第17話 貴方が泣く声が聞こえる すまんな、マムシ。 約束、ホンマに守れそうにないわ。 ホンマは俺よりお前が生きるべきやったのに。 『よかった…』 俺を見上げてそうゆうたお前の顔忘れられひんねん。 何でや? 俺はお前に命賭けて貰える奴ちゃうのに。 これに拉致られた時、ホンマはお前が選ばれてへんのやったら、 それで良かったんや。 せやけど、お前もカザもタツボンも直樹もノリックも居った。 そんなん嘘やと思いたかったわ。 ガサリ。 葉が掠れる音。 振り返りシゲが叫ぶ。 「誰や!?」 「おおっと、ご挨拶だな」 両手を軽く挙げ、降参のポーズで出て来たのは黒川。 「…黒い兄ちゃんか…」 素で名前が出てこなかったのか、シゲはそう言った。 シゲのこの反応は意外だったのか、声を殺して黒川は笑い出す。 「…俺、黒川って言うんだが、お前、直樹の幼馴染みの藤村だろ?」 「あぁ」 黒川の発した『直樹』という単語に反応したのか、 先刻まで呆けたというか驚いた感じの表情とは一変して、 真面目なそれへと変わる。 「そうか。…直樹とは会ったのか?」 「あぁ。会うたで」 「で?どうしたんだ?」 「殺した…せやから、お前にも死んで貰うで!」 そう言ったシゲに黒川はにやりと笑い、何かを投げつけた。 爆風と爆煙で辺りの視界は悪く、死体を確認は出来なかったが、 黒川はそこを離れるべく翻った時だった。 黒煙の中からパンッという音を聞いたのと同時に、 黒川は意識を手放した。 ん?何やろ…マムシ?マムシなんか? どこやろう?ここ。 「佐藤…復讐なんてしなくていい。だから、ただ…」 ただ、何やねんな?なぁ、マムシ。 「幸せに…」 そんなん、ムリや。 お前が居らんのに。 居らへんのに。 何で? 幸せやなんて…ありえへんのや。 もう何しても手には入らへんねん。 せやのに何でや? 幸せに…やなんて… 【残り8人】 |