『庭』


「ほ〜んご〜う!!!」
「どうしたんだ、滝。その服は。草だらけじゃないか」
「・・・・・・お前な、一体どれだけ庭の手入れしていないんだ・・・。
一体、どうしたら人のいる庭に、引っ付き草(=オナモミ)なんか生えて来るんだよ」
「それよりも、その服、さっさと洗った方が良いぞ?
草の汁は染みになるからな」
「・・・・・・・」
「どうしたんだ?滝・・・」
「・・・なんでもねぇ・・・!!」
(見事にすれ違ってるなぁ・・・)
半ばやけのように上着を脱ぎ捨てた滝を見て、端の方で傍観していた一文字は、心の中で手を合わせた。

「大体隼人!お前もちゃんと庭の手入れぐらいしろ。
俺はお前ならやると思ってだな・・・」
「・・・は?」
さっきまで本郷とすれ違いまくりの口喧嘩をしていた滝が、いきなり一文字に攻撃目標を変えてきた。どうやら、本郷との会話に諦めをつけたらしい。
「や、ちょっと待てよ滝。どうして俺が・・・」
「居候ならそれぐらいしろ」
遠まわしに嫌だと言おうとしたが、きっぱりと痛いところをつかれてしまい、反論の言葉が出てこない。
「全く・・・。確かに庭が広いのは認めるが、それにしたって放置の限界ぐらいあるだろう?それに、俺一人でもできたことだ、お前ら二人いるんだから簡単だろう?」
「そういうものは才能だろう?」
「よく言うぜIQ600が。お前の方が上手いじゃないか」
「そうか?」
「そうかってな・・・お前・・・」
怒涛の会話に飲まれ、一瞬聞き逃し損ねたが、今一瞬、確かに恐ろしい言葉を聞いたような気がして一文字は心の中で首をかしげた。
それを確認する為に、恐る恐る会話に混ざってみる。
「滝。一人でできた・・・って、お前、一人であの庭を整備していたのか?」
「・・・あぁ?」
すぐに会話が中断され、不思議そうな目が向けられる。
「何だ隼人、聞いていなかったのか?」
「と言うか本郷、普通は言う事じゃないぞ」
呆れ顔で滝が溜息をつく。しみじみとした表情を作った彼が、軽く頷いた。
「お前が来る前・・・大体3年ぐらい前までは、な・・・」
大変だったんだぞ?と滝の台詞。家一軒分ありそうな庭の整備なんだから、当たり前と言えば当たり前だが。
「本郷はなんもしねぇし・・・お前ならやるかと思っていたんだが・・・」
恨みの篭っていそうな視線で見られ、一文字が一瞬ひるむ。
「まぁ良いじゃないか、滝。
隼人に庭の整備が出来るとは思えないしな」
「確かにそうかも知れねぇが、そういう問題じゃねぇ・・・・」
「・・・と言うか、その言葉は失礼だぞ、二人とも・・・」

結局、来訪の目的がわからないまま、滝は去っていってしまった。
後に残った二人は、何をするでもなくソファに座っている。
「なぁ、猛・・・」
「んん?」
「・・・どうして庭の整備とかしないんだ?」
「放置しておけば、そのうちまた滝が整備しに来るだろうからな・・・」
「・・・なるほど・・・・・・」
一文字は、恐らく明日も怒鳴り込みに来るであろう滝の苦労を思って溜息をついた。
今日も、ライダータウンの日常は、どうしようもないぐらい平和に過ぎている。

 

 


 神恵さまより頂きました。「本郷&一文字&滝でライダーマンタウン」小説です。私はどうしても一文字さんをリクエストしてしまうらしいです。
 滝さんが良い感じで降りまわされております。しかし、滝さんは調和とバランスを保つ人なので、そういう事から遠ざかりがちな改造人間と一緒にいると、どうしてもそっち方面をカバーするハメになるのです。滝さんの使命と言って良いかもしれません(笑)

 

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