「風見、年越し蕎麦ができたらしい―――」
―――からキッチンに来てくれ、と言おうとして、結城丈二はリビングの入り口で立ち止まった。
(風見がこんな所で寝てるなんて珍しいな)
きっと年末の準備で疲れたんだな、大活躍だったから―――と、起こすのが忍びなくなり、結城は風見を起こさず、キッチンに集まって自分達の到着を待っている同居人達の元へ向かおうと踵を返した。
「……ちょっとだけ…」
ふと、普段なら至近距離で見る事のない風見の顔が見たくなって、そっと足音を忍ばせて風見に近寄った。
「睫毛長いな…。目は切れ長だし、鼻もスッと通ってる…。眉も太くて男らしいし…」
風見はやっぱり美人なんだな―――と、改めて感心していると、頬にうっすらとした消えかけの傷痕を見つけ、結城は一瞬ハッと息を呑んだ。
(この傷は―――)
脳裏をよぎるのは昼間の出来事。
『風見!』
その時、結城を庇った風見が負った傷―――それが消えかけの頬の傷だった。
(…今はもう消えて見えなくなった傷を、君はたくさん負ってたよね…)
その大半が結城を守る為に負った傷。
(お礼を言おうとしても、僕が大丈夫ならそれでいいとか言って、言わせてくれなかった…)
でも、今なら―――
「いつもいつも守ってくれてありがとう」
一年分のお礼を言っても良いよね…?
「僕も頑張って強くなるから―――」
それから、密かな誓いも…。
「来年は僕に君を守らせて欲しい」
そう呟くと同時に、結城は風見の額に誓いのキスをした。
◆◇◆◇◆◇◆
パタパタというスリッパの音が聞こえなくなったのを確認してから、
「ふぅ…。まいったな…」
風見志郎は瞼を押し上げ嘆息した。
(…ちょっと疲れたからうたた寝をしたいた…それだけなんだが、何故か気付いたら目の前に結城がいて―――)
驚いて、何故かそのまま寝たフリをしてしまった。
(あんな事を言われるなて…)
『僕に君を守らせて欲しい』
青天の霹靂。
(だが…)
風見はじわじわと込み上げてくる幸せに、思わず頬を緩ませた。
終 |
基本的戦闘能力は低いですが、根本的に男前な性格の結城さん。
きっと、皆の足手まといになっている事を―――特に風見志郎に申し訳なく思っている事でしょう(多分!)。
それで特殊コマンド(違)を開発しているのでしょうが、それを大っぴらには言えないけど、
それでも風見には誓いたかった…と!!
そんな感じでとりあえず甘々ですvvv