山積みのココロ
毎週水曜日。
1−2が図書当番の日。
私、は女子図書委員です。くじで強制的にそうなりました。
男子図書委員は。。越前リョーマ君です。
「越前君!そっちの本の整理、まだ終わってないの?」
分かってはいるけど、越前君はまともに仕事してくれない。
「めんどいじゃん」
っていう返事、もう何度聞いたことやら。
けれど私はそんなこと言いたくないんだ。
本の片付けなんて、やろうと思えばさっさと終わる。
越前君が怠けてるせいで、放課後とか残ってやらされる。
そのほうがいい。
だって。
越前君と、一緒にいられるから。
「じゃぁ、私の担当以外の本、全部山積みにしておくから。
きちんとやってね」
そうやって昼休みは終わっていく。
そして放課後。
至福な時間。
その日も、いつもどおり1,2人しか残っていなくて、
私はカウンターでヒマしてた。
けどその隣に、越前君もいた。
「何してるの?」
「別に。漫画あったから読んでる」
いや、そうじゃなくて。
…でも嬉しい。
ドキドキがまたひとつ積み重なったみたい。
最後の一人の貸し出しを記録して、とりあえず図書室は静かになった。
沈黙。
「そろそろ閉めようかな」
半ば独り言みたいに言ったけど
「…ちょっとまって」
ドキッとして声の方を見ると
「今日は早くない?まだ読み終わってないから」
あ・そういうことか…。
また一つ、ちょっぴり悲しめな気持ちが積み重なった。
「ねぇ・・越前君」
「…」
「いつも本の片付けしないで漫画読んでるの?」
「…」
「早く部活行きたくないの?」
「走らされるから」
「――ふーん」
頬杖をついて、空を仰ぐ。
なんとなくすることなくて、ただ時計の音を聞いてみる。
本の整理なんて、どうでもいい。
一緒にいる、そのときの流れがいい。
一秒ごとにどんどん溢れ、積み重なっていく「何か」。
隣でページをめくる音、そして彼の存在。
それだけで満足、なんて思う私はまだ幼いのかな。
「・・ねぇ」
「ん…はっはい!」
「終わったから。もう閉めない?」
「あ、うん。ゴメン、ぼけっとしてて…」
「開いてる窓ないよね」
「あー・・そこの棚の右側…って越前君、やっぱり本片付けてない!」
鍵を閉めながら、越前君は積み重なっている本を隅に退けた。
「山積みになってる本なんか、誰も読まないでしょ。
それより、また来週居残れるし」
「エースがサボってばっかでいいの…」
笑った私を一瞥して彼はこう、付け加えて去っていった。
「二人になれる時間だからね…」
いつもの3倍ぐらいの衝撃が響いた。
ねぇ、越前君。
さっきの言葉、もし聞き間違いじゃなかったら…
期待していいの?
『山積みになってる本なんか、誰も読まないでしょ。』
そうだね、山積みの本をきちんと片付けて、
元に戻さないとね。
私の、このどうしようもない山積みのココロはきちんと整理してから
頂点に達したら、君に伝えるから。
放課後、待っていてね。
end*
::::::::::::あとがき:::::::
久々ギャグじゃないドリームです。
図書委員ネタは書きたいなーと思っていたので
念願達成!(そんな大仰な)
やっぱりヒロイン一人称にすると名前変換なくなって
つまんないですね。。。今ごろ気づく奴。
リョーマは生意気度が出せない分、
クールにやってもらいました。
やっぱり難しい…。