「は!?」 驚きのあまり、大きな声を出してしまった透に、紫呉は人差し指を唇に当てた。透も慌てたように自分の口元を掌で覆う。そして、小さな囁きほどの声で、紫呉に言った。 「あの…えと…そっそれはもしや、は、は、裸で、でしょうかっ!?」 「だめ?」 「だだだだめですっ。そんなことできませんですっ」 見るからに、がっくりと肩を落として紫呉は大きな溜息をついた。 「そう……そうだよね。駄目だよね……本当は分かってたんだ…」 「あ…あの…」 「どうしよう。こんなことをお願いできるのは透くんだけだと思っていたから…締め切りも近いのに、またみっちゃんにどやされちゃうな」 眉を寄せて、これみよがしの苦悩の表情を見せる。 「いや、僕がみっちゃんにどやされて済むものならそれでいいけど、もし原稿が落ちたりしたら…みっちゃん首を吊りかねないからね…。ふぅ。どうしたものか…」 「あ、あのっ、紫呉さん」 「なぁに?」 人が困っているのに無関心でいられない透は、真剣な眼差しで、両手は握り拳で紫呉の名前を呼んだ。 紫呉は表情に出さなかったものの、内心でほくそ笑む。 「あの、お、お洋服を着たままでよろしければ、僭越ながらお手伝いさせていただきたいのですが…」 「えっ!!いいの、透くん!!そうしてもらえると、物凄く嬉しいんだけど!…あ、でもお洋服はちょっとね…こう…なんというか、雰囲気が上手くでるか心配だから…」 「あ…で、では、せめて下着を着けたままというのはいかがでしょうか」 うむ、と考えるふりをして、鷹揚に紫呉は頷いた。 「じゃあ、それでお願いするよ。バイト代もちゃんと出すからねv」 かくして操作完了であった。 「……ん、と。これでヨシ!」 ポンと、紫呉は透の手首を叩いた。 正確に言うと、目にも鮮やかな朱色の縄で縛られた手首だ。 白い肌に柔らかく食い込む程度の強さで縛られた縄は、透の手首を束縛し胸の膨らみの上下を通り、胸の中心でクロスし首へと繋がる。後ろに回された縄は再び手首に戻り、少し上向きに固定された。 約束通り、それだけは残された下着が奇妙に歪んでいて、多分それがなければツンと上を向いた突起は、むしゃぶりつきたい衝動に駆られるくらい美味しそうに見えたはずだ。 紫呉は座り込んでいる透を立ち上がって結び目の美しさを吟味するように見つめ、ふむ、と顎に手を当てた。目線の位置を何度かかえて、少し首を傾げる。 「やっぱりそれ邪魔だね」 それ、とは上半身で唯一残された白い下着だ。 「邪魔と申されましても…」 「んー。でもどうもイマジネーションを遮るっていうか、邪魔、なんだよね…。このままじゃ、仕事にならないな…」 仕事にならないと言われては、意を決してこんな格好をしている意味がない。紫呉のため、みっちゃんさんのために、と文字通り一肌脱いだつもりだった透は困惑して顔色を青くした。どうしても仕事はしていただかなくてはならない。 「ど、どどういたしましょう」 「どういたしましょう、か、ね…」 楽しげにさえ聞こえる声で歌うように言うと、紫呉は立ち上がって机の引出しからなにやら取り出した。手の中にあるのは大ぶりの鋏だ。鈍く光る刃を合わせると、それはシャキンと軽快な音を立てた。透は、恐ろしいものを見るような目付きでそれを見てあんぐりと口を開けた。 顔は青を通り越して白くなってしまっている。 「し…紫呉さん、その鋏は…まさか…」 「大丈夫!ちゃんと新しいの買ってあげるからね〜v」 紫呉はにこにこと笑みを浮かべてもっともらしいことを言うと、縄に締め上げられて歪んだ下着の肩紐に鋏を入れた。さくりとそれが切れ、透は挟みの音を間近で聞いて声にならない悲鳴をあげて、ぞくりと背を震わせた。もう一方の肩紐にも同じように鋏が入る。 紫呉は、今は縄に押さえられているだけになってしまった下着を、縄の間から引き抜いた。 透の形の良い胸の膨らみは縄によって強調され、薄桃色の突起は痛々しいほどに見える。 朱色の縄は、滑らかな白い肌に食い込んで搾り上げ官能的な形を作り上げている。後ろに回された腕を捕らえた縄のお陰で透は胸を反らすような姿勢になって、余計に胸の膨らみを強調していた。 「うん、なかなか良い眺めだね」 透は声もなく、赤い顔をして俯き加減になっている。しかし、下を向けばあられもない自分の胸と、それを締め付ける朱色の縄とが目に入り、更に居た堪れない気持ちにさせるだけだ。それでも、涙ぐみたいほどの格好の上半身だとしても、下半身はまだスカートも下着も着けているのがとりあえずの救いだった。 紫呉は先ほどまでの楽しげな瞳をすっかりと隠して、実に冷静にまじまじと透を観察するような目になった。少し離れた椅子に座り、床に座り込んだ身じろぎも出来ずに俯く透に、じっと見入った。時折朱色の縄を辿るように目線を動かす以外、暫く何の反応も見せなかった。 じりじりと刺すような視線は、それだけで透を追い詰める。 恥ずかしさにうっすらと瞳に涙が浮かんできて、それが零れ落ちないようにと必至に意識を反らす。これが仕事のために必要なのだと言われても、今は、紫呉の気が済ん早く解放されることを望むばかりだ。 ぺたりと床に座る透の両脇に手をついて、紫呉は身を乗り出した。透は身構えて身体を後ろに引いたが、すぐに本棚にぶつかって、それ以上の後退ができなくなった。とん、と背中が本棚につくとほぼ同時に、紫呉が舌を出して、透の、存在を誇示しているかのような胸の突起に触れた。くるりと輪を描くように突起の周りをなぞってから、下から上へ、ゆっくりと一筋舐め上げる。そこで、あたふたとしながらその様子を見守る透と目を合わてにやりとした。透が、先ほど以上に赤くなったのは言うまでもない。 恥ずかしさにぎゅっと目をつむってしまった透の目の前に、紫呉は自分のものを取り出した。透の顎を掌で支えて、指を頬に押し付けるようにして口を開かせると、その中へ押し込んだ。 「ちゃんと、舌使わないと駄目だよ」 縛り上げられて逃げることもできず、少しの抵抗の後ぎこちなく透の舌は動き出した。恥ずかしさに目を瞑ったままだ。しかし、目で見えなくとも、口の中のものが徐々に固さを増し大きさを増してゆくのはありありとわかる。紫呉のものが口の中を満たし、喉の方までいっぱいになり、透は苦しげな声を漏らした。 両腕が使えないので、透は不安定な姿勢で懸命に舌を動かした。 紫呉は手を伸ばして、透の胸に触れる。指の先で、縛られて淫靡な形を強制させられている胸の、輪郭をそっと辿る。充血して固く尖った先端は殊更丁寧に、何度も何度も指先がなぞってゆく。柔らかく、触れるか触れないかの位置で繰り返される指先の接触に焦れたように、透は身体を前へと僅かに動かした。 それを待っていたように、紫呉は固くなった無念の先端を捻るように強く摘み、指の腹で転がした。 切なげな声と共に、嚥下し切れなかった唾液が透の唇の端から顎へと、そして首筋へと伝った。 透の唾液に浸された紫呉のものは、ぬらぬらと光りいやらしい音を立てて透の口内への出入りを繰り返した。 紫呉は透の胸を弄んでいた手を離し、透の小さな頭を両掌で包むように持った。 そして、自ら腰を動かして透の口の中へ出し入れを繰り返した。 苦しげな透の表情と、透の身体を拘束する朱色の縄とそれのつくりだす形は、実に官能を刺激する。 紫呉は容赦なく、腰を動かした。 透の口内は暖かく、唾液で充分に濡れている。柔らかい口内の粘膜は、しっかりと紫呉を包み込み、歯列の固い感触さえも少しの恐怖と、それを上回る興奮によって快感に代わった。ざらりとした舌の表面は、苦しげな透の最後の抵抗のように紫呉の侵入を阻止しようと動くが、それも紫呉への愛撫の一つになっているだけだった。 やがて、紫呉は激しい動きを少しおさめてより奥へと何度か突き入れてから、抜いた。 透の赤い唇から、飲み込みきれなかった体液が零れ顎へと伝った。 先ほどまでの唾液の跡を辿るように、白い、どろりとした体液は顎から首筋へと滑ってゆく。 「し、ぐれさ…ひど……」 酷いです…と言おうとした透は、少し咳き込んで苦しげに息をついた。 紫呉は、透の言葉は無視して胸の一方に手を伸ばし、もう一方は唇に含んだ。 縄で縛ら不自由な格好のまま座り込んでいた透は、紫呉に肩を押されて上体を倒し床へ横たわった。 音を立てて胸の突起を吸い上げる紫呉の手は、するすると下りて透のスカートの中へと侵入した。 うっすらと汗ばんだ内股を無理矢理に開かせて、下着の中へ指を滑り込ませる。 ぬるりと指先が、透の内側から漏れ出した体液に触れる。指は簡単に粘膜の中へ飲み込まれた。 「すごく濡れてる。口じゃなくてここに入れて欲しかった?」 紫呉が、透の胸の上でぽつりと呟くように言った。 挿入された指が粘膜の中で動くたび、ぐちゅ、と音を立てる。 しかし、激しい指の動きに追い詰められた透が声を上げると、紫呉はあっさりと指を引き抜いて身体を起こし、透の上半身を縛り上げている縄を解き始めた。 突然の行動に面食らった透が、驚いた顔をした。 そんな透にお構いなしに、紫呉は「取材はこの辺にしてお仕事しないとね!」と明るく言う。 元来それが目的であるのだから、当然といえば当然だが、透はきょとんとした表情で固まってしまった。 思考回路が追い付かないようだ。 紫呉は意味深げな笑みを見せて、透の耳元に唇を近づけた。 「今度、また縛ってあげるよ」 囁き声に、透は茹でたように赤くなった。
緊縛、羞恥プレイ、ソフトSM、強制フェラ…全てのツボを抑えた紫呉×透に震えが来ました。透が流されまくりで健気で可愛いったらvv紫呉さんのちょっと意地悪なトコもかっこいいですーーー!ハァハァ… 胸のトコだけ強調して責めるというのはいいですよねーv萌えまくりです。日菜さんのこのお話を読んで、改めてフルバ18禁の本を作る具体的な企画が頭の中で練り上げられた程です。 私が紫呉透を好きなのはどこか危険な匂いがするからなのですが、日菜さんはその願望を具現化してくださる稀有の存在なので大好きですv あんな絵の御礼に素晴らしいSSを下さって、本当に有難う御座いましたvvv |