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blue memo




 月の眠り <4-2>
 

一歩すすむごとに雨脚はひどくなっていって、快斗の靴をじわじわと濡らしていく。
それはまるで、ワケのわからないものに浸透されていっている今の心境のようで、気分はさらに沈んでしまう。
一人きりになると、顕著なまでに襲ってくる得体の知れない不安定さ。やはり多少のことに目を瞑っても紅子と一緒にいればよかったかとさえ考えてしまって、快斗は頭を振った。
(いつまでもこれではダメだ…)
紅子の存在を拠り所にしているような現状は決して望ましいものではない。何より、他人に頼って生きていかなければならないほど弱くはない。
父を亡くした時に母を守ると決めてから、誰の手を借りることもよしとしてこなかったくらいだ。
快斗は大きく息を吸い込むと、真っ直ぐに前を見据えた。
(何にしても…なにかあるはず、だよな)
こうまで不安定になるからには何かしらの要因があって然るべきだが、心当たりはまるで思い当たらない。まさか思春期特有の情緒不安なんてことはあり得る筈もなく、とにかく何でもいいから引っかかることがないか思い返してみる。
「そういえば…母さんが…」
二日前に、一週間早い誕生日祝いをしてくれた母が言った言葉が思い出される。誕生日だから次第に憂鬱になっていっているだろうと云われて首を捻ったが、他に当てがない現状では考えてみる余地はあるだろう。
「誕生日、ねぇ…」
とりたてて不安定さを生むような特別なことが、誕生日にあった記憶はない。
世話焼きの幼馴染と賑やかな友人たちが誕生日にかこつけて騒ぐ、それは毎年の恒例になっていて。母の言う去年だって――。
「…去年…あ、れ?」
思い出そうとするが、何も脳裏には浮かんでこない。
いつものように幼馴染と友人たちと一緒になって騒いだはずの記憶はどこにもなく、快斗の足は自然と止まる。
「なんで…思い出せないんだ…?」
その前の年も、さらにその前の年のこともきちんと思い出せるのに。たった一年前の出来事が何も思い起こせない。
「ウソ…だろ。マジかよ…」
これでは母の言った通りのようで、頭を抱えたくなる。
ほんわかとしているようで母親独特の鋭さをもった人だから、全てではなくとも何分の一かの真実を当てていたのだろうか。
母の言う通り、去年の誕生日にあった何かが、今年の誕生日を目前にして鬱屈した感情を引き起こしている――きっとそれは快斗が記憶に止めておきたくなかった程のことで……。
そこまで考えて、またも頭を振った。
どんなに辛いことがあっても、そこから逃げ出すなんて。そんなのは自分ではない。そんな自身を快斗は認めたくはない。
「冗談じゃない…」
考えたこと全てを吐き出すようにため息をつくと、再び歩みを始める。
行き先が見えない心を現しているように、雨で煙った視界。
反発を覚えてしっかりと見据えようと目を眇めた快斗は、前方に雨宿りをする人影に気付いた。

2005/07/17 (日)




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