい。

まぁ、そりゃそうだろうな。

けど、それなら逃げるって選択肢もあるわけだけど?

「逃げねぇの?今なら逃げられるぜ?」

「……けど、お前は俺にしたいんだろう?」

「まぁな?でも、別にムリヤリしたいわけじゃねぇし、逃げたいなら逃げてもいいぜ?今ならな」

「今なら?」

俺の言葉に不思議そうにそう問う。

「そう、今なら。けど、やり始めたら途中でやめてやる気はさらさらねぇし、

俺も押さえられるとは思えないからな?」

「……別に、嫌じゃない。ただ、ちょっと…」

「あん?」

「怖いだけだ…生理的に」

「ふ?ん?じゃ、ヤルぜ?」

「あぁ、好きにしろ」



という訳でまぁ、やってるわけだが……。

間宮…お前、男なのか?というくらいに抱き心地良すぎ。

「うっ…はっあ…み…かみ」

ヤベ、そんな声出されたら…イっちまうだろ…。

生憎、ゴムなんてつけてなく生でやっているわけで、下手したら中に…という状況。

「お前…あんま、そんな可愛い声出すな…中に出ちまうだろ?」

「別に…いいけど?俺は妊娠するわけでもないし…」

「いや、そういうことじゃないだろ…」

確か…中に出すと…腹下すって聞いたことあるしな。

「どうなっても知らねぇぞ?」





後日、何だかんだで間宮の占いが当たっていたことに驚くのだった。

■終■

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