一緒に寝よう
ふと、いつも横にある気配を感じられなくて、新一は文面から顔を上げた。
「――――快斗?」
呟きは、受け取るものなく、ただ壁に溶けて消えていく。
そういえば、確か庭で動物を使ったマジックの練習をするって言ってたっけ。居場所さえ分かれば問題ないのだが、何となく感じる寂しさをごまかすことができず。本を閉じて、新一は外に出た。
太陽の眩しさに眉をしかめながら、芝の上をさくさくと歩く。快斗のお気に入りの場所は、少し離れたところにあるポプラの木の下だ。そこからは、リビングの中だけでなく建物全体を眺めることができるのだと、なぜか誇らしそうに言っていたと思う。
少し先にあるポプラに、確かにいた。木陰に守られ、鳩やウサギ、ネズミ達に囲まれながら。彼は、あどけない寝顔を浮かべていた。
動物達も、どうやら共に眠っているらしい。主の気配の中にあるためか、自分が近づいても起きる様子はない。そのまま、音を立てずに傍に行き、しゃがみ込む。手を伸ばして髪に触れ、それから頬に当てると、彼はうっすらと紫紺を覗かせ。
「………ん、いち?」
ふわっ、と猫のように目を細めて。
「一緒に、寝よう―――?」
差し出された腕に抵抗なく収まると、快斗はまだ夢現にあったのか、すぐにも穏やかな寝息を立てた。動物達も、まだ目覚めない。
小さく笑う。彼のまとう優しい風に包まれれば、どんな場所でも眠りに落ちてしまうのは、自分が1番知っている。彼の友人達に負けないように身を寄せながら、新一もまた、彼のいざなう夢の世界に歩んでいった。
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