彼女は私を「人形」だと言った。
彼は私を「おかあさんみたいだ」と言った。
私は……本当の私はどんな……“人間”なのだろう。
私には碇司令が全てだった。今までは……。
―笑えば良いと思うよ……―
その一言が私の殻を破ったのだろうか。
わからない……でも私は変わりたいと思った。
誰のために……?
誰のためでもない……自分のため。
学校……たくさんの人がいる。
笑ったり泣いたり……みんな色々な表情を持っている。
私は人形じゃない……。
―笑えば良いと思うよ……―
そう……笑えば良い。でも出来ない……。
なぜ?
なぜ?
「あ、綾波、今日みんなでミサトさんの誕生日のお祝いをするんだけど……綾波も暇なら来ない?」
碇君……
「優等生が来るわけないじゃな〜い!」
2号機パイロット……
「私は……優等生じゃない」
「私は人形でもない。普通の……人間よ」
碇君と2号機パイロットが驚いた顔をする。
「綾波……」
―笑えば良いと思うよ……―
えぇ、そうね。
「私も……参加するわ」
私はそっと微笑んだ
「レイ……」
私のことをはじめて名前で呼んだ……2号機パイロット……いいえアスカが。
「アスカ……私も、参加しても良いの?」
「も、勿論じゃない! レイ」
そう言ってアスカは照れくさそうに横を向いた。
「ありがとう……」
簡単な事だったのね。笑えば良い。
そうする事でみんなとの距離が小さくなる。
そして自分でも知らなかった自分を見つけることが出来るような気がする。
―笑えば良いと思うよ……―
そう、きっととても簡単な事……。
「レイ! 行くわよ! さっさとしなさいよ!」
「綾波! 行こう!」
「ええ」
私の顔は自然に笑顔がこぼれていた。