【煙ヲ潜ル】 ペルメルの煙が天井に広がり、雲のように溜まる。 愛用のZIPPOはガラステーブルの上に転がり…その持ち主は足をソファに 投げ出したまま。ブラウン管に映るマカロニウエスタンを楽しんでいた。 「…煙い」 「あー?」 「煙たい……消せ」 「…………良いだろ?少しぐれぇ」 「何本目だ?」 「…あぁ?……ひぃ、ふぅ……………29本目」 「吸いすぎだ」 喧しいマカロニウエスタンに飽き飽きしていた侍が、眉間に皺を寄せ ヘビースモーカーのガンマンに愚痴る。本人は“知らぬ”という態度を 決め込み、席に居座る。 「せっかくの休みぐらい、好きにさせろ」 「御主の休日はいつだって、こうだろう?」 止まらないヘビースモーカー。見続けるマカロニウエスタン。テーブルの 上でアルコールを待つ体。………そして、グラスにはスコッチ。 他人の迷惑考え無しの大音量が耳を貫いていく。 「喧しい、煙たい…見るか吸うか……どっちかにしろ」 「ウルセェなぁ…まったく…」 ブツクサ文句を言いながら、吸っていたペルメルを灰皿に押しつけ消す。 それと同時に、足でTVのスイッチを切った。 静寂が部屋を支配する。 「…あぁ、静かだ」 「五右ェ門?」 「ん?」 「口寂しい」 「知らぬ。箸でもしゃぶっていろ」 「ひでぇなぁ………ブス」 「……聞き捨てならんな」 「………お前は心が狭いんだよ」 ガンマンは、自分の楽しみを制御され。侍は静寂を求め。 互いの意見の食い違いで、気まずい空気が部屋全体に流れる。 「…五右ェ門」 「何だ、五月蠅い」 「ヤニ、吸わせて」 「吸えばいい。ただし映画はヤメロ…五月蠅くて仕方がない」 「はいはい」 重い腰を持ち上げ、ガラステーブルの上に放置されていたペルメルを取り出す。 その仕草を目で追う侍。……ふいに、頭の隅で悪巧み。 「…こっちじゃなくて……」 「!?……んっ……」 「ごちそうさん」 「ッ!!………死ねッ!」 ペルメルの代わりに…と、ふいの接吻に思わず動転する侍。それを楽しむかのように ほくそ笑むのは意地の悪いガンマン。愛刀に手を添え本気で怒り狂う相手を余所に また、足を投げ出し煙を口から吐き出す。 「…何てぇ顔、してやがる…」 「…御主には、ほとほと呆れる」 「そりゃドーモ」 「もう知らぬッ!」 ふいっ、と顔を背けた侍を宥めるように頭を撫でるガンマン。 昇る煙が髪に絡まり…窓からゆっくりと抜け出す。 「いつか、禁煙させてやるからな……」 「そんときゃ……口元のお世話、頼むぜ五右ェ門ちゃん?」 「ッ!…バカ者」 部屋の煙を潜るように、ガンマンの側へ寄る侍。 マカロニウエスタンの響く部屋、ペルメルが薫る…………。 |
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モリタ様より相互記念で、いただきました!! もう、めっちゃゴエが可愛いデス・・。 次元の旦那もイジワル具合がカッチョイイ・・v はうぅ・・、やっぱモリタ様の小説って 素敵っすよねぇ・・(悦) っていうーか、こんなド素人サイトに、 こんな素敵なssを送ってくれたモリタ様が素敵。 あぁ、モリタ様、マジでありがとうございました!! |
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