「全く、お前は本当に周りが見えてないんだな…」
 少年という時代をやっと抜け出たばかりだろう。まだ青年と呼ぶには早そうな―――だが、そう呼ぶ事にあまり抵抗のないその男は、小さくそう呟くと、目の前で笑っている相手に手を伸ばした。
 彼の声は、小さすぎた為にかすれてしまい、誰の耳にも届きはしないだろう。が。元々、誰かに聞かせようと思って口に出した言葉ではないので、別に構わなかった。それにもとより、青年のいる部屋には彼以外誰もいない…。
「なぁ…お前は怒ってたけど……なら、俺が怒ったって文句言うなよ…」
 青年がいる部屋は、特にどうと言う事もない―――殺風景な部屋だった。二段ベットに机が二つ。勿論椅子もふたつ。置いてある家具はそれがほとんどで、どれもこれも中古で買ってきたような、一目で金がかかってない事が推測できる代物だった。それでも、長年使っていればそれなりの愛着も生まれるもので。
 青年は自分の物では無い机を視界の端に入れた。
「…ほとんど置いていきやがって…」
 その向こうの開いた窓から風が舞い込み、青年の赤い髪をふわっ…と揺らした。少し長く伸ばした髪―――それでも肩にはついていないので、規則違反には問われないが―――のせいで隠れていたそばかすが、髪の間から見え隠れする。
「もしかしてワザとか?…だったら酷いヤツだよ…本当…」
 青年の伸ばした手の先が相手に届き、そして、止まる。
 ―――コツン…と、言う音を立てて…。
 青年の机の上には色々な物が乗っかっていた。図書館から借りてきた怪しげな歴史書。友人から貰った去年の誕生日プレゼントの熊出没注意ペン立て。無理矢理押し付けられた面倒な報告書。そして―――写真が一枚入った写真立て。
 青年が好きで飾ったわけではない。ただ、心底恐れている相手から壮絶な笑みを浮かべられつつ「飾ってね♪」と頼まれたから飾ったに過ぎない。写真立てだって、数年前に誰かから貰って放って置いた物を、机の引き出しの奥から引っ張り出してきただけ。だから特に意味のある写真などではない―――ほんの数日前までは…。
「それでも…」
 写真の中には八人の男女が映っていた。全員笑顔という訳ではないが、まぁ、大体はカメラに向かって笑顔を向けている―――記念写真―――そんな言葉が似合いそうな写真。青年も左端で片目を瞑って微笑を見せている。そして隣―――必然的に写真の中央になるが―――に、青年より若干幼さの残る―――こちらは青年と呼ぶのに抵抗がある―――少年が満面の笑みで二人の姉に後ろから支えられていた。短髪の黒髪。どうという事のない容姿。だが。
「それでも………俺はお前を……」
 また、窓から入ってきた風が青年の髪を揺らした。赤毛は揺れ、そばかすが見え隠れする。そして、そばかすと一緒に―――
「……行け…ば良いさ…」
 青年の声は震えているようだった。声だけでなく、肩さえも。気をつけなければ見落としそうなほど細かく、しかし確実に。
 青年は指を相手―――写真の中央に写る少年から離した。
 不敵に微笑みつつ、写真の中の少年を見下ろす。
「…どこへ行こうとも追いかけてやる。お前が彼女の為にそうするように」
 青年は写真立てを持ち上げると、目の高さまで持ち上げた。そして一言小さく呟く。誰にも聞こえない―――嫌、写真に写っている少年になら聞こえただろう。
「この写真はいらない…」
 青年が作り出した青白い炎―――自然界にない、魔術によって出現した炎によって焼かれているのだから。人間種族の魔術士の使う『音声魔術』によって。
 写真立てごと音を立てて燃え逝く写真を見ながら、青年は言葉を続けた。
「もう、この頃に戻る事はない。これは君達が選んだんだ。キリランシェロ…アザリー…」
 青年は踵を返し、ドアへと近付いた。取っ手を握り、力を少し込めてドアを開く。一歩踏み出せば、そこはもう廊下だった。彼の後方では今だ写真が燃えている。だが、それももう直ぐ終るだろう。
 青年は振り返る事なくドアを閉め、少し、寄りかかった。
「…さよなら…僕…」
 青年の言葉は、廊下に悲しく響き渡った―――。

 

 

 


 嫌、『オーフェン』サイト巡りしてたらオー×クリとかオー×コギだとかのノーマルカップリングしかなかったんで、「腐女子としてはやっぱ、普っ通の(?)カップリングが読みたいわよねー!」って事で、とりあえずハーティア→オーフェンなんて書いてみました。ま、ほら、最初だから〜、いきなり酷いのは書けないじゃな〜い?(大嘘)
 ま、それはそれとして、オーフェンは受けでしょう(いきなりかい)。攻めになるのはせいぜい上の二人(クリーオウ・コギー)くらい。アザリーやティッシが相手になると受けに早変わり!絶対姉さん達の方が手が早いに違いない!そして相手が男になるとぉ………個人的にはハーティア希望v好きなキャラだし、彼なら頑張ってなんとかしてくれそうな気がする。その次がチャイルドマン先生。力ずくなら彼しかいない(爆)。あ、でも殺人人形とかいう手も…(戻って来い!)。

 

 

 

 

 

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