『人知れず向かいあう』

第一話 孤独の旅人










皆には知られてはなら無い絶対条件の元に、俺達は恋人になった。
道ならぬ恋に、罪悪感を覚えながら。
それでも、捨てる事など出来ない───『好き』というこの衝動。
でも、それももはや関係の無いことで。









1999年3月某日。彼らの招集は行われた。
「はい、皆さん早くバスに乗ってね。空港に間に合わないわよ」
西園寺監督の声が響く。
言われるまま東京選抜の面々はバスに眠い目をこすりながら乗り込んで行く。
彼らにはまだ知らされてすらいないこれから起こる惨劇。
誰も予期していなかった。いや、誰もというのは間違いやも知れぬが。
東京選抜の優勝、そしてナショナル選抜として彼らはこれから同い年の海外の選手たちと、
試合をするため空港へと向かう間際のことである。
(……何だか、嫌な予感がする。飛行機が落ちるとでも言うのだろうか?)
間宮はフト、バスへ乗り込む前に辺りを見まわした。
どうも誰かに見られているような気がしてなら無かったからだ。
ある一点で視線を止めると、自分の大切な人が、遠くからこちらを悲しげな目をして見ている。
そして、その横には陸軍の制服を着た兵隊が、マシンガンをその人に突き付けていた。
我が目を疑いたかった。けれども、それは現実で。
すっと彼はマシンガンを突き付けられたまま翻り、そのまま軍のジープへと乗り込んだ。
「おい、間宮、何してんだよ!早く乗れよ!」
後ろからせっつく藤代。間宮は漸くバスに乗り込んだ。
険しい顔して、心に不安を抱えたまま。
バス車内に入ってからのこと。何故だか隣同士の席になった為か、藤代が間宮に話しかける。
「どうしたんだよ?先刻から恐い顔して。そんなに飛行機嫌いだったっけ?」
「いや。……気になることがある」
「気になること?」
「ああ。……先刻、軍人が居た。なんか嫌な予感がする」
「やめてくれよ。間宮の嫌な勘って直当るんだから」
嫌そうに藤代は顔を顰める。
「仕方ないだろう。感じるものは。こんな街中でマシンガンを持っていたしな」
「……っはぁ〜。マジで何かありそう……」
そんな事を話していた時だった。
突然、西園寺監督が声を荒げた。
「どういうことですか?空港とは…うっ……」
うめいて倒れる西園寺監督。
「玲!!」
西園寺監督の近くに座っていた翼が非難めいた声でそう呼んだ。
運転席に座っていた人物…つまりは運転手に、西園寺監督は何かで腹部を殴られた。
「翼さん!」
将も慌てた。翼までもが運転手の手によって気を失ったのだから。
将がかけ寄ろうとした時、運転手はガスマスクを装着しており、
バス車内のとあるスイッチを押した。
プシューーウ。
エアスプレーを使う時のような音が辺りに響き、モクモクと紫色のガスが吹きだす。
そして、バス車内の者は運転手以外、眠りに落ちた。








「はっ……ここは?」
西園寺は、真っ白な空間の中に居た。
目を醒ましたばかりで、頭がぽーっとするまま、真っ白な空間に放り込まれれば誰だってそう呟くであろう。
辺りを見まわすが、ただただ白い壁と天井の部屋としか認識出来ない空間であった。
西園寺ははっとして、自分の教え子────という言い方は微妙に語弊はあるが間違いではない────
たちの姿を探す。
しかし、自分以外には白い空間が広がっているのみ。
不意にドアが開いた。
正確に言うのであれば、壁の一部が切り取られたようにそこだけ開き、ドアであると認識出来ただけであり、
元々は切り口も何も無かった。そう、ノブさえも。
「やぁ、貴方が西園寺玲さんですね?いや、実に美しい人だ」
男前な割りにやけに下卑た笑い方をする男が、彼女にそう言った。
「あの子たちは?あの子達は何処?」
彼を睨みながら、西園寺は出来るだけの虚勢を張り、そう訊く。
「あの子たち?───あぁ、ナショナル選抜の?今、丁度会場についたころかな?」
「会場?」
怪訝な顔で問う。
「ええ。バトロワの特設会場へ」
「なっ」
「大丈夫ですよ。西園寺さん。少なくとも、一人は生き残るんですから」
そういうと男はくつくつと笑った。
「貴方は捕虜……いわゆる人質というやつですな。三日間おとなしくしていて下されば、
あの子達のゲーム終了後に解放しますよ」
(ゲーム?今、この男はゲームと言ったの?人の命がかかっているのに?)
男はパタリとドアを締めた。




「うっ……う゛っん……」
催眠ガスを使われたからなのか、頭が少し痛む。
間宮は体をゆっくりと起こすと、周りを見まわした。
「……教室?」
「んあ?間宮……ここ、何処?」
藤代は間宮の呟きに気付いたのか、目を醒ますと訳も解らずただそう訊く。
「さぁな。ただ、何処かの教室……学校だろう。他の奴らも居る所を見ると、バトロワにでも選ばれたのかもな」
「なっ……何言ってんだよ!まだ、そうとは……」
「いや…藤代、間宮の言う通りだと思うぜ。玲が居ないし」
冷静さを取り戻したらしい翼が、藤代の言葉を遮りながら言う。
「椎名……」
「覚悟しとかなな」
藤代が呟いた後、関西訛りの声が聞こえる。
「金髪」
翼が金髪と呟き、間宮ははっとしてその人物を見る。
「………そう、だな」
答えたのは間宮だった。
ただ間宮は彼の目を見ようとはしなかったが。
それが何故なのか周りのものには解らない。
「それより、何で金髪がここにいるんだ?」
翼がそう訊くと、シゲの顔に少し陰りが出来る。
「連れてこられたんや。軍に拉致されてん」
「…拉致だって?」
「ああ、せや。せやから、多分間違いあらへんわ」
シゲが告げた後直に、誰かが前から入ってきた。
兵隊の一人が無遠慮に電気を点ける。
「さぁ、皆さん起きてくださいね。これから、説明しますので」
教壇に立った男────風祭功だった────が言った。
にこにこと人懐っこい笑みを顔に張りつけて。
「功兄?」
将は寝ぼけ眼で兄の姿にただそう呟く。まだ状況を把握できていないのだ。
「それでは、説明します。君達、東京…いや、ナショナル選抜及び
こちらが指定した者合わせて四十二人は、今年の東京都のバトロワに選ばれました。
それで君達には、これからちょっと三日間、殺し合いをして貰います。
ルールは特にありません。殺し方には一切制限は有りませんので」
「あの」
挙手をしたのは郭だった。
「はい。郭くん。なんですか?」
「この首に着いてるものはなんですか?首輪のようですが」
「それは、君達の生死をこちらで確認するためにつけて貰っています。
ただ、それには爆弾が組み込まれていますので、引っぱったりはしないで下さい。
無理に外そうとすると首と胴体が離れてしまいますからね。
あと、禁止エリアというものに入っても爆発します」
その言葉にざわめきが増し、寝ぼけていた者達も一気に覚醒する。
「禁止エリア?」
小岩が疑問符を飛ばしながら呟く。
すると、功はそちらを優しい微笑みを浮かべて説明をしだす。
「禁止エリアといものは、一箇所に皆さんが集まり進行がなされないと困るために
設けたもので、その場所に入ると首輪のセンサーが反応して爆弾のスイッチが入ります。
ですから、定期的な放送によって禁止エリアをこちらからお知らせします。
時間も言いますので、メモを取って入らないようにしてくださいね」
にこにこにこと微笑む風祭功の術中に十中八九の者は、はまっている。
今から殺し合いをするという恐怖や不安を取り除くような、穏やかで優しい笑顔。
だから、彼が告げていることは夢の中の出来事のように皆感じていた。
兵隊もいるのに、微塵も恐怖がわかない。
間宮・藤代・椎名・藤村を除いては。
彼らだけはこれから起こる恐怖の訪れが刻一刻と近づいていることに内心臍を噛む。
「支給されるのはこのディバッグです。中には、ペットボトル3本と食料、コンパス、ペン、
地図、ライト、それから武器です。武器はランダムに入っています。はずれもあります。
放送は1日に4回あります。禁止エリアと死者の名前を言います」
「では、十二時ちょうどから始めます。……一番伊賀仁吉くん」
【残り42人】
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後書き
今回は露骨に恋愛は入れないようにしてますが、既に結構はいってます(爆)
つか微妙に入れたいんですがね。こういう話しだと恋愛は切り離せないと
思っていますし。この話しかいていて凄く聞きたくなった曲が有ります(笑)
普段は書いてる時は気が散るんで曲かけないタチなんですがね。
珍しくかけてます。
ちなみに↓
書いてる間のBGM:覚醒都市・君の翼・NATURE PLANET・時間よ止まれ・CRAWL・眠れない夜に
NIGHT SONG・SA-RA-BA・LADY・Ordinary Life・WHITE WING・マメシバ・WAILD FLAWERS
などなどなど。この話しはどちらかって言うとOrdinary Lifeの影響受けてます。
聞いてるうちにそうなっただけですが。

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