あたたかな陽光と小鳥のさえずり。
清清しい朝の空気がすうっと体の奥に入り込んできて、新一の意識はゆっくりと覚醒へとむかう。

「…んー？」

心地のよいぬくもりに包まれているのに思わず頬をすり寄せる。やさしい気配はよく知ったもので、目が覚めるのがもったいなく感じてしまう。

「…そっか…昨日は…」

怪盗の予告日だった。だから、こんなに寄り添って眠っているのだと思い出す。
犯罪という暗闇に身を投じなければならない恋人は、仕事を終えた後は必ず新一の元へと帰ってくる。それは無事に済んだことを逸早く知りたがった新一の願いからだったが、今では疲れた心身を癒してもらうためという、快斗の望みに摩り替わっていた。
しかも仕事に精神を集中するためとか言って、最近は数日前から泊まりに来てさえいる。それもこれも、組織を壊滅させたことで新一の元から飛び立ち、帰ってくることに何の躊躇いもなくなった快斗の気持ちの変化による。
まだまだ闇の中から抜け出すことができないけれど、以前のように危機感とか切迫感というものを新一も感じなくなった。
こうして朝がとても穏やかだと思えるのも、つい最近。もしかしたらもうこんな風に朝を迎えられないかもしれないと、穏やかであればあるほど感じていたこともあったから。

「…もう…ちょっと寝よ…」

安らかな寝息をたてている快斗を起こさないように、新一はそっとその広い胸に体を寄せた。