それは、落ち葉舞い散る秋の日の出来事。
「告白したらどうですか?」
「………は?…」
 突然の言葉に、2号ライダー・一文字隼人はどう返答したら良いものか迷った。
 七人ライダーが共に住む屋敷の台所で、一文字はコーヒーを飲んでいた。空いた方の手で新聞を持ち、あらゆる情報に目を通す。特にどうと言う事は無い日常の1コマ。朝の日課。
 そこへ現れ、一文字を絶句させたのは、Xライダー・神敬介だった。
 流し台にもたれかかっている一文字の傍により、もう一度問う。
「告白したらどうですか?」
 一文字はコーヒーを台の上に置き、神敬介に向き直った。敬介はいつになく真剣な表情をしている。
「………何を?…」
 敬介の意図が解らず、一文字は問い返した。
 敬介は苛立つ様子もなく、変わらぬ調子で説明する。
「何をって、本郷先輩に告白するんですよ」
「…何言ってるんだ、敬介」
 一文字は怪訝な面持ちで呟いた。
 1号ライダー・本郷猛は、仮面ライダー達が住む屋敷の持ち主であり、仮面ライダー達のリーダーである。一文字隼人とは、【ショッカー】に改造される前からの付き合いで、連携技&共通技も多い。
 一文字は敬介の瞳を覗き込んだ。彼が何を考えているのか読みとろうと試みる。
 そんな一文字の視線を真っ向から受け、敬介は更に説明を続けた。
「一文字さんの気持ちは皆知ってます。時々、その気持ちを持て余している事も知ってます。だから、告白したほうが良いと思って」
「……………」
 思わず後頭部に手をやる一文字。
(……そうか、バレバレだったのか…)
 少し情けない。
 別に隠していた訳ではないし、悪い事だとも思ってないが、どうにもバツが悪い。
 それにしても、傍で見ている仲間達は気付いているというのに―――、
(…なのに当の本人には気付かれない………嫌、気付いて―――…ないか?…)
 少し理不尽な気がする。が、仕方ないだろう。相手はあの本郷猛だ。
(世界最強の天然ボケとか言われてたな。誰とは言わんが)
 知能指数が600もあり、運動神経も抜群。それ故か、どうも一般常識からずれている所がある。善意で他人に迷惑をかけるわ、前触れもなしにどこかへ消えたり、現れたりするわ―――例をあげていたらきりが無い。一文字は長い付き合いだし、同型に改造されている故テレパシーも出来るからまだ良いが、後輩ライダー達は大変だ。
 そんな彼に友人として以上の好意を抱きだしたのは、いつの頃だったろう?
「…『告白したほうが良い』。本当にそう思うか?」
 一文字は静かに問う。
「はい」
 即答する敬介。
 一文字は軽く頷いた。
「……そうか。所で…」
 一文字の眼光が敬介の瞳を射る。
 思わず敬介はたじろいだ。
「誰に頼まれた?」
「…何の事ですか?」
「ま、良いけどな。だいたい想像はつく。とりあえず礼を言っとくよ」
 一文字はコーヒーを飲み乾すと、カップを流し台に置き敬介に背を向けた。台所から出て行きながら、新聞を振って見せる。
「…どうも」
 たった一人になった敬介は、小さくそう呟いた。


      ●    ●    ●



 一文字と本郷の付き合いは長い。
 一文字がまだロンドン美術大学写真学部に在籍していた頃から、彼はモトクロス選手である本郷猛を追って、世界中を飛び回っていた。どんな悪環境でも、夢中で、バイクを駆る本郷の姿をフィルター越しに追っていた。
 とあるレースから、二人の友人としての付き合いは始まり、次第に仲良くなっていった。
 本来なら、そのまま親交を深めていくだけであったろうが、それは悪組織【ショッカー】の手により、脆くも崩れ去った。
 本郷が【ショッカー】に改造されてしまったからだ。
 本郷の恩師=緑川弘博士の手引きにより、脳改造前に脱出できた本郷は、自ら『仮面ライダー』と名乗り、【ショッカー】の魔の手から世界を守る為、孤独な戦いをはじめた。
 その頃、一文字はそれを知らずにいた。
 しかし、そう遠くない日に彼はその事実を知る事となった。
 本郷猛=仮面ライダーを倒す目的で、今度は一文字が【ショッカー】の手により改造されてしまったからだ。
 なんとか本郷が一文字を助け出したが、彼の身体は既に本郷と同じく人間の物ではなかった。脳改造前に助け出された事だけが救いだった。
 本郷はその事に責任を感じ、一文字に頭を下げた。何とも言えない悲痛な思い…。しかし、一文字はそれを笑い飛ばすように「俺もお前と一緒に戦う」と言い切った。嘘の言葉では無い。心の底からの言葉だった。
 それから、二人は協力して【ショッカー】【デストロン】等の悪組織と戦い続けている。
(…そう思うと長いな…)
 シャッターを切りながら、一文字は心の中で呟いた。
 窓から指す太陽の光。それを浴び前を行く被写体をフィルター越しに追いながら、今朝、台所で神敬介から言われた言葉を思い出す。
(……告白かぁ。本郷のヤツ、時々もの凄いとらえ方するからなぁ。ちゃんと理解するかな?…)
 又、シャッターを切る。
 一文字はフィルター越しに見る被写体によった。
(となると、問題は台詞か…。色々ゴチャゴチャ付け足すより、ストレートな方が良いだろうか?嫌、ストレートすぎるのも―――)
「隼人」
「ん?」
 被写体に呼びかけられ、一文字はカメラから顔を上げた。
 不思議そうな表情でこちらを見る被写体=本郷猛。
「どうかしたのか?本郷」
「お前も入りたいのか?」
「…ん?」
 本郷が自分の肩越しを指差す。それに合わせ、一文字も彼の後方を見やった。と、そこには『御手洗』と書かれた文字とドアが………。
「あ、すまんすまん」
「入るのか?」
 一文字は苦笑した。片手を軽く振りながら訂正する。
「違う。こんな所までついて来て悪かったな」
「俺は別に構わんが」
「構えよ…」
 思わず半眼でうめく。
 こういう所が本郷らしい。
(そんな所も可愛いと思ってしまうのは、『末期』と言うヤツか?)
 一文字は本郷の肩を軽く叩き、写真を撮らせてくれた事に礼を言った。
「じゃ、俺はこれから出かけてくる。夕方までには帰るからな」
「?どこへ行くんだ、隼人?」
 一文字は悪戯っ子の笑みを浮かべると、本郷の肩あたりに軽く拳を叩き込んだ。反射的にそれを掌で受け止める本郷。不思議そうに一文字の様子を窺う。
 本郷が受け止めた拳を引くと、一文字はそのまま、人差し指を一本立てて見せた。
「秘密だ」
 と、一言。
「じゃ、行ってくる」
 狐につままれたような本郷を後に残し、一文字は本郷邸を出、愛車に跨った。


      ●    ●    ●



「…と、いう訳なんだが、何か良い案は無いか?」
「……いきなりそんな事を言われてもな…」
 どう答えたら良いものか困り、滝和也は自身の頬をかいた。
 自分と向かい合って座っている人物から視線をそらす。外はいい天気だ。こんな日は一日のんびりしていたい―――が、FBI特命捜査官として日本に来ている限り、どんなに平和そうであってもそれは出来ない。人々を恐怖のどん底に叩き落そうと目論んでいる秘密組織が多数存在しているのだから…。
 滝は、視線を前に座っている人物=一文字隼人に戻した。
 彼が滝を訪ねて来る事は別に珍しくない。
 滝と本郷と一文字の三人は親友だし戦友でもある。悪組織が企む悪事をいち早く察知する為、彼等は常日頃から互いに情報を交換しあっている。故に、全く珍しくないのだが……、
(こんな事を聞かれるとは思わなかった…)
 思わず渋い顔でうめく。
 滝が日本で住んでいるマンションのリビング―――部屋は少し殺風景に感じる程、シンプルで機能性を重視した家具を選んだ―――で、滝と一文字はソファーに座っている。
 テーブルの上に置いたカップ。それに入ったコーヒーを一口飲む。
 滝は思い切って口を開いた。
「…本気で本郷に告白する気か?」
 一文字は少し眉間に皺をよせた。
「ああ。本気だ」
「何でだよ?今のままじゃ何かいけないのか?」
「そうじゃない。けじめだ」
「…けじめ?」
 怪訝に思い問う。
 一文字は神妙に頷いた。
「ああ。自分自身にな。本郷とは長い付き合いだが、自分の気持ちを直接言う事は殆んどしなかった…」
「お前等の場合、言葉にしなくても理解してるだろ」
「……一度ちゃんと言葉にしようと思うんだ」
 ふと、一文字は窓の方を見た。
 彼の澄んだ瞳に秋の高い空が写る。
 一文字は窓の外を見たまま話を続けた。
「…『親しき仲にも礼儀あり』じゃないが、直接口で伝える事も大事だ。自分の考えを―――気持ちを伝える為にあるんだからな、言葉というものは。俺はアイツに感謝してる。それ以上に惚れてる。それをちゃんと本郷に伝えたいんだ」
 一文字の言葉に少々赤面する滝。
(どうしてこいつは恥かしい台詞を、こうもサラリと…)
 そんな滝の様子に気付いているのかいないのか、一文字は構わず話を続ける。
「だが、アイツは天然だからな。ちゃんと解ってくれるかどうか疑問なんだ」
「大丈夫だろ?【ショッカー】との戦闘時はいつも―――」
 滝の台詞を、一文字は顔を横に振る事で制した。
「戦闘ならな…。だが、事日常的になると駄目だ。一般常識は通じない。それは滝だって知ってるだろ?」
(…愛の告白は日常的なのか?…)
 顔が勝手に微妙な笑顔をつくる。しかし、本郷のことに関しては、
(確かにちょーっと、一般常識から離れた所にいるなぁ…)
 納得。
「そうだなぁ」
「だから、何か良い文句はないかと思って聞きに来たんだ。志郎達より本郷との付き合いは長いから、アイツの性格もよく分ってるだろうしな。―――で、何か良い案は無いか?」
 滝は腕を組んで思考をめぐらした。
 一文字が本郷に告白すること自体に反対は無い。
 けじめをつけたいという気持ちも、解らない訳ではない。
(…となると、ここは協力するべきだな…。…それにしも、まさか同じ日に同じ様な事を相談をされるとは思わなかった…)
 ただひたすら自分の返答を待っている一文字に視線を合わす。
 滝は簡潔に自分の意見を述べた。
「…やっぱりストレートに言った方が良くないか?」
「……そうか…」
 短く嘆息する一文字。
 一文字は俯いたまま何かを思案しているようだったが、外からスズメの鳴き声が聞えると、それが合図のようにふと顔を上げた。
 相変わらず神妙な表情。
「…滝が言った通りにしてみる。ちゃんとアイツに伝わらなかったら、その時どうするか考えるよ」
「そうだな、それが良いだろう」
「ああ。邪魔したな。そろそろ帰るよ」
「頑張れよ。当たって砕けろだ!」
 彼を元気付けるつもりで、滝はガッツポーズをつくって見せた。
「…応援の言葉と思って、ありがたく頂戴しとこう」
 一文字は立ち上がり、滝の部屋を後にした。

 

      ●    ●    ●



 誰もいない所に彼を呼び出すのは簡単だった。
 ただ散歩に誘えばよかった。
 彼は、
「こんな時間からか?」
 と、少し不思議がっていたが、
「夜になると昼間とは違った雰囲気になるからな。面白いぞ」
 と言うと、それもそうかと納得してくれた。
 誰も通らない夜の道。
 比較的近くにある原っぱに向かいながら、彼と様々な話をした。
「最近、【ショッカー】の連中も大人しいな、本郷。又何か大きな計画でも練ってなきゃ良いんだが…」
「そうだな。滝の方の情報網にも俺達の方にも、今の所何も引っかからないが、油断は出来ん」
「全くだ」
 原っぱに到着した。
 秋の虫の音が心地よく耳に響く。
 彼は先を行き、空を見上げた。
 空には星が瞬いている。
 地上の人工的な光に押されてか、肉眼で確認できる星の数は多くは無い。が、それでも藍色の空に輝く星々は美しく、幻想的で、一瞬自分を取り巻く全てを忘れる。
 否―――目の前にいる彼は別だ。
 彼は数m先で空を見上げている。ときどき感嘆の声を漏らしながら、こちらに話し掛けてくる。彼から1m離れた所で立ち止まり、彼の横顔を眺めた。
 彼をここに連れ出したには、理由がある。
 言いたい事が有ったからだが、本郷邸では言いにくいので、わざわざここまで来てもらった。彼は気付いていないだろうが……。
 彼の名を呼んでみる。
 彼は視線を空の星からこちらに移した。
 夜風が吹き、彼の髪を揺らす。
「話したい事があるんだが…」
 別にたいした話ではない。
 本郷邸で言いたくなかったのは、ただ彼一人に聞いて欲しかったからだ。正直な自分の気持ちを彼に伝えたかったからだった。
「何だ?」
 少し緊張した面持ちで彼は聞いてきた。
 滝がアドバイスしてくれた通りに、気持ちをストレートに言葉にする。
「ん…。あのな―――ありがとう」
 彼の時間が、少し止まったようだ。
「…………えっ…」
 あまり見る機会のない呆然とした表情で、そう声が漏れるのが聞こえた。きっと、何に対しての感謝の言葉か分らなかったのだろう。
 彼に理解してもらう為に、説明をする。
 何故か口が上手く回らず、四苦八苦するはめになった。
「長い間言おうと思っていたんだが、なかなか言えなくてな。その、一緒に戦うと言ってくれた事とか、俺の無理な頼みを聞いてくれた事とか色々な。…で、ま、今日ならと思って…」
「……何故だ?…」
「今日はお前の誕生日だろう?隼人」
 十月十日。
 忘れる訳がない。
 この世でたった一人の相棒の誕生日を……。


      ●    ●    ●



 少し肌寒い風が、木の葉を舞い散らす。
 町の光と星の光を背中に背負い、本郷猛が立っている。
 その彼を、一文字隼人は呆然と見つめていた。
(…今何て言った?…)
 記憶を手繰る。
 夕食後。本郷が散歩に誘ってきた。
「こんな時間からか?」
 と思ったが、告白するのに丁度いい機会だと思い、出かける事にした。
 町外れの原っぱまで本郷と歩いて来た。空に星が輝き、虫の音も耳に心地よく響く。
 どうやって本郷に自分の気持ちを伝えようかと機会を窺っていると、彼が名を呼んだ。振り向くと、神妙な顔をした本郷がいた。
 そして―――礼を言われた。
「はぁ、先を越された…」
 一文字はそう呟くと、腰に手をあて、苦笑に似た微笑を本郷に見せた。
「何が『先を越された』なんだ?」
 言葉の意味が解らなかったのだろう。本郷が問う。
「俺も言おうと思ってたんだ。長い間。お前に『ありがとう』って、それから…」
 流石に緊張する。
 言葉の意味をちゃんと理解してくれるだろうか?
 一文字は深く息を吸い込んだ。
 真正面から本郷の瞳を見つめ、はっきりとした声で、言葉で言う。
「お前が好きだ」
 今度は本郷が呆然とする番。
「好きだよ」
 一文字は念を押すように繰り返した。
 少し本郷の反応が恐くて、知らず知らず視線を下に向ける。
(思った以上に緊張する…)
「むっ…そうか…」
 珍しく歯切れの悪い様子で、本郷はそう呟いた。
 どうやら突然の事に戸惑っているらしい。
(…仕様がないか。だが、本郷が戸惑うなんて…珍しい)
 一文字は本郷に一歩近付き、更に念を押した。
「本当だからな。忘れるなよ」
「勿論だ」
 即答。
「………………」
 本郷の言葉に、一文字は又呆然となった。まさか、そう答えてくれるとは…。
 途端、一文字の表情が一気に変わる。
 ―――穏やかな笑顔。
 純粋に嬉しい。自分の気持ちを迷惑がるとは思っていなかったが、そこまではっきりと受け取ってくれるとも思わなかった。
 本郷は照れ笑いをしてこちらを見ている。その表情に―――瞳に嘘はない。
「…そうか、それは嬉しいな」
 ゆっくりとした調子で一文字は呟いた。
「嬉しいか?」
「ああ」
 一文字は本郷に歩み寄り、その肩に手を置いた。
「…それにしてもなんだな、はっきりと好意を表されると、こう、照れるものがあるな…」
 照れた笑顔でそう告げる本郷。
 一文字は今更ながら恥かしくなり、さっと頬を赤らめた。しかし、すぐに不敵な笑顔を本郷に向ける。
「当たり前だ。言う方がもっと照れるんだぞ」
「そうか。ん…では―――」
「?」
「俺もお前が好きだぞ」
「………………お…お前なぁ…」
 思わず赤面する一文字。
 予想だにしない事態に我にも無く狼狽してしまう。どうして本郷は、こうも人の度肝を抜くと言うか、人と感覚が違うと言うか―――驚く事ばかりするのだろう。
「何だ?」
 そのくせ、当人はそんな事を全く気にしない。否、気付いていない。
 赤面し、ただ当惑気味に自分を見つめている一文字を不思議そうな顔で覗き込んでいる。
「……〜何でもないよ!」
 一文字は本郷の肩を乱暴に突き放すと、そのまま本郷邸に向かって歩き出した。
「全くお前ってヤツは、悪気が無いだけ性質悪い」
「何のことだ?」
 気配で、本郷も自分の後を追い、歩き出した事を知る。
 原っぱの端まできた時、一文字は立ち止まり本郷を振り返った。
 微笑を浮かべたまま、名を呼ぶ。
「本郷」
「なんだ?」
 一文字から2m程離れた所に、彼と同じように立ち止まる本郷。
 一呼吸置いてから、一文字は言った。
「ありがとな―――嬉しかった」
 本郷は驚いたような表情をしたが、それは一瞬の事で、すぐ微笑に戻ると、特に何も言わぬまま一文字の脇を抜け道路に出た。一文字を振り返り、彼は言う。力強い笑顔で…。
「さ、帰ろう。俺達の家に」


      ●    ●    ●



「……上手くいったようだ」
「そうか」
 本郷邸のとある一室。
 その部屋の主の報告に、その部屋にいるもう一人の男は安堵の息をもらした。
「これでもう少しマシになってくれるといいが…」
 不安げな様子で部屋の主が呟いた。自作の盗聴器に接続されているヘッドホンを外すと、机の上に置く。
 部屋の主の言葉に、男は渋い表情をした。
「そう願うのみだ」
「しかし、一文字さんにだけ告白を勧めても上手く行くかどうかわからなかったから、本郷さんにも自分の気持ちを一度言ってみたらと勧めたが…。まさか二人とも滝さんへ相談しに行くとは思わなかったぁ。風見」
 部屋の主=結城丈二は振り返り、もう一人の男=風見志郎を見やった。風見は結城の言葉にゆっくりと頷く。
「性格は違うのに、そういうところは似ている。…親友……相棒は、案外そういうモノなのかもしれないな」
「そうかもな」
 今回、『一文字さんを本郷先輩に告白させて、現状打破!』計画を立て、実行に移したのは他ならぬ風見&結城の二人だった。神敬介は、風見志郎と結城丈二に頼まれて、一文字隼人へ告白を勧めに現れたのだ。同じような事を、結城が本郷に言った。
「それはそうと―――」
 風見は机の上に置いてある盗聴器を目で示した。
「気付かれて無いだろうな?」
「大丈夫だと思う。本郷さんの靴に仕掛けたし、特殊な電波を使っているから…」
「なら良い」
 風見は窓の近くによると、カーテンの陰に隠れながら外の様子を窺った。数十m離れた所に、街灯に照らされた二つの人影を発見する。ゆっくりとした足取りでこちらへ帰って来るその人影は、紛れもなく彼の先輩達のものだった。
(……本当に上手くいったんだろうか……)
 風見は、腹の底から計画成功を喜べなかった。
 これからの二人(正確には一文字のみ)が変わらなければ、『一文字さんを本郷先輩に告白させて、現状打破!』計画が、本当の意味で成功したとは言えないからだ。
(…………)
 仲良く肩を並べている影二つ。
 一瞬嫌な予感がし、風見は身を震わした。
「どうかしたか?」
 その事に気付き問うてきた結城に、風見はただ、
「嫌、何でもない」
 と答える事しか出来なかった。




 一文字×本郷!今のところ他の小説は全部一文字受けなので、ちょっと浮いてる?この小説?でも、書きたかったのです。書くって宣言したし。人様の掲示板で。嫌、半年間探しても、HPにもイベント会場にも第一期ライダーでカップリングやってる人いなかったもんだから、一文字×滝とか一文字×本郷見つけた時は嬉しくて嬉しくて!
 でも、この小説ってどっちが攻めかよくわかんないなぁ。

 そして、ありがたすぎる物を頂きました♪→■□■

 

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