胸部の、敏感な所を刺激されて、風見志郎は身を硬くした。
「…んっ」
 少し体を動かしたせいで、その身を預けているベッドが軋みをあげた。いつもと違う状況で聞くその音に、風見は少なからず戸惑いを感じる。
 風見の上に覆い被さり、彼の体に手を這わせている人物は、勿論女では無い。
 その人物は風見の首・鎖骨・胸をきつく吸い上げ、花弁のような後をつけた。更に胸の突起を舌で刺激し、手は風見自身へと―――
 ピタリ。
「…………」
「…………おい…」
 堪えきれなくなって、風見は不機嫌な声を上げた。
 風見の上で止まってしまった男は、その声にビクリと反応する。
 困惑気味な表情で風見を見下ろし、男は情けなさそうに口を開いた。
「…無理みたいだ…」
「だから最初に言っただろう?結城」
 恥かしさと情けなさからだろう、顔をほんのり上気させ、結城丈二は風見の上から体をどかした。それに合わせ、風見も上体を起こす。何とも言えない気まずい雰囲気が二人を包みこんだ。
 ベッドの端で申し訳なさそうに座っている結城に、風見は呆れたような顔を向けた。
「お前に出来るわけが無い」
 きっぱりと言い切る。
 少し傷つくかと思ったが、結城の様子は変わらなかった。
「やり方は知ってるから、出来ると思ったんだ…」
「知っているから出来るわけじゃない」
「それはそうだが、僕だって男だから…」
「そもそも、何で今日は『男役をやりたい』なんて言い出したんだ?」
 風見の質問に、結城は驚いて表情をした。
(何故驚く?)
 夜も更け、結城が自室に入ろうとした時、風見は彼を自分の部屋に引き込んだ。彼をベッドに押し倒した時、結城は少し頬を赤らめながら、おずおずといった感じで、
「あの、今日は君の方をやってみたいんだ…」
 と、言った。
 思いもよらぬ発言と、真剣な結城に押されるような形で、思わず承諾してしまったが、結城がそうしたい理由がさっぱり思いつかない。
 女役が嫌だったのだろうか?
 ずっと悩んでいたのだろうか?
 実は知らない間に彼を追い込んでいたのだろうか?
(驚くという事はやはり…)
 が、しかし、結城はあっけらかんとした感じで言う。
「それは、可愛かったからだ」
 一瞬思考が止まった。
 先程の台詞を反芻し、自分の中でよく噛み砕いてみる。考える事の出来る意味を色々考え、吟味した結果、風見は口を開いた。
「何が…?」
 結城は笑顔で答える。
「お前がだよ。風見」
 と。
「……………」 
 風見が怪訝な表情をしたのは仕方ない事だろう。
(可愛い?俺が?)
 格好良いと人に言われた事は幾度となくあるが、可愛いといわれた事は幼少の時以来無いといっていい。と言うか、あっても困る。この歳で。
「一体どこが可愛いって言うんだ?」
 当然、風見はそう聞いた。
 結城は首をかしげ、何やら考えはじめた。
「何だ?」
「どこがって聞かれると……」
 具体的な例えは出てこないらしい。
 風見は少しホッとした。
「結城。俺を可愛いと思うのは―――」
 お前の勘違いだと風見が言い終える前に、結城が「あっ!」と声をあげた。
「解った!」
「な…何が…」
「最中だ!」
「だから何がだ???」
 さっぱり訳が解らない風見に、結城は笑顔で答えた。
 いたく納得した様子で…。
「イく時の顔が、可愛いんだ」
 一瞬の沈黙。
「……………は?……」
「だから、イく時の顔がすごく可愛いんだよ。風見は」
(…何を言っているんだ…?)
 思いもよらぬ答えに、風見は鈍い頭痛を感じていた。
その痛みのせいで思考能力が低下したらしい。結城の発する言葉の意味が、いまいち良く解らない。
 そんな風見を完璧に置き去りにして、結城は明後日の方角を見ながら、一人話しを進める。
「可愛かったから、その顔をもっと見たいと思ったんだ。しかし、僕はいつも受身だからどうしても無理で…。それに、いつもしてもらってばかりだから、たまにはお返しをしなくてはと思って―――。…でも無理だったな。流石に情けない。僕だって男なのに出来ないなんて…」
 唐突に、結城は落ち込み始めた。どうやら自分で言っといて、男としてのプライドが傷ついたらしい。さっきまでの笑顔はどこへやら、結城は背中に哀愁を漂わせながら、ベッドの端で小さくなってしまった。
 しかしその代わり、先程まで思考能力が低下していた風見志郎が復活!
落ち込んでいる結城の肩に手を置き、軽く叩いてやる。
「…落ち込むなよ。誰にでも得意な事と不得意な事があるもんだ」
「しかしだな、不得意とか言う問題とは関係なく、これは―――」
「結城。別にいいじゃないか。お前が出来ない分俺が出来るんだから。それとも何か不都合でもあるのか?違うだろう?」
 結城は真剣な表情で風見を見た。
 はっきりとした口調で言う。
「風見にしてやれない」
 その気持ち事態は嬉しい。
 だが、風見からしてみれば、『結城丈二に抱かれている自分』というのはありえない事なのだ。
 風見は、結城が安心するように微笑を見せた。
「……それはな、別に良いんだ」
「良くないだろう?」
「良いんだよ。何故なら、俺はお前に抱かれたいわけじゃない、お前を抱きたいんだ。解るってくれ」
「……抱かれたいわけじゃない…」
 小さくそう呟くと、結城はそのまま黙り込み、動かなくなった。
 どうやら頭の中で色々と整理しているらしい。
(これで大丈夫だろう)
 風見は結城に気付かれないように、安堵の息を吐き出した。
(結城も時々訳の解らない事を考える。ま、ああ言っておけば取り敢えずは安心だな)
 しかし、そう上手くいくのなら苦労はしない。
 一件落着したのだから、立場を入れ替え続きをしようかと考えている風見の手を、いきなり結城が両手で掴んだ。
「何だ?結城?」
 手を掴まれるままに、風見は結城を見やった。
 結城は先程以上に真剣な表情で風見を凝視している。その瞳に、何か固い決心のようなものを見て取って、風見の背中を何かが急速に駆け上がった。
「…結城?」
「風見、僕を気遣う必要は無い!君には多大な迷惑をかけた事が有るんだ!これくらいの事はなんでも無い!だから任せてくれ!こんどこそ、最後までヤってみせる!」
 どこをどう勘違いしたのか…。
 結城はそのままの勢いで風見をベッドに押し倒した。
 流石に慌てふためく風見志郎。
「おい、結城!待て!俺の話しを―――」
 しかし、思い込んだ結城丈二の勢いは凄まじく、ちょっと風見が戸惑っている間に、彼自身を口の中に入れてしまった。
「…んっ…」
 何とも言えない快感が、腰を中心にして波紋のように広がっていく。
 経験が無いにしては、上手かった。
「ゆ…結城――――!!」
 風見志郎の喘ぎ声に似た叫び声は、本郷邸中に響き渡ったのだった…。
 合掌。

 

 

 終

 


 と、まぁ、風見受けでした。多分、風見受け小説は色々あれど(?)、結城×風見なんてないだろうなと思っています。だって、歴代ライダーの中で一番受けっぽいもん、結城さん。
 前回のキリリク小説といい、風見志郎、災難が続いております(笑)。
 頑張れ!V3!!負けるな!V3!!その内きっといい事があるゾ!!!

 

 

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