……暗室に閉じ込められ、泣きじゃくる幼い少女。 「ごめんなさい、ごめんなさい!」 ドンドンと小さな手を、頑く閉ざされた鋼鉄のドアに叩きつける。 「もうしないから、もうしないから!」 (本当か?) ドアの向こうから、大人の声。 「うん…いいえ、はい。しません、もうそんな事、しません!」 (まったく…前にも同じ事を言っただろう?) 「…ごめんなさい、ごめんなさい……。」 (もう、あの子と遊ば無いと、約束するか?) 「……はい、遊びません…もう、遊びません……。」 (………。) 「……うっ、うう………。」 悲しくて、悔しくて、やるせなくて… どうして私は、この星に、この家に生まれたんだろう。 リエちゃんも、ユミコちゃんも、マナミちゃんも、 おともだちは、ものすごく幸せで、楽しそうで、 とっても良いお父さん、お母さんなのに。 …なんで、私だけ………。 カチャ…ズズズズ…… 重いドアが開き、まぶしい光があふれだす。 そして、ひとつの影。 ……わたしの、お父さんの影。 _______________________________Sweet Baby Love ♪ピロリリリロロン…ピロロロ…… ケイタイの電子音が、現実へ呼び戻してくれた。 「……やだな…。」 ピッ。 ボタンを強く押し、目覚まし機能を解除する。 ぐっしょり濡れたマクラ。 あかく火照った頬に、乾いた筋…また泣いたんだ…。 「もう…忘れてよ…理乃。  過去なんか振り返ってちゃ…ダメだよだよ。」 誰かに話すように、 誰かから話しかけられるように、自分に言い聞かせる。 「ね、そうだよね、“らびぃ”」 くいっ と、そばにある うさぎのぬいぐるみの頭を撫でる。 小さいときから、ずっと支えてくれてる、うさぎの“らびぃ”。 「うん、がんばれ、理乃。」 頑張ろう。今日も一日、“清和理乃”を演じるために。 #--通学路 「おはようよう〜」 『………はよ。』 幼なじみのタカちゃんは、目の下に漫画みたいなクマを付けて、とっても眠そう。 「どしたの、また徹夜でゲーム?」 『ああ…今、最終ダンジョンまで来てんだよ…。』 「すごいすごい!難しいんでしょ、EEって。」 『難しいってもんじゃ無ぇよ!  いいか、今日という今日は言ってやる!  最終ダンジョンから近くのセーブポイントまで3時間かかるロープレがあるかッ!  おかげで往復するだけでパーティー全滅しかけたわッ!!』 ゲームの悪口を早口まくしたてるタカちゃん…うう、そんなこと、私にいわれても…。 「た、タカちゃん、落ち着いて…」 どうどう…と、肩をたたく。 『タカちゃん言うなーーッ!!』 「きゃっ」 『もう高2なんだから、いつまでもタカちゃん言うな』 「ん〜…私、気に入ってるのになにな…。」 『あと、その語尾繰り返すクセもなんとかしろ。』 「むむむ…。」 ゲームがクリアできないタカちゃん、口癖を指摘された私。 ふたりしてムッツリ、無言のまま学校に向かった。 #--学校 「よっ!」 「あ、神宮ちゃん、おはようよう〜。」 星河神宮ちゃん。私の一番のお友達。 名前の通り、おうちは神社で、神宮ちゃんも巫女として手伝っている。 私もお正月とかアルバイトしてるんだよ。 「どうしたのぉ〜?」 「え?何が何が?」 「ア・レ」 指差す先は、タカちゃん。グーグー寝息を立てて、うつぶせになってる。 「んと、“えたーなるえんど”とかいうゲームで…徹夜してたっぽいよ。」 「あ、エタエン!?いまヌッキーがCMしてるやつやんかー。面白そうだよね、アレ。」 「え…と…。私、ゲーム詳しくないから…。」 「そっか。理乃はお嬢様だもんね〜。」 「そ、そんな事無いよ…。」 「成績優秀、運動神経抜群!人望も厚くて後輩先輩からも人気。  おまけにこーんなに可愛いくてお嬢様!  …あ〜あ、私もそんな人生歩みたかったよ〜。」 「……そう、かな…。」 違うんだよ、神宮ちゃん。 神宮ちゃんにも、まだ言ってないけど、 確かにうちの両親は裕福なほうだと思う。 でもね、心は裕福じゃ無い人たちなんだよ…。 私が勉強ばかりしてるのも、それしか逃げることが無かったから…。 いつかあっと言わせてやろう、さっさと家から出よう…。 私はそんな、逃げることばかり考えてる女なんだよ…。 「」 「えっ?」 「聞いてなかったん?