2001年10月19日 「たけしの誰でもピカソ」 

「宮崎監督も感動!『いつも何度でも』木村弓」

 観客動員数で、ついにあの『タイタニック』を超えた、史上空前の大ヒットロングラン作品となっている宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』。
 不思議な世界へと迷い込んだ、10歳の少女が、その中で生活していくうちに次第に生きる力を取り戻していくという物語。
 監督である宮崎駿は、どんな気持ちでこの作品を作ったのか?

宮崎監督: 若い友人たちがですね、聡明に生きてほしいという願いと、多分そういう願いを自分たちが持っているのを気がつきもしないかも知れないけど持ってるなと思っているから、だから、そういうものを掻き立てて「おじさんの勝ち」といえるような映画を作りたいって言う風に、そういう野心を持っていると思ったんです。

 こうした宮崎監督の思いから、『千と千尋の神隠し』の制作が始まった。彼はその制作過程で、ある歌に大きな力を与えられたという。その歌こそ、のちに主題歌となる『いつも何度でも』。
 『千と千尋』の制作に入る前、宮崎作品のファンだという一人の女性から、監督のもとに不思議な音色の弾き語りCDが届いた。そこに秘められていたエネルギーとパワーに、監督はたちまち胸を打たれた。それが、全ての始まりだった。

 思えば、宮崎作品に流れる音楽は、彼のインスピレーションで決められることが多い。
 『となりのトトロ』では、作品のイメージに歌声がぴったりとの理由で、井上あずみを起用。
 そして、『魔女の宅急便』で挿入歌となった、ユーミンの歌う『ルージュの伝言』。これは、仕事中毎日のように彼女の歌を聴いていた宮崎が、映画のストーリーが完成した時に歌のイメージが作品にぴったりなことを発見、使うことにした。
 4年前に公開され、世界中で大ヒットした『もののけ姫』。その主題歌を歌ったのが、米良美一。二人の出会いは、宮崎監督が、出勤途中の車のラジオから偶然流れてきた米良の歌声を聴き、「この人に歌ってもらおう」と即断した事が始まりだった。

 そんな宮崎監督の元に届いた、不思議な音色の1枚の弾き語りCD。木村弓の音楽と、監督のハートが共振した。
 そして、あの印象的なメロディーは、彼女の中で自然に生まれた。作詞は友人が担当。

覚和歌子:テープをいただいて、3か月半ねかせて置きました。で、そろそろ書こうかな、と。机に向かったら12、3分でできました。
 だから、頭であまり考えてこねくり回してない分、そういうところが素敵かな、と自分たちで思っているんですけれども。

 こうして完成した『いつも何度でも』は、『千と千尋』の主題歌となり、大ヒット。多くの人々を感動させる歌となった。

木村弓:不思議なんです。ほんと今回のこれは不思議で、私も覚さんも…この歌が出来ただけで幸せだな、て言って、喜んじゃったんです。

 『いつも何度でも』。そこには、彼女自身の苦難の半生が歌われているという。

[「いつも何度でも」の歌詞には木村自身の生と死への想いが…]


 大ヒット映画『千と千尋の神隠し』。その主題歌『いつも何度でも』。この歌には、作者自身の苦難の半生が歌われている。
 木村弓は、高校1年の時、アメリカに留学。カリフォルニア州立大学でピアノを学んだ彼女は、帰国後、役者、声楽家を目指して、芝居や歌の練習に励んだ。しかし、脊椎を痛めて断念することに。
 その後、長い療養生活を強いられていた彼女は、1988年、ドイツの竪琴、「ライアー」と出会う。そして、独自の弾き語りを確立、アルバムをリリースするまでになった。
 もともとは、病と闘う自分自身の心を癒すためにライアーを始めた木村弓だが、今では養護施設や老人ホーム、病院などを訪問し演奏。人々の心を癒し、生きる勇気を与え続けている。
 せつないほどに透明感のある木村弓の歌声と、どこか懐かしい竪琴ライアーの音色。宮崎駿監督は彼女の音楽と出会い、インスピレーションを掻き立てられ、物語は遥かに広がっていった。
 今宵、聴く者全ての心を癒す木村弓が、スタジオに登場。自らの思いを綴った大ヒット曲を奏でます。

 

♪いつも何度でも
作詞:覚 和歌子
作曲:木村 弓

 

渡辺満里奈:どうもありがとうございました。本日のゲスト、木村弓さんです。よろしくお願いします。

木村弓:よろしくお願いします。

渡辺:初めてこういう楽器は見るんですけど…。ちょっと何か、こう、雰囲気が、神話に出てきそうな…。ね。

今田耕司:歌声もやっぱ、不思議な感じですね。

北野武:これ弾いていたけど、養老院なんか行ったらダメを押してるような気がするな!おじいさんが楽になっちゃったら危ないと思う。「行っちゃおうか」って感じで…。何かすごい、心地いいから。

渡辺:ね、心地いいですよね…。これ、どういうところに惹かれたんですか?木村さん、この楽器の…。

ライアー(正式名:ケルトナー・ライアー)
「シュタイナー教育」で知られる哲学者R・シュタイナーが
発案した子供や障害者との交流に用いられる竪琴

木村:そうですね、やっぱり、それまでもずっと、人間の声って言うのは、何か竪琴と一番合うんじゃないかって思いがあったんですね。で、あの、これを見たときに、「あ、ちょうど、思ってたような楽器だ」って感じまして、なんていうんですか、こう、誰が弾いても、嫌な音ってだいたい出ないんですね、この楽器は。

北野:魚も採れるんじゃねえのか?

渡辺:(苦笑)なんか危ないなあ…。やめて下さいよ…。採れませんよ、そんなので…。

今田:でも採れるわ、これ。

木村:これってあの、大勢の人に聞かせるためっていうよりも、むしろ弾いてる人が聴いて気持ちよくなって…て言うものだと思います。

 

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