「あら?おはよう、2人共」
「おはよう、灰原」
「おはよう、哀ちゃん」
哀は少年探偵団の3人と登校を共にする約束をしていた為、家の前に出たのだが、丁度工藤邸から出てきた2人に会った。
「こんな時間に2人が起きているなんて珍しいわね」
「・・・」
「あはは・・・。今日は2時間目から授業があるからね」
哀の揶揄に頬を染める新一。
そんな新一を庇う様に答える快斗。
それを見て、呆れた様にため息をつく哀。
「朝から本当に暑いわね」
The Key TO My Room
「うわ〜〜〜〜」
「どうしたの?歩美ちゃん」
「新一お兄ちゃんがすっごくキラキラしてる〜」
そう言っている歩美は、頬を染めて嬉しそうにしていた。
先刻、他愛もない事を二言三言話した後、少年探偵団の3人がやって来たのだ。
そして、新一とその隣に居た男を見た後の反応である。
「ええ、輝いているわね」
この数ヶ月の新一の様子を知っている者にしてみれば、今の新一は喜ばしい事この上ない。
元々、新一も他人には自分の心境など知られたくないばっかりに、哀以外に相談などした事がなかったのだが、少年探偵団にはそこまで警戒をしていなかったと言う事もあり、少年探偵団の面々は哀と共に新一が辛そうにしていた事を知っていたのだ。
心配されていた事を知っている哀は、ニッコリと笑ってそれを肯定した。
組織を潰してから、哀もまた自然に笑える様になってきたのだ。
「・・・隣に居た人って新一お兄さんの恋人ですか?」
光彦は、何のことはなしに言った。
それに瞠目したのは哀。
一応、新一も男なのだぞ?と。
哀が何も言えずに居ると隣で歩美もまた騒ぎ出した。
「だとしたら、2人共お似合いだよね。隣に居たお兄さんも凄く格好いいし、2人共幸せそうだったし」
キャアキャア言っている。
「あーいうのって、ビナンビジョのカップルって言うんだよな?」
それは男と女を指す言葉なのだが、まああながち間違っているとも言えない例えである。
3人の言い分に哀は声を立てて笑った。
子供達は良い。
常識に囚われず、真実を見ることが出来るから。
「ええ、工藤君と恋人同士なのよ、あの人」
半年。
ずっと恋煩いで苦しんでいた、工藤君。
苦しんで苦しんで、ヤツレて。
それを他人には見せまいと気丈に振舞うから、見ているコッチが辛くなる位だった。
けれど、2日前に彼・・・黒羽快斗を本当に幸せそうに紹介してくれた。
その時の笑顔は本当に綺麗だった。
花が綻ぶ様に可憐に笑う工藤君。
本当に嬉しかった。
だけど、黒羽快斗が工藤君を苦しめていたのは事実だから、最初は罰を与えようと思っていた。
だって、あんなに工藤君を苦しめたのだから。
でも、嬉しそうに笑っている工藤君の隣で、黒羽快斗もまた幸せそうに笑っていたから、今回の事は不問にしてあげた。
工藤君を見て、んなにも幸せそうに笑えるのなら、詳細は知らないが彼もまた苦しんでいた事は明白だからだ。
勿論、次はない事は言ってあるが。
私の幸せは工藤君の幸せ。
もしも、黒羽快斗が工藤君を苦しめると言うのなら私は許さない。
その代わり、工藤君の幸せの為だったら、味方になってあげるわ・・・
「いや〜俺も心強い味方を得られたよな〜」
「灰原の事か?」
「そうだよ」
「・・・ふ〜ん」
あくまでも軽く答える快斗に、新一は嫉妬していた。
まあ、新一自身はその事をまだ自覚はしてないだろうが。
唇を軽く前に突き出してちょっと不貞腐れている様にしている新一は何だか子供っぽくて、それが無性に可愛くてそれはきっとコナンの名残だろうとか快斗は考えていた。
けれど、今はそんなことより、新一の機嫌を直す方が先決である。
せっかく一緒に居られる様になったと言うのに、つまらない事で仲違いなどしたくはないのだ。
「俺達は新一を守る為の同盟だよ。目的が一緒だから手を組んだだけ」
「守るって・・・」
「新一は俺と一緒に居られると幸せでしょ?」
上手く状況を整理出来ていない新一に、畳み込むように言う快斗。
おかげで、理解するのに少々時間をかけてしまった。
元々、恋愛音痴で、しかも最上級の恋愛音痴と言われる新一である。
普段は鋭い思考も、自分絡みの恋愛ごととなると途端にその思考も落ちてしまう。
・・・
数秒経つか経たないかした後、新一は口をパクパクとさせて快斗を指差した。
『何言ってるんだ、お前』
と言ってるのだろうが、本人驚きすぎて何も言えずにいる。
だが、快斗の変わらない笑みに、新一は頬を染めて小さく頷いた。
少し前、まだコナンだった頃にKIDとして会っていた頃に、こんな風に言われていたら「ふざけるな!」と蹴り飛ばしていただろう。
けれど、本当の事を言わずに居た為に、半年も顔を会わせる事が出来なくて、辛い思いをしたのだ。
だから、新一は出来るだけ素直にきちんと思いは伝えなくてはならないのだと学んだ。
否定しなくてはならない場面ではきちんと否定し、余計な誤解は生まない。
肯定しなくてはならない場面ではきちんと肯定し、自分の思いを的確に伝える事を。
それは例え恥ずかしくてもだ。
どんなに恥ずかしくても、快斗が離れていってしまう事とは比べられない。
離れられてしまう位なら素直に反応を返す方がずっと良い。
恥ずかしそうに小さく頷いてくれた新一に、快斗は更なる愛しさが込み上がってくるのを感じていた。
けれどここで、抱き着きでもしたらさすがに蹴る飛ばされてしまうだろう。
確実に、その黄金の右足でもって。
快斗は脂下がりそうになる顔をポーカーフェイスの下に押し止めて、話しを続けた。
コナンの時でも痛かったと言うのに、今喰らったらどうなってしまうのか。
愛のムチでもアレは痛い・・・。
「でしょ?哀ちゃんは新一の幸せを求めているから、新一の幸せに不可欠な存在である俺の味方な訳」
OK?と、ウインクつきで言う快斗。
そんな快斗に新一は小さく首を傾けた。
「あいつも自分の幸せを求めれば良いのに・・・」
少しズレている気がするが、新一らしいと言えば新一らしい答えである。
折角、黒の組織と言う呪縛から解き放たれたと言うのにどうしてと哀の心配をしている。
けれど新一は知らない。
自分が哀に対して行った事を。
哀は新一に、生きる意志を大切な事を教えてもらったのだ。
組織の中で生きていた時には得られなかった『人としての何か』を
だから、哀は新一の幸せを大事にするのだ。
少しでも良いから、自分のしてもらった事に対して恩を返したいから。
新一の考えている事などお見通しな快斗は、優しく本当に優しく新一を見つめながら笑った。
「良いんじゃないかな?哀ちゃんにとってそれが幸せなら。それにさ・・・何時か自分だけの幸せを求められる様になるよ」
経験者はかく語る。
在りし日の自分は、己の幸せなど知らなかった。
父親に教えてもらったマジックで、自分の鍛えたマジックで人々を喜ばす事こそが、己の幸せだと思っていた。
それ以外の幸せを求めると言う行為自体に無意味さを見出していた。
だって、この世はつまらないから・・・。
そんな思いを払拭してくれたのが新一だった。
新一に出会った事で、幸せの意味を知れたし、幸せを追求する事は当然なのだと理解ったのだ。
だから、大丈夫。
この先長い人生の中で、哀もきっとそんな風に思える相手を見つけられるだろうと。
いや、もしかしたらもう出会っているのかもしれないからと。
「そうかな?」
快斗の言葉にされない言葉も聞こえてきた新一は笑った。
可憐に。
輝くように。
そして快斗もまた、優しく笑った。
周囲に広がり続けている喧騒。
忘れていたが、ここは大学の構内である。
沢山の人々で溢れるキャンパスなのだ。
人々は、入学してから半年経っても見た事のない可憐に笑う新一とその隣で笑う快斗に、悲しみとかそう言った感情をすっ飛ばして驚愕していた。
思考のキャパを超えてしまったのだろう。
あまりにもお似合いに笑う2人の様子に、ポカーンとした後頬を抓り夢でない事を確認し、この思いを叫びたいと知る人知らない人関係なく話しをし出した。
この時の出来事は、1時間しない内に大学中に広まったとか・・・。
空は青く、緑は瑞々しい。
素晴らしい日である。
「「なんで黒羽(君)と工藤(君)が一緒にいるんや(ですか)ーーーー?!」」
朝の登校から時間も経って昼休み。
快斗と新一は食堂でのんびりと休憩していた。
勿論、テーブルの上に置かれているのは快斗特製のお弁当である。
2人は、周囲の戸惑いやら感嘆やらを完璧に無視しての仲睦まじい食事中だった。
そんな風に過ごす2人の元にいきなりやってきたのは、嵐。
失礼、鳥と馬。いえいえ、迷探・・・
「「探偵です!!」」
・・・どうやら、名が付かないのは承知済みらしい。
いきなり叫びながら登場した服部と白馬に、快斗と新一の周囲の体感温度が1、2度下がった。
「どうしたの、2人共?」
息も荒々しく駆け込んできた2人の存在に、不機嫌さを隠しもせず、そんな風体で快斗は2人に問うた。
服部と白馬はそんな快斗の蔑まされた視線と、新一の呆れた様な視線に勝手な思考回路を辿った。
『工藤(君)に格好悪い所を見せてもーた(しまいました)。ああ、そんな冷たい視線で見んなや(見ないで下さい)。今、その隣に居る悪魔から助け出してやる(差し上げます)から』
本当に勝手な思考回路である。
新一の視線がそこはかとなくどころか、普通に冷たいのは、別に服部と白馬が情けないからではなく、快斗との貴重な時間を無粋に壊したからだ。
「どうしたの?は僕の台詞ですよ。全く、一体どうして君みたいな人間が工藤君の隣に当たり前の様に座っているのですか?」
「そーや、今まで全く話してなかったやん。何時のまに知り合ったんや?」
「高校時代の2人の繋がりは皆無の筈です。だとしたら、やっぱり現場でしかありえませんね!」
「て事はやっぱり・・・」
「「黒羽(君)は怪盗KIDだったんや(ですね)!!」」
もう言いたい放題である。
快斗は慣れている事なので、今の言葉に呆れ果てているし、新一は不機嫌さを隠しもせずに半眼になっている。
周囲に居た人間もやはりこの会話には聞き耳を立てていた。
皆、気になっていたのだ。
この2人の急な仲良くなりように。
入学してから数ヶ月。
快斗も新一も構内でも、いや全国区で有名な人間と言えるだろう。
だからこそ、皆それなりに動向を見ていた。
快斗も新一もお互いには興味がないのだろうか?そう思っていたのだ。
けれどいきなり、3日間大学に姿が見えないと思っていたら、今日になって物凄く仲良く登校してきたのだ。
これに驚かずに何に驚けと?
人々の心境はまさにそれだった。
因みに言えば、快斗が怪盗KIDではないか?と言う探偵達の発言は、大半の人間が気にしていなかった。
中には、だったら美味しいな〜と思っている人間も確かに居るのだが、快斗が怪盗KIDだとはどうしても思えなかったからだ。
その頭の良さ、その容姿、マジックの能力は確かにそう言われるに値するだろうが、怪盗KIDの紳士的な落ち着いた雰囲気と、快斗の子供っぽく明るいイメージが合わないからだ。
そんな事より2人の仲である。
快斗と新一は何と答えるのだろうか?
新一は、服部と白馬の言い分に頭を抱えた。
この2人は、自分の様に昔のファイルを引っくり返し、小さな違いに気づいたと言うのだろうか?
8年振りに復活を果たしたKIDは、あまりにも若過ぎる事なども含めて・・・。
新一は深く息を吐いた。
「・・・証拠は?」
理路整然とした証拠を提示して見せろ。
確かに快斗は怪盗KIDだ。
けれど、証拠もなく捕まえさせたりはしない。
自分は、当の昔に怪盗KIDだけは捕まえないと決めているのだ。
あれだけの覚悟を持ち、全てを終えたならば逃げ出さずに捕まる事以外で罪を滅ぼそうとしていた優しい人間を、ただ己の私欲の為に捕まえると言うのならば許さない。
確かに彼は、人に迷惑をかけた。
けれど、誰も傷つけては居ない。
むしろ人を救っていた時もあった位だ。
新一の言葉に、自分の話に乗ってくれたのだと思った白馬は自信満々に高らかに宣言する様に言った。
「怪盗KIDが立ち去った後の、KIDの犯行現場に、黒羽君の毛髪が落ちていたのです!」
大きな声で言う白馬の隣で、服部は腕を組みうんうんと頷いている。
過去にその話を聞いており、その推理に同意していたと言う事だろう。
だが、新一は大きなため息をつくだけ。
疲れている様にも見える。
「・・・他にないのか?」
「へ・・・?!」
そんな風に切り返されるとは思っていなかったのだろう。
現に白馬の脳内妄想劇場では
「俺は快斗に騙されていたのか?・・・教えてくれてありがとう、白馬」
と、頬を赤く染めて潤んだ新一に抱きつかれていた。
何も言わない白馬に、焦れた様に言葉を続ける新一。
「だから、他に証拠は無いのか?」
「他には・・・ありません。ですが、十分証拠になります!」
新一は興味失せた様に白馬から目を逸らし、快斗に同情した。
「快斗、高校時代相当苦労したろ?」
快斗に自己紹介をしてもらった時には別段繋げなかったのだが、この話をしている最中に『そう言えば、白馬も江古田高校出身だとか言ってたな』と思い出したのだ。
「分かってくれる?」
快斗が力なく小さく笑うので、相当苦労したのだろうと新一には分かった。
だから、容赦しない事に決めた。
この心優しい、やっと隣に居てくれる様になった快斗を離してなるものか。
動かなければ何も手に入らない。
怪盗KIDが約束を守りに訪れた時に理解った事だ。
「落ちていた毛髪が証拠なんだな?」
「えっええ・・・」
新一の蒼い瞳に探偵としての光が宿った。
「その日の現場には中森警部は居たな?」
新一の雰囲気に少々圧されながらも白馬は頷いた。
「中森警部は快斗の家の隣に住んでいて、家族ぐるみの付き合いをしていた。・・・快斗は毛髪の落ちていた事件の日に中森警部と話をしたか?」
「うん」
新一の言葉に快斗は迷わず頷いた。
何故ならその日以来、白馬が煩く自分に言い掛かりを付ける様になったから、あの日の事はよく覚えているのだ。
「白馬、中森警部のスーツ等に快斗の毛髪が付いていた可能性はないとは言い切れないんじゃないか?これでは物的証拠とは言えない筈だ。・・・だから、高校時代から快斗を怪盗KIDだと言い続けても、警察関係者はお前の話に聞く耳を持たなかったんじゃないのか?」
きちんとした証拠が成り立っているのであれば、高校時代から探偵として活躍していたお前の話を聞いて、快斗を拘束出来ていた筈だと、新一は言っている。
「工藤君?!」
「しかも、青子と映画を見ている最中にも、白馬が手錠で俺を捕まえている時にも、怪盗KIDは出現してんだよね」
新一の鋭い口調に続く様に出た、力の抜けた声。
けれど、何故かそれは場の雰囲気を崩さない。
「白馬、これではお前が犯罪者だ。名誉毀損と言う言葉は知っているな?・・・良かったな、快斗が優しい人間で。先刻の様に言っていたと言うのなら、今頃お前が逮捕されていても可笑しくは無いんだからな」
事件の時に証拠を犯人へと突きつける時の様な声に視線。
淀みなく紡がれる言葉に、白馬は身体を竦ませていた。
だが、白馬は・・いや、服部もまた気づいていない。
普段、犯人を追い詰める時には悲しみを宿らせているその瞳が、今はその奥に怒りを湛えている事を。
気づいているのは、快斗だけ。
新一は本当に怒っているのだ。
快斗の為だけに。
「新一、俺はもう平気だよ?だから・・・」
それ以上自分を追い詰めないで。
親しい人間に対して、証拠を突きつける事が辛くない訳ないのだ。
親しい人間が犯人だったとしたら、証拠を探して捜してボロボロになって初めて突きつける。
彼はそう言う人間だから。
快斗は自分の為に新一が傷ついて欲しくなかった。
「ダメだ。快斗が傷ついているのに俺が見逃せる訳ないだろ?」
そのポーカーフェイスの下にどれだけの痛みを抱えてきたか、それに気づいたから、それでもなお優しいお前を知ったから、だから俺は怪盗KIDを・・・黒羽快斗を好きになった。
白馬に周囲の人間を騙さざるを得ない怪盗KIDと言う行為を突きつけられると言う事がどれだけ辛かった?
だから新一は許したくないのだ。
例え、白馬の言っている事が実は真実だったとしても。
「俺は平気。世間の人の噂なんてどうでも良いんだ。俺には新一の言葉だけが届いてるから」
快斗の両手が優しく新一の両頬を包み込んだ。
更にその快斗の力強くまた繊細な手を上から華奢な新一の手が包み込んだ。
どちらの瞳も優しく、またお互い以外を入れていない。
そんな2人の世界を構築されてしまい、服部と白馬は絶句し石化した。
既に周囲は、2人は愛でるものとして認識しているのか、男女問わずの感嘆のため息しか聞こえてこない。
キーンコーンカーンコーン・・・
予鈴のチャイムが鳴り、静まり返っていた周囲が元気を取り戻し出した。
おかげで新一の中にも現実の音が響いた様だ。
グイーン、そんな擬音が当て嵌まりそうな勢いで、新一は顔を真っ赤にさせた。
その勢いのまま、包み込んでいた快斗の両手を払った。
「かっかかか・・快斗!帰るぞ!!」
「へっ・・・?新一、授業は?」
「良い!」
ズカズカと食堂を出て行く新一。
どうやら恥ずかしさが許容を超えてしまい、ここに居る事が耐えられなくなってしまった様だ。
だが、快斗に律儀に声を掛けている時点で、そう現状は変わらないだろう・・・。
快斗はそんな新一の様子にクスリと笑い、マジックで1枚の白い紙と黒いペンを出した。
その紙にサラサラと何かを書き記すと、傷心のあまり石化してしまった鳥と馬の石像に貼り付けた。
「待っててば〜新一〜」
意地の悪い笑みを一笑残し、快斗は新一を追いかけた。
一体快斗が何を書いたのか?
現状を見守るだけだった人間の勇気ある行動によってそれは分かった。
表に書いてあったのは、『自業自得』。
だがその裏には・・・
『分かった?俺と新一は恋人同士なのv邪魔すると蹴り飛ばされるよ?(誰にとは言わないけど)あっそうそう、お前達の言ってた俺達の出会いだけど・・・やっぱり勿体無くて教えられないね。でもヒントをあげるとすれば、1度目の出会いで最高の感情を貰えたって事かな?頑張れ、迷探偵達』
と書いてあったそうだ。
服部と白馬に明日は無いだろう・・・。
「新一?」
「ごめん、俺でしゃばったよな?」
シューンとしている新一。
恥ずかしさに負けて食堂を出たは良いけれど、今更になって後悔の念が押し寄せてきてしまったのだろう。
沈んでいる新一に、ああ、もう少し早く止めに入るべきだった、と快斗は思う。
けれど、快斗の心には暖かさしか満ちていなかった。
だって、他でもない新一が庇ってくれたから。
自分の為に、探偵である心に蓋をしてまで。
「こっちこそ、ごめんね」
新一が庇ってくれた事に喜びしか感じてなくて。
「ううん、俺自身が嫌だっただけだから・・・」
「ありがとう。俺、新一の傍に居れて本当に良かったな」
ほら、もう大丈夫。
君の部屋の鍵を貰えたから。
僕は誰よりも強く君の隣に居よう。
君と共に幸せになる為に。
end
|