正月そうそう食事当番が当たっている仮面ライダーX・神敬介は(ジャイケンで一文字に負けた)、キッチンで昨日一文字と共に作ったおせち料理を重箱に詰めなおしていた。
「もうこんな時間か…」
ほっと、一息ついた時、玄関の方でなにやら物音が聞こえ―――
「あ、来た来た」
ある程度見当がついている敬介は、少し汚れた手をタオルで拭くと、エプロンを付けたまま玄関へと急いだ。
「今年もたくさん来たな」
そんな些細な事が嬉しくて、敬介は輪ゴムでとめられている年賀状の束を取り出すと、鼻歌を歌いながらキッチンへと引き返した。
「これは本郷さん―――大学の研究仲間かな?。こっちはアマゾンに―――まさひこ君からだ、可愛いイラストだなぁ。これは本郷さんと一文字さん宛―――滝さんからだ。帰国する前に出してたんだ。今頃はニューヨークで新年を迎えてるのかな?―――あ、おやっさんからだ。元気にしてるかな…」
明日にでも皆で顔を見せに行こうかな―――なんて、ほのぼの考えながら、次の年賀状を手に取る。
「…………アポロガイストォ???」
普通一般で売られている年賀状の隅に、新年早々見たくない名前を発見し、敬介は思わず眉間に皺をよせた。
『謹賀新年
しばらく文を凝視した後、敬介はとりあえず首をかしげた。
「………………何考えてるんだ?」
もともと何を考えているのか解らない時はあったが、普通、一般常識として敵対する人間に年賀状を書く奴がいるだろうか? 否、いない。
「する必要も意味もないだろうに、一体何故こんなことを…?」
だが、しかし―――
「……………」
【GOD】内にあるであろう秘密警察第一室長室の机の上で、部下に買ってきさせたのだろう市販の年賀状を前に、筆をとって構えているアポロガイストの姿を想像してみると、いつも真っ白なスーツを着、自分と対峙してこちらに悠然と視線を送っているアポロガイストとのギャップが激しくて、思わず敬介は吹き出してしまった。
「正月くらい羽織袴を着てたりして…」
似合わない―――と、頭の中で羽織袴を着たアポロガイストを想像し、敬介は笑った。
「俺も年賀状送るべきなのかな?」
自分の山の上にポン…と、アポロガイストからの年賀状を置きながら、敬介は彼宛の年賀状に書く文面を考え始めた。
「その場面を見られないのが残念だけど…」
自分が穏やかな笑みを浮かべている理由なんて知らないまま、敬介は作業の続きをはじめたのだった。
終 |
毎度毎度一向に気持ちが敬介に届かない(自業自得とも言うが)アポ様の為に、
ちょこっと“→”から“×”に近付けてみました(ほんの気持ち程度)。
それでも個人的好みにより、アポ様には今年も片想いでいてもらいます。
だってその方が面白いんだもんvvv(酷)