―惣流・アスカ・ラングレーの場合―
作:えみこさん


みんなはアタシを「天才少女」だと言う。

みんなはアタシを「かわいい」とはやしたてる。

でもアタシはそんな声に甘んじることなくより上を上を目指す。

それをやめる事はアタシのプライドが許さないから。

アタシにはそのプライドが全てだった。今までは……。

―アタシは要らない子なの? ―

それが全ての始まりだった。

―もっとアタシを見て! ―

それがアタシのプライドを作る全てだった。

―アタシのプライドをぼろぼろにした奴がいる―

アイツをアタシが必要とした時、アイツはアタシを必要としなかった。

アイツがアタシを必要とした時、アタシはアイツを必要としなかった。

お互いにもっと相手の事をわかってあげられたはずなのに。

そしてわかって欲しかったはずなのに……。
 
 
 

サードインパクトから目覚めた時、アタシとアイツは世界に二人だけだった。

アタシは内心ホッとしたのかもしれない。

だって、ここではもうアタシはプライドを保つ必要がなかったから。

そしてアイツもホッとしていたのかもしれない。

だって、ここではもう他人との関わりで傷つく事がなかったから。
 

そしてそのとき初めてアタシ達はお互いを、他人を必要としたのかもしれない。

みんながLCLの海から還ればアタシはまたプライドを保たなくてはいけない。

みんながLCLの海から還ればアイツはまた他人の恐怖を味わう。

でもアタシ達はそれを望んだ。

プライドなんか捨てても良い。他人の恐怖なんてなんでもない。

だから……

だから……

「アスカー! 碇くーん!」

「シンジ! 惣流!」

「シンジくん! アスカ!」

だからアタシたちは今ここにいるんだ。

―惣流・アスカ・ラングレーの場合―
―終わり―




INDEX

管理人のこめんと
 えみこさんの初期短編集、第7弾です。
 アスカがこちらの世界に戻ってきた理由。他人を傷つけることも、また傷つけられることもない、けれど誰もいない世界より、みんながいる世界の方が、まだマシかもしれないと思ったから。ささやかだけど、けっこう大事かもしれないですね。

 とゆうわけで皆さん、素晴らしい作品を生み出し続けているえみこさんに、これからもアスカらぶで頼むぜっ、とか、レイのことも忘れないでくれよっ、とか、感想や応援のメールをじゃんっじゃん送って頑張ってもらいましょうっ。
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